新製品レビュー
OM SYSTEM OM-1 Mark II
AF・連写性能・手ブレ補正など正常進化したフラッグシップ機…新機能「ライブGND」も
2024年2月21日 07:00
2月23日(金)発売予定の「OM-1 Mark II」は、マイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ。名称を見て明らかな通り、2022年3月に発売されたOM SYSTEMのフラッグシップモデル「OM-1」の後継機にあたります。
外見上の違いはほとんどない前モデルの「OM-1」と、今回紹介する「OM-1 Mark II」ですが、その違いはどのようなものなのでしょうか。試用をしながら、何がどのように変わったかを確認してみました。
外観・操作性
「OM-1 Mark II」の外形寸法は約134.8×91.6×72.7mm、質量は本体のみで511gとなっており、これは前モデル「OM-1」とまったく同じ。
搭載するイメージセンサーは有効約2,037万画素の裏面照射積層型で、画像処理エンジンは「TruePic X」と、こちらも「OM-1」と同じ仕様。
と言ったことからも、「OM-1 Mark II」と「OM-1」のボディは、基本的に共通であることが分かります。
ボタン類やダイヤル類の配列および形状も「OM-1」から変更はありません。ただ、「削除ボタン」を「MENUボタン」として使用することができるようになっており、超望遠レンズ装着時など「MENUボタン」を左手で操作しにくいような場合に使いやすくなっています。
また、フロント/リアダイヤルには新たにエラストマー加工(ゴムのような弾性がある素材)が施され、より指がかりがよくなって操作しやすくなりました。目立たないところですが、これも「OM-1 Mark II」の進化点のひとつになっています。
ファインダー(EVF)は、視野率100%、倍率約1.65倍(35mm判換算約0.83倍)で、約576万ドットと、大きく見やすく視認性は大変良好です。同じフラッグシップモデルでも、「OM-D E-M1 Mark III」までは最高で約236万ドットでしたので、ここは「OM-1」および「OM-1 Mark II」の優れどころのひとつと言えるでしょう。
背面のモニターは3.0型・約162万ドットの、バリアングル式です。「OM-1」と同じ仕様です。
デュアル仕様で搭載されたメモリーカードスロットはSDメモリーカード(UHS-I・UHS-II)に対応。「OM-1」も同じですが「OM-1 Mark II」は非常に優れた連写性能のカメラですので、書き込み速度が速く大容量な、SDXC・UHS-II規格対応のSDメモリーカードを使った方がスムーズに撮影できました。
付属のリチウムイオン充電池「BLX-1」は、標準モードで約500枚、低消費電力撮影モードで約1,010枚の撮影が可能となっています。これも「OM-1」と同じですが、バッテリーは変わらず同タイプのものを採用してくれた方が嬉しいですね。
高画質を支える主要な仕様
有効約2,037万画素のイメージセンサーを搭載しており、画作りにかかわる画像処理エンジンも同じ「TruePic X」ですので、基本的に画質は「OM-1」と同じになります。ただし、「OM-1」はそれまでの旧オリンパス製やOM SYSTEM製のミラーレスカメラよりも、解像感や階調性に優れていますので、センサーサイズから想像するよりもずっと高画質な写真を撮ることができました。つまり、「OM-1 Mark II」はその優れた高画質を受け継いでいるということになります。
それでも解像感に不満を覚えるようでしたら、OM SYSTEMが得意とする「ハイレゾショット」という手があります。
ハイレゾショットは複数枚の画像を合成することで、より高解像で低ノイズな画像を得る機能。三脚に据えて撮影する「三脚ハイレゾ」(約8,000万画素)と手持ちで撮影できる「手持ちハイレゾ」(約5,000万画素)から選択できるので、撮影の自由度も高いというものです。
本機「OM-1 Mark II」からは、同時に記録するRAWの記録ビットが、「12bit」と「14bit」から選択できるようになりました。「14bit」はデータ容量が大きくなるきらいはありますが、階調再現性は格段に高くなりますので、風景撮影などではかなり有効だと思います。
また、画質に大きく影響する手ブレ補正機構は、ボディ単体で「OM-1」の最大約7段分の補正効果から、最大約8.5段分へと大きく進化しています。下の作例は手持ちで撮影したものですが、シャッター速度は5秒でした。焦点距離は12mm(35mm判換算24mm)ですので、シャッター速度5秒と言えば7段分の補正効果が得られたことになります。メーカーが公称しているだけでなく、実際に高い補正効果があることが分かります。
メーカーは本機の手ブレ補正効果を「星空も手持ちで撮れる、驚愕の補正効果」としていますが、それも決して大げさではないと思います。暗所での撮影や絞り込んでの撮影では、これ以上なく頼もしい機能であることは間違いありませんし、前述の「手持ちハイレゾ」が可能なことや、後述の「ライブND」や「ライブGND」が結構な割合で手持ち撮影できるのも、この強力な手ブレ補正効果のおかげと言えるでしょう。
常用最高感度はISO 25600となっています。「OM-1」と同等ではありますが、マイクロフォーサーズ規格より大きな、APS-Cサイズのイメージセンサー搭載機でも、常用最高感度はISO 12800~25600が普通ですので、これは立派な数値と言えると思います。実際に、「OM-D E-M1 Mark III」や「OM-5」などの他モデルは、常用最高感度がISO 6400となっています。
そんな「OM-1 Mark II」の常用最高感度ISO 25600で撮影した画像が下の写真です。裏面照射型を採用したイメージセンサーや、最新の画像処理エンジン「TruePic X」の連携で、これまたセンサーサイズのハンデを感じさせない、優れた高感度性能を実現しているのが見てとれるのではないかと思います。
優れた連写性能を継承
AI被写体認識の性能は「OM-1」より向上したとのこと。実際に使ってみても、AI被写体認識で選択した被写体での合焦率は向上し、より素早く的確にピントを合わせてくれるようになったことを実感できます。
AI被写体認識には、これまで設定上で独立していた「人物」が含まれるようになり、「モータースポーツ」、「鉄道」、「飛行機」、「野鳥」、「犬・猫」と合わせて6種類の中から選べるようになりました。
さらには、スーパーコンパネから直接、フロント/リアダイヤルでAI被写体認識の認識対象を選べます。いちいちMENUに入らなくてもいいのでこれはかなり便利になったと思いました。
そうしたAF性能の向上もあって、素早く飛ぶ鳥などでもファインダー内に収まってくれている限りはとてもよく被写体にピントを合わせつづけてくれます。
下の作例のように、被写体が画面の端になってもしっかりと追従してくれるのはしめたもの。被写体の前に枝などの障害物があるような場合でも、完璧とはいかないまでもよく被写体の形を認識して合焦してくれます。ただし、急に方向を変えたり、動くスピードの緩急が非常に激しかったりする場合は、数コマ分だけピントが追い付かないこともありました。そうしたところは、今後の課題といったところでしょう。
連写速度は、AF/AE追従で最高約50コマ/秒、AF/AE固定であれば最高約120コマ/秒と(いずれも電子シャッターの場合)、前モデル「OM-1」と同等ながら、連写性能の高いデジタルカメラのなかでもトップクラスのスピード性能を誇っています。
ただ、実際の撮影では、「AF/AE追従での最高約50コマ/秒」の連写を利用することが多いのではないかと思いますが、この性能を発揮できるのは現状で6種類の対応レンズのみ。
今回の動体撮影では、新しく発表された「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS」を使わせてもらいましたが、残念ながらこちらのレンズは非対応で、AF/AE追従での連写速度は最高で25コマ/秒となってしまいます。対応レンズがもっと増えて欲しい、と思うのが本音という人も多いのではないでしょうか。
シャッターボタンの半押し状態にしておくことで、シャッターボタン全押しから時間を遡って画像を連続記録できる「プロキャプチャー」機能ももちろん健在です。AF/AE固定で最高約120コマ/秒の記録ができる「SH1」と、AF/AE追従で最高約50コマ/秒の記録ができる「SH2」から選択でき、鳥や昆虫の飛び立ちなど、人間の反応速度では追えない瞬間を撮るのに便利です。
また、「OM-1 Mark II」はカメラ内部のバッファメモリー容量が「OM-1」より大きくなっており、「SH1」時の連続撮影枚数がJPEG約95枚、RAW約92枚だったところ、JPEG約219枚、RAW約213枚にまで拡大しています。「SH2」時においては、連続撮影枚数がJPEG約117枚、RAW約102枚だったところ、JPEG約309枚、RAW約256枚まで記録可能になっています。
連写速度の優れたカメラでは、一瞬にして大量の画像が撮れてしまいます。書き込み時間が長くて次のチャンスでシャッターを押せなかった、というようなことがメモリー増設によって減ります。お勧めはできませんが、仮にデータ転送速度の遅いSDメモリーカードを使わざるを得ない事態になったとしても、増設されたバッファメモリーのおかげで次のチャンスに臨める可能性も増えるというものです。
新機能のライブGND(グラデーションND)
カメラで撮影するだけで、PCを使うことなく、最新のデジタル技術を駆使した写真表現ができる「コンピュテーショナルフォトグラフィー」に、新機能として「ライブGND」が加わりました(ちなみに、前述の「ハイレゾショット」もコンピュテーショナルフォトグラフィーのひとつです)。
GNDとはグラデーションNDのことですが、人によってはハーフNDと言った方が分かりやすいかもしれません。「ライブGND」はリアルなフィルターを使うことなく、グラデーションNDと同様の効果をカメラ内の画像処理で実現する機能で、その効果を撮影前にファインダーやモニターで確認して調整できることから「ライブ」が付されています。
「ライブGND」を使った作例では、手前の川や草むらとともに、空の雲も適正露出で表現できていますが、「ライブGND」を使わなかった作例では、手前の川や草むらは適正露出ながら、雲や夕日の射し込んだ切れ間が白とびしてしまっていることが分かると思います。「ライブGND」を使って画面に対して部分的にNDフィルターと同じ効果を適用することで、明暗差の大きな撮影シーンでも両方を適切に表現できます。
なんだか使うのが難しそうな「ライブGND」ですが、意外にも操作方法はとても簡単。「ライブGND」の効果の調整は、設定画面で「GND段数」(ND効果の度合い)と「フィルタータイプ」(明暗差の境界線の強弱)を選択できます。
最初は、境界線と支点が画面の中央にありますが……。
フィルター効果を確認しながら、十字ボタンで境界線と支点の位置を上下左右に移動できます。
フロント/リアダイヤルを廻すと、支点を中心にして境界線の角度を調整できます。境界線と支点の調整が終わったら、「INFOボタン」を押すことで、「ライブGND」がONのまま撮影画面に戻ります。後は露出を決めてシャッターボタンを押すだけ。カメラが自動的に画像処理をして、GND効果の効いた画像が生成されます。
リアルなグラデーションNDフィルターは、かさばるので携行しづらいうえに調整が面倒で、また破損の危険が常に付きまとうものですが、「ライブGND」ならそうした心配はまったく要りません。風景撮影などで特に使用頻度の高そうな機能ではありますが、この手軽さならスナップなど他分野の撮影でも気軽に活用できそうです。操作法も簡単で、強力な手ブレ補正効果も併せて得られるため、特に三脚を必須としないのも良いところですね。
まとめ
「OM-1 Mark II」は前モデルの「OM-1」とほぼ同じボディで、イメージセンサーや画像処理エンジンも共通ですので、それほどの進化はないものだろうと思っていました。
しかし実際に使ってみると、AF性能の向上や、バッファメモリーの増設、超望遠レンズ使用時の操作性向上など、随所にわたってカメラの基本性能を上げる改良が施されている結果、目に見えて使い甲斐が増していることに気づきます。
コンピュテーショナルフォトグラフィーはOM SYSTEMの独自性を象徴する機能になっていますが、今回はそこに「ライブGND」が加わったことが特徴的でした。すべての機能を全部使わなければいけないということはありませんが、必要な機能を機動性に優れたカメラシステムだけで完結できてしまうのは素晴らしいことです。
大切なことなのでハッキリ言いますと、OM SYSTEMのカメラとレンズは、同クラスの機材に比べると低価格で入手できるのが嬉しいところです。手の届く価格の「M.ZUIKO DIGITAL」レンズ群の優れた性能を活かしきることができるカメラが、本機「OM-1 Mark II」なのだと考えれば、その存在価値の高さに納得できるというものではないでしょうか。