私はこれを買いました!

完璧すぎるがゆえの、現場での困りごと

キヤノン EOS R6 Mark II(赤城耕一)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2024年に購入したアイテムを1つだけ紹介していただきました。(編集部)

仕事が速すぎて、演技が必要になりそうな話

今年、うちにお越しいただいた機材の中で、いちばん情緒を感じないというか、特別な思い入れを感じないのがキヤノンEOS R6 Mark IIです。そうだ、ここに掲載する作例写真にも困りました。作例写真家としてはまずいですね。

理由は単純で本機はほぼ完全な「仕事カメラ」だからです。毎日、顔を合わせ、何らかの撮影に使用していますから、あたりまえにそこにいる存在で、逆にプライベートな撮影には持ち出さないのです。

と、なれば書くこともなく、いや、むしろ書くことがないというのは良いことで、これは信頼度が高く、仕事の効率が上がるカメラだからです。カメラ話は、悪口のほうが盛り上がりませんか? とてもありがたいのは、手持ちの古いEFレンズをR6 Mark IIに使用しても、ストレスを感じないことです。

しかも我らがキヤノンDigital Photo Proffesionalには、DLO(デジタルレンズオプティマイザ)機能があり、これを画像に反映させると、手持ちの古いEFレンズで撮影しても実用上は問題のない段階にまでレンズの残存収差や回折を補正してもらえます。単純なお仕事だと、Lightroomさえも使用しなくなり。

こうなると、利益重視のビジネスでは、RFレンズを用意する必要はありません。キヤノンさんごめんなさい。でも、とても助かっています。もちろん高度な写真表現のために高画質を追求する必要のなる読者のみなさまは、RFレンズをどんどんお買い求めください。

それにしても、R6 Mark IIくんは、こちらが頼んでもいないのに、ポートレートなら、すっと瞳を拾いに行って勝手に合焦し、相手の動きに合わせ、フォーカスを追い続けます。ブツや、単純な風景の撮影なら、なにも指示していないのに、最良と思える場所にAFエリアがピタピタと貼りつくのです。

これは怖いというか、動きが気持ち悪いと感じることもあります。これでは、誰でも撮れます。代わりがいくらでもいれば、お爺さんカメラマンの少ない仕事がさらに減ってしまいます。

現場ではもっと難しい顔をして撮影したほうが威厳が増すかもしれません。年寄りの浅知恵と言われるかな。

あっさり短時間で撮影は完結してしまうと、立ち会いのデザイナーさんとか編集者は物足りない顔をします。早く家に帰れていいと思うけどね。早く帰りたくない人も一部にいるみたいだけど。

でもなあカメラの発展によってこれ以上仕事を奪われると困るなあ。誰でも撮れちゃいますからねえ。

来年は、しまいこまれたままの大判カメラを引っ張り出し、現場では土門拳みたいに怖い顔をして撮影しようかなあ。

今年も「アカギカメラ」をご愛読いただき、ありがとうございました。2025年もどうぞよろしくお願いします。

お仕事写真はさすがにここに掲載できないので庭の山茶花を撮ってと。何にも指示していないのに雄しべのあたりにフォーカスするんだよね
EOS R6 Mark II/EF40mm f/2.8 STM/40mm/(1/320秒、F5.6)/ISO 250

近況報告

2025年1月15日(水)から1月20日(月)まで、博多阪急で「第6回クラシックカメラ博in博多」が開催され、約2000台のカメラが集い販売されます。これに合わせ会場では、2020年のコロナ禍で中断した赤城耕一写真展「録々」を開催。また1月18日(土)には、「赤城戸澤写真道場」が出張、町歩きのワークショップを。1月19日(日)には写真家の戸澤裕司さんと会場でトークを行います。

みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げます。

赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。