新製品レビュー

DJI Mavic Air 2

フライトの信頼・安全性が向上 初心者でも安心な表現機能も多数

約4,800万画素の高解像度の静止画と、4K 60pの動画が楽しめるDJIの民生用ドローン「Mavic Air 2」。同社直販サイトでの販売価格は、本体、バッテリー1個、プロポなどがセットになった基本セットが10万5,600円(税込)、基本セットにバッテリーが2個追加され、さらにNDフィルター、充電ハブ、ショルダーバッグなどが付属するFly More コンボが13万2,000円(同)。

DJI「Mavic Air 2」は4本のアームを折り畳み式とするコンパクトで、比較的手に入れやすい価格帯で展開するモデル。現在特殊用途のものを除き4モデルをラインナップしているMavicシリーズのなかでミドルレンジモデルという位置づけとなっている。

1/2型積層型CMOSセンサーを搭載

カメラ部には1/2型の積層型CMOSセンサーを搭載。このイメージジセンサーはソニー製で、裏面照射型CMOSセンサーの支持基盤に信号処理回路を形成したチップとしたことで、高画質化・高機能化・小型化を達成している。

イメージセンサーの有効画素数は約4,800万だが、画素のQuad Bayer配列により隣接する4画素の信号をひとつの画素とみなすことで有効約1,200万画素としており、低ノイズでより階調再現性の高い画像を実現。もちろん有効約4,800万画素での撮影も可能となっている。静止画撮影時に解像感の高い画像が得られるのは当然のこととして、タイムラプス撮影の場合でもこの解像度をいかした8Kのタイムラプス動画が得られる。

レンズは35mm判換算で24mm相当の画角を有する開放F2.8の単焦点レンズを採用。これまでの1/2.3型センサーを採用するDJI製ドローン同様、レンズには絞り機構を備えていない。そのため常時開放F2.8での撮影となり、必要であればNDフィルターを使う必要がある。

写りについては、ドローンに懸架された1/2型センサーのカメラとしてみると、約1,200万画素の場合でも約4,800万画素の場合でも、十分な画質・写りだと言えそうだ。画面周辺部にやや緩く感じる部分が見受けられるものの、同等の大きさのイメージセンサーを積むコンパクトデジタルカメラやスマートフォンとくらべても遜色ない画質が得られる。

階調再現性など画質も上々で、作品レベルの静止画撮影が楽しめる。動画も同様で、ビットレートも向上もあり、クラスとしては高品質な動画が得られる。もちろんYouTubeなどへのアップには何ら問題のない画質である。

3軸ジンバルに懸架されたカメラ部。1/2型積層型CMOSセンサーと、35mm判換算で24mm相当の画角が得られる単焦点レンズとの組み合わせ。イメージセンサーの有効画素数は約1,200万画素のほか、約4,800万画素での撮影も可能。
移動時などジンバルを固定し、レンズキャップも兼ねるカバー。ワンタッチで取り付けと取り外しができるのだが、いずれの場合もちょっとだけコツを必要とする。

作例:静止画

さっそくデフォルトの1,200万画素での撮影したカットからご覧いただきたい。いずれも岩肌のゴツゴツとした質感が緻密に表現されている。階調再現性も1/2型センサーとしては上々で、撮影した条件ではまったく不足を感じさせないものである。

続けて、こちらは4,800万画素で撮影したものだ。岩肌の質感など1,200万画素と変わらない。階調再現性についても十分なものである。1/2型センサーでこの画素数を達成したことは驚きに値する。ただし、解像感は若干低め。レンズの光学解像度が影響しているように思われる。

静止画4,800万画素に設定した状態。JPEGおよびRAW(DNG)フォーマットでの撮影にも対応しているが、AEBが機能しない点だけは改善してほしいところ。

シーン認識を利用した撮影機能も多彩だ。本機では、シーン認識・ハイパーライト・HDRを1つのモードとして統合した「スマートフォト」機能も搭載している。

シーン認識は夕焼け/空/草地/雪/森林の5つのシーンを認識する。作例は2つのシーンを撮ってみたが、いずれもスマートフォトをOFFとした画像にくらべ、スマートフォトをONにした画像は明るくメリハリのある画像となるようだ。

スマートフォトOFF
スマートフォトON
スマートフォトOFF
スマートフォトON

動画撮影性能

動画機能については待望の4K 60pに対応。2.7Kでも60pに対応しており、フルHDに関しては240pによるスローモーション撮影も可能。最大ビットレートも先代モデルの100Mbpsから120Mbpsと向上しており、より高画質での動画撮影が楽しめる。ISO感度は、ベース感度ISO 100、最高感度は条件にもよるが、有効約1,200万画素の場合ISO 6400としている。

静止画の場合も同様だが、被写体の明るさや撮影意図などによってはNDフィルターはぜひとも用意しておきたいアイテムだと感じた。カメラは同社の得意とする3軸ジンバルに懸架されているため、機体の揺れをよく吸収してくれる。本機は極めて軽くコンパクトであるため、飛行時の安定度は決して高いとはいえない。しかしながら、ジンバル性能あってこそだろう、画像が乱れるようなことは皆無で、確かな安定感でドローングラファーを強力にサポートしてくれる。

作例:4K 60p・30p

4K 60pで撮影した映像をご覧いただこう。一目見てわかるとおり、極めて高精細な映像が得られている。今回はNDフィルターを装着していないため、シャッタースピードは60pに合ったものではないが、それでも30pにくらべ被写体の動きは滑らかであるように思える。

記録画質は最高4K 60pに対応している。これまでDJIの民生用ドローンは最高でも4K 30pまでだったので、画質にこだわりたいドローングラファーは要注目だ。

続けて4K 30pで撮影した場合。60pで記録したものと遜色ない画質である。高精細で立体感ある写りは、パソコンのモニターで見ると、とてもリアルで吸い込まれていきそうである。NDフィルターを使い、コマ数に見合ったシャッター速度で撮影すると、より滑らかな動きの動画となるはずだ。

4K 30p

ちなみに、動画撮影ではHDRの撮影も可能。より階調再現性に重きを置いた撮影が楽しめる。ただし、最高画質は4K 30pとなってしまうのはちょっと残念なポイント。

同じくフルHDでは最高で240fpsのスローモーション撮影も可能だ。動体を追った撮影などでは効果的な映像が撮影できそうだ。

豊富な撮影機能を搭載

様々な機能を搭載し多彩な表現が楽しめるのもDJIのドローンらしい部分だ。

まずはフォーカストラック。Mavic Air 2にはより進化した被写体追跡機能を3つ搭載する。「ActiveTrack3.0」は捕捉した被写体を自動的に追跡する。「Point of Interest3.0」は被写体が常に画面の中心になるよう回りながらフライトする。「Spotlight2.0」はパイロットがドローンを自由に操作してもカメラは被写体を捉え続ける機能である。初心者でもプロの撮影したような動画が簡単に得られるので覚えておくとよいだろう。

次にクイックショットは認識した被写体に対し、ドローンが自動的に移動しながらユニークな動画を撮影できる機能だ。

クイックショットの設定画面。テクニックを要するフライトでの動画撮影が手軽に楽しめる。

最高画質はフルHDとなるが、初心者には難しい操縦テクニックを不要とし、ドローン任せで変化のある動画が得られる。以下の作例では筆者を被写体としているが、人物以外も被写体とできるので、アイデア次第で面白い動画が撮れそうだ。

ドローニー
ロケット
サークル
ヘリックス
ブーメラン
アステロイド

ハイパーラプスも簡単な操作でタイムラプス撮影が楽しめる機能。4つのフライトスタイルが選べ、いずれも約4,800万画素の静止画を移動しながら断続的に撮影。最終的に4Kのタイムラプス動画として記録する。撮影の間隔など任意で設定できるもうれしい部分だ。

ハイパーラプス機能によるタイムラプス動画。4,800万画素で撮影を行い、それをアプリ内で8Kタイムラプス動画として生成するというが、生成された画像を撮影から帰ってきて自宅のパソコンでみるとなぜか1,920×1,080のフルHD画像。設定方法があるのかもしれないが、やはり国産カメラメーカーのようなしっかりとしたマニュアルが欲しく思える。
ハイパーラプスの設定画面。フライトのコースが選択できる。撮影は静止画4,800万画素によるもので、8Kタイムラプス動画として生成される。

パノラマ撮影機能も多彩だ。「sphere」「180度」「wide」「vertical」の4種類が楽しめる。そのうち「sphere」は「DJI Fly」をブラウザとして閲覧する(アップした画像はそのキャプチャー画面)。丸いパノラマ写真の周りの雲が渦巻くように再現され、独特な雰囲気はドローンならではのパノラマ写真と言えるだろう。

以下の作例を見てもわかるとおり、ステッチングも不自然なところは見受けられず、空からの迫力ある静止画が得られる。いずれも同社の技術力の凄さを伺い知ることのできるもので、何より撮っても、見ても楽しい。Mavic Air 2を手にしたら是非一度試してみることをオススメする。

180度
wide
vertical
sphere
パノラマ撮影も多彩だ。4つのパノラマ撮影が楽しめるが、そのうち「スフィア」は、画像編集および閲覧用のアプリを兼ねるフライトアプリ「DJI Fly」で閲覧するパノラマ写真だ。

先代モデルからの進化点を整理

高解像なセンサーによる精細な描写や多彩な撮影機能が魅力の本モデルだが、先代モデル「Mavic Air」からの進化点をあらためて整理していった。

まずボディだが、これまでと異なりMavic 2 Pro/Mavic 2 ZoomおよびMavic Miniに準じた外観となっている。あらためて3モデルを横に並べてみると、大きさこそ異なるものの極めて似たボディシェイプであることが分かる。個人的には前モデルのスマートなシェイプに好感を持っていたので、ちょっと複雑な思いもないわけではないが、新しいモデルの精悍なスタイルは他のモデル同様人気を博すことだろう。

左よりMavic 2 Pro、Mavic Air 2、Mavic Mini。大きさこそ違えども、ボディシェイプはほぼ同じ。個人的にはここまで同じにしなくてもと思えなくもないが、人気のあるMavicシリーズのアイデンティティであることは間違いないものだ。

ちなみにMavicシリーズについておさらいをすると、シリーズトップエンドモデルは、Mavic 2 ProとMavic 2 Zoomとなっている。いづれもボディおよびプロペラともシリーズ中最大で、Mavic 2 Proは1型のイメージセンサーと絞り機構を備える単焦点レンズを搭載するモデル。一方のMavic 2 Zoomは、同じボディで1/2.3型センサーと光学2倍ズームを搭載した仕様となっている。Mavic Miniはエントリーモデルとして位置づけられており、航空法の適用を受けない、重量を200gに抑えたモデル。そしてMavi Air 2はMavic Pro / Mavic 2 ZoomとMavic Miniの間に位置づけされるドローンとなる。

大きさはアームを折りたたむと、ちょっと手の大きな人であれば、その手のひらに収まるくらいのサイズ感となる。機体だけであれば、標準ズームレンズが入るほどのスペースがあれば、通常のカメラバッグにも余裕で収納できることだろう。

アームを折りたたんだところ。

シリーズ最小のMavic Miniには及ばないものの、気軽に携行しやすいドローンだと言える。

アームを折りたたんだMavic 2 Proと並べたところ。

機体重量は570g。先代モデルよりも140g重くなった。しかしながら、バッテリー容量のアップ(2,375mAh→3,500mAh)やブラシレスモーターの進化などで、メーカー公称値の最大飛行時間はそれまでの21分から34分へと飛躍的に向上している。ちなみに、この飛行時間はDJIの民生用ドローンのなかでは最も長いものである。現実的にはバッテリーが少なくなるとプロポのアラートが鳴り出し帰還を促されてしまうのと安全を考慮すれば、25分から30分ほどの飛行可能時間かと思われるが、それでもこれまで以上に余裕あるフライトが楽しめる。

プロペラは折りたたみ式。モーターへの着脱は、上位モデルと同じ工具を使わないタイプとする。モーターは砂などが内部に入ってしまわないよう離着陸のときなど注意が必要。ランディングパッドを常用するとよいだろう。

なおバッテリーはMavic Air 2専用タイプ。同社の他のドローン用バッテリー同様、自己放電機能を備えているが、満充電後3日ほど経つと自動的に放電されてしまうことには少々閉口した。放電のタイミングを設定する機能は残念ながら見つけきれないでいたが、実際にもそのような機能が搭載されていないのであれば、今後のファームアップに期待したいところだ。

バッテリー容量は、先代モデルの2,375mAhから飛躍的にアップし3,500mAhに。スペック上の最大飛行時間は34分とDJIの民生用ドローンとしては最長を誇る。

安全なフライトのための機能としては、機体の前方、後方、下方に障害物センサーを配置。左右両サイドにも欲しいところだが、機体の大きさなどから見送られている。ちなみにトップエンドモデルのMavic 2 Pro/Mavic 2 Zoomは前方、後方、下方に加え左右両サイド、上方とすべての方向に障害物センサーを備える。

機体の前方、後方、下方に置かれる障害物センサー(黒い丸い部分)。安全飛行のためには欠かすことのできない機能である。
機体底部には高度を計測するセンサーや、暗い場所での離着陸を補助するLEDライトを備えている。

機体に対する水平方向のカメラの向きが固定されている本モデルでは、横方向にフライトする機会も少なくない。そのため、上方のセンサーは別としても、左右両脇のセンサーは欲しく思えるところである。

なお、機体下方には暗い場所での離着陸をサポートするLEDライトを装備。航空局の許諾が必要となるが、夜間の離着陸では重宝するはずだ。さらに障害物を回避するシステムとして、APAS(高度操縦支援システム)3.0を搭載。こちらも安全なフライトのために今や欠かせないものである。

記録メディアはmicro SDカードを使用する。カードスロットは機体側面に備える。4K 60pなど高画質での動画撮影では、V90などの高速記録に対応したSDカードを使用したい。

快適な操作性を支えるプロポ

大きく変わったのが「プロポ」の形状である。特にコントロールスティックのある上面は、RTH(リターン・トゥー・ホーム)ボタン、フライトモード切換スイッチ、電源ボタンとフライトに関して大切なボタンが整然と並び、視認性が極めて高くなった。

プロポはスマートフォンを装着して使用するのが基本。ただし、スマートフォンが無くても飛行自体は可能だ。スペック上の最大飛行速度はスポーツ(S)モード時で19m/s、ノーマル(N)モード時12m/sとしている。
収納時のプロポ。これまでのMavicシリーズのものと比較するとふた回りほど大きい。ただし、コントロールスティックに指をかけた状態でしっかりホールドすることができる。
コントロールスティックは着脱タイプ。ステイックの長さ調整ができれば最高なのだが、このクラスではちょっと贅沢か。コントロールスティックの操作に対する機体の反応はシビア過ぎず不足を感じさせないレベルだ。
外したコントロールスティックは、プロポ本体の下側面に収納することができる。ロックや蓋がないので脱落を心配したが、しっかり嵌め込んでおけば外れるようなことはない。中央はプロポの充電などで使用するUSB Type-C端子。

なかでもフライトモード切換スイッチはこれまでプロポの側面に備わり、お世辞にもその使い勝手は良いとは言えないものであっただけに、大きな進化点だと感じた。

シンプルで分かりやすいボタンレイアウトのプロポ操作面。中央左からRTH(リターン・トゥー・ホーム)ボタン、フライトモード切換スイッチ、電源ボタンと使用頻度の高い操作部材が並ぶ。右上のボタンは静止画/動画モード切換ボタン。

さらに、これまでのMavicシリーズではスマートフォンをプロポの手前、つまりパイロット側に装着するが、本機ではプロポの前方に装着するようになった。好みもあるが、私個人としてはMavic Air 2のプロポのほうがはスマートフォンの画面が見やすく、またボタン類の操作もしやすく思えてならない。これまでプロポから突き出していた2本のアンテナもなくなり、先のボタン類のレイアウトとともにすっきりとした感じで好感の持てるものとなっている。

スマートフォンを固定するホルダー部。大型のスマートフォンでも対応するほか、ケースを付けたままでも装着できる。奥にはスマートフォンとプロポをつなぐケーブルが見える。iPhoneおよびAndroidに対応。

ただひとつだけ残念なのが、ストラップ用のホールが備わっていないこと。他のMavicシリーズのプロポも同様なのだが、プロポの落下を防ぐためにもストラップは装着したところ。こちらも今後に期待したいところである。

最後に、フライトアプリ「DJI Fly」を使うことで撮影した映像の編集はとても簡単なものになることも知っておきたい。スマートデバイスの画面を使い、シンプルな操作で思い通りの映像とすることができ、そのままSNSなどへのアップも可能だ。なお、4Kで撮影した動画を編集した場合、フルHDの動画に生成される。

「DJI Fly」任せでの動画編集も可能。搭載するテンプレートは28種類もあり、本レビューで掲載した作例動画はそのなかの「コネクション」を使って編集している。映像的な効果や映像も付加される。アプリが編集したものが気に食わなければ、ユーザーが微調整することも可能。

個人的には静止画も動画も、ドローンを使った撮影テクニックはまだまだ開拓の余地はあると思っている。これまでにない新しいプレゼンテーションや、被写体へのアプローチなどハッとする作品が見てみたいし、私自身も挑戦してみたいと考えている。そんな写真愛好家や映像マニアにとって本モデルは見逃すことのできないドローンだ。

まとめ

フライトの信頼性と安全性、ジンバルも含む高性能で高品質なカメラ機能などMavic Air 2は極めて高次元でバランスのとれたドローンである。Mavic 2 ProやMavic 2 Zoomは高価でちょっと大きすぎる、かといってトイドローンに分類されるMavic Miniでは少し物足りない、そんなドローングラファーに頃合いのよいドローンと言える。

2022年をめどにドローン(小型無人機)の登録制度を創設する改正航空法がつい先日国会で可決成立した。これはドローンの所有者や機体の情報を国に登録することを義務付け、無登録の飛行を禁止するものである。違反すると厳しい罰則を受けるが、むしろこのようなシステムとなることで、法を遵守するドローンパイロットはこれまで以上に大手を振ってフライトが楽しめるはずだ。Mavic Air 2ユーザーに限らず、ドローンを所有する写真愛好家は、今後この登録制度の成り行きについて国土交通省のHPなどでチェックしておくようにしたい。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。