新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III(外観・機能編)
シンプルになった操作配置をMark IIと見比べる
2019年12月12日 12:04
初代OM-D E-M5が登場したのは2012年。OM-Dシリーズの1号機だ。かつてのフィルム一眼レフカメラOMシリーズを彷彿させるネーミングと、カメラの中央部分にEVFを内蔵した本格派のデザインは、それまでの"マイクロフォーサーズはビギナーや女性向け"という印象を払拭した。2015年に登場した後継機のOM-D E-M5 Mark IIはボディやダイヤルの質感が大きく高まり、5軸手ブレ補正の効果もE-M5の4段分から5段分にアップ。ミドルクラスながら5コマ/秒の連写やハイレゾショットなど、上位機E-M1に迫る性能を持つ。そして2019年、三代目となるOM-D E-M5 Mark IIIが登場した。
外観と操作レイアウト
ボディ正面は、これまでのE-M5シリーズを踏襲したデザインを採用。ハイエンドのE-M1シリーズのように大型のグリップは持たず、ボディが盛り上がるような控えめなグリップだ。シャッターボタンを本体上面に持つのもE-M5シリーズらしい。
しかし、その上面は大きく変わった。E-M5 Mark IIのシャッターボタン側には、ハイライト/シャドーボタン(Fn2)、ライブビューボタン(Fn3)、HDRボタン(Fn4)が配置されていて、個人的にはフィルムカメラのOM-4を思い出したのだが、E-M5 Mark IIIではハイライト/シャドーボタンとHDRボタンがなくなり、ライブビューボタンは電源レバー側に移った。そして露出補正ボタンとモードダイヤルが装備されている。
E-M5 Mark IIでは電源レバー側にモードダイヤルがあったが、その電源レバーのおかげでモードダイヤルの指標がボディ内側に付けられず、外側に合わせるというユニークなスタイルだった。慣れればあまり気にならず、E-M5 Mark IIの個性とも言えたが、それでもやはり不自然な印象は拭えない。E-M5 Mark IIIは他のOM-Dシリーズと同様にモードダイヤルがシャッターボタン側に移ったことで自然な操作ができると共に、他のOM-Dシリーズと併用しても同じ感覚で扱える操作レイアウトになった。
背面はE-M5 Mark IIとほぼ同じレイアウトだ。できればE-M1Xのようにジョイスティック状のマルチセレクターがあると測距点の移動に便利なのだが、小さなボディなので入れるスペースがなかったのかもしれない。しかしタッチパネル式の背面モニターをなぞって測距点移動ができるタッチパッドAFが装備された。
背面モニターはE-M5 Mark IIやE-M1 Mark IIなどでお馴染みのバリアングルタイプだ。もちろんタッチパネル式で操作感も従来と変わらない。E-M5 Mark IIでは液晶画面の色がややグリーン寄りなのが気になっていたが、E-M5 Mark IIIでは自然な色に改善され、違和感なく扱える。また、EVFのパネルはE-M5 Mark IIの液晶からOLED(有機EL)になり、クリアでレスポンスに優れた視認性を実現している。
E-M1 Mark II並みのAF機能。バッテリーはMark IIから変更
E-M5 Mark IIIは、上位機のE-M1 Mark IIと同じ2,037万画素のLive MOSセンサーを搭載。AFもコントラストAFのみだったE-M5 Mark IIと異なり、E-M1 Mark IIと同様に像面位相差AFが可能になり、動体撮影に強くなった。測距点も81点から121点になるなど、ミドルクラスながらE-M1 Mark IIと同じAF性能だ。ただし連写はE-M1 Mark IIが最高約15コマ/秒なのに対し、E-M5 Mark IIは約10コマ/秒に抑えられている。ボディ内手ブレ補正も、E-M5 Mark IIの5段から、E-M1 Mark IIと同じ5.5段にアップ。スローシャッターにより強くなった。
実は個人的にE-M5 Mark IIで気に入っていたことのひとつに、パワーバッテリーホルダーHLD-8の存在がある。その姿は、かつてのモータードライブを思わせるもの。しかもグリップ部とバッテリーホルダーの2階建てで、まるでOMシステムのモータードライブのようだ。グリップ側にもシャッターボタンがあり、ボディ側とシャッターボタンが2つになるのも当時を思い出させ、これだけでテンションが上がってしまう。
だがE-M5 Mark IIIは専用外付けグリップECG-5のみで、バッテリーホルダーは用意されていないのが残念。とはいえグリップ側とボディ側で2つのシャッターボタンが備わるのは変わっていない。E-M5シリーズの伝統であり、銀塩OMを知っている人には懐かしいスタイルが楽しめる。ただ、E-M5 Mark IIIは4KやCinema4Kの動画記録に対応している。頻繁に撮影する人には、ボディ内のバッテリー1個だけでは物足りないだろう。やはり長時間の動画撮影や大量の撮影に向け、バッテリーホルダーは用意してもらいたい。
E-M5シリーズのコンパクトなボディサイズは継承しながら、ハイエンド機E-M1 Mark IIの撮影性能を継承したE-M5 Mark III。それでは実際に撮影した使い心地はどうなのか、次回の「実写編」でお届けする。