新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark III(実写編)
高感度にも強くなった実力派エントリーモデル
2017年10月17日 07:00
OM-Dのエントリークラス、E-M10シリーズの三代目。一眼レフカメラライクな本格派のデザインを持ちながら、小型軽量でストロボも内蔵。チルト式のタッチパネル液晶モニターを持ち、ハイアングルもローアングルも楽に撮れる。またボディ内5軸手ブレ補正により、暗い場所やマクロ撮影でも手持ちで撮りやすい。さらに4K動画機能も搭載した。
撮像素子は有効約1,605万画素でE-M10 Mark IIと同じだが、画像処理エンジンは最新のTruePic VIIIを採用。高画質と8.6コマ/秒の高速連写を実現している。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1080222.html
◇ ◇
オリンパスお馴染みの機能、アートフィルターに「ブリーチバイパス」が追加された。ブリーチバイパスは「銀残し効果」とも呼ばれ、渋い色調が得られる。E-M10 Mark IIIにはType IとType IIの2種類のブリーチバイパスを用意。Type Iは褪せたような色調と高いコントラストで、金属などの質感描写が楽しめる。またType IIはノスタルジックな表現が可能だ。この写真はType Iを選択。レトロでどこか現実離れした雰囲気に仕上がった。
今や1,600万画素というと少なく感じるかもしれないが、解像力は十分高い。路面の質感再現も申し分ない。またキットレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZは、電源OFF時はとても3倍ズームとは思えないほど薄くなり、パンケーキレンズのようだ。携帯性に優れているので、旅先では小型バッグに入れて楽に持ち歩ける。
壁に掛かったカゴが実にシャープだ。レンズを装着しても小さくて軽く、1日中歩く旅写真でも疲労は少ない。しかも3倍ズームなので、フレーミングの決定もスピーディーだ。ただ電動ズームは好みの分かれるところ。薄型を重視している人や、動画もよく撮る人には向いているレンズだが、マニュアルズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rのキットもあると嬉しい。
望遠ズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 Rで撮影。300mm相当をカバーしながらコンパクトで軽く、E-M10 Mark IIIにもよくマッチしている。E-M10 Mark IIIはMark IIと比べてわずかに大きくなったものの、しっかりしたグリップを装備しているので望遠レンズも安定して構えられる。そして瓦を見ると、シャープな描写力を持っていることもわかる。望遠レンズらしく、屋根が重なり合った圧縮効果を狙った。
35mmフルサイズやAPS-Cサイズより小さい撮像素子のフォーサーズは、かつてダイナミックレンジが狭いといわれていた。しかし現在のLiveMOSセンサーと画像処理エンジンTruePic VIIIは、ハイライトからシャドーまで豊かな階調が得られる。ここでは、強い光のため畳のハイライトはさすがに飛んでいるが、不自然さはない。また周囲のシャドー部の階調もよく出ている。安心して使える画質と言えるだろう。
家の前でくつろいでいるネコを発見。液晶モニターをチルトして、地面すれすれのローポジションでネコに迫った。ここで便利なのがタッチパネル。不安定な姿勢でもスムーズに操作できる。フレーミングと同時にネコの顔にタッチしてピントを合わせた。またE-M10 Mark IIIはシャッター音が小さいので、ネコを驚かせることもなかった。
E-M10シリーズは、上位機のOM-Dと異なりストロボを内蔵しているのが特徴だ。室内での撮影や、外でも補助光に便利。手軽に光が加えられる。これは夕暮れの空を意識しながら、内蔵ストロボで道路標識を浮かび上がらせた。建物のシャドーに道路標識が入る位置で撮影し、より強いインパクトを狙っている。なおシンクロの最高速は1/250秒だ。
この日は生憎の雨。空は灰色の雲で覆われている。そこでアートフィルターのドラマチックトーンを選択。雲が強調され、ダイナミックな雰囲気に仕上がった。晴れの日では得られない写真だ。状況に応じて多彩なアートフィルターを使うのも楽しい。
E-M10 Mark IIから採用されたボディ内5軸手ブレ補正はE-M10 Mark IIIでも踏襲。シャッタースピード1/5秒で流れる水を強調した。もちろん手持ち撮影。スローシャッターでもフットワークが活かせる。三脚使用が困難な場所や、旅や山岳など機材を軽くしたい撮影に強い武器になる。
ダイナミックレンジと同様に、フォーサーズで苦手だった高感度画質。だが、それも今や昔の話。E-M10 Mark IIIはISO6400でも実用的な仕上がりだ。ISO12800はシャドーの締りが弱くなってくるが、主観によっては実用の範囲に収まりそうなほど。強い高感度と5軸手ブレ補正のおかげで、暗所でも地明かりを活かした写真が楽しめる。
E-M10シリーズで初めて搭載された4K動画機能を試した。5軸手ブレ補正を活かせば、高精細の動画が手持ちで撮影できる。この動画も手持ち撮影で三脚は使っていない。
まとめ
先代のOM-D E-M10 Mark IIが登場したとき、初代と比べて大幅に高級感がアップしたのを感じた。ところが三代目のE-M10 Mark IIIは、さらに高級感がアップした。ボディは小さくても各ダイヤルは大きく、適度なクリック感を持つ。仕上げも綺麗だ。また、電源レバーもカッチリした動き。
操作していると、とてもエントリークラスとは思えないほどだ。特にOM-Dのような一眼レフカメラライクなデザインは、本格的にレンズ交換式カメラを楽しみたい人に向く。そこでエントリークラスであっても、高級感のある感触が味わえるのは嬉しい。グリップが大型化され、握りやすくなったのも見逃せないポイントだ。
画素数こそ先代から据え置きだが、最新の画像処理エンジンを搭載し、ISO3200を超える超高感度でも実用的。強力なボディ内5軸手ブレ補正と併せれば、暗所や超望遠撮影、マクロなどが手持ちで楽に撮れてしまう。この軽快さは大きな魅力だ。
オリンパスではファミリー向けのイメージだが、ビギナーだけでなく、ガッツリ撮りたいエキスパートにも注目してもらいたい。