オリンパスZUIKOレンズ 写真家インタビュー

風土への理解を掘り下げながら表現を深化させる…斎藤巧一郎さん

M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO

重要文化財の眼鏡橋には多くの観光客が訪れる。川の仕切りを子どもが楽しげに渡って行く。眼鏡橋の手前にある石橋の手すりをぼかして奥行きを演出(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/1,600秒、±0EV) / ISO LOW(64相当) / WB:オート

オリンパスのZUIKOレンズを使う写真家に、作品表現でのポイントや使い勝手をお聞きしていく本企画。

今回は写真家の斎藤巧一郎さんに、写真を撮るとき気をつけていることや、撮影機材で重視していることなどを聞きました。レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO」で撮影された作品も紹介します。

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斎藤巧一郎
さいとう こういちろう
鹿児島県出身。日本大学芸術学部写真学科卒。カメラメーカーの写真教室、セミナー講師を務め、カメラ雑誌の記事寄稿をしている。最近は日本の食についての撮影を続けている。長崎市在住、好きな食べ物はちくわ。


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現在、どのような作品を撮られていますか?

普段は広告撮影を行なっているので様々な被写体を撮影しているのですが、日本の食について撮影を始めています。東西に長い日本、地域で食べられる料理や作れる食材、採れるものが異なります。人々やその場所を撮影し、食文化を表現できればと撮影をしています。

ピントが合っている皿はキビナゴとクジラの刺身。普段の食卓にクジラが並ぶところが長崎らしい。最短撮影距離が50cmの本レンズはテーブルフォトにも最適(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/50秒、-0.3EV) / ISO 800 / WB:オート

現在、東京と長崎を行き来する生活をされているとのことですが、なぜ“長崎”を移住先に選ばれたのでしょうか?

日本の写真の起源は長崎から始まります。そして古写真についての資料も多くみることができます。そんな長崎に住めば考えを深められると思いました。また、妻の故郷が長崎だということもあり、今や多くの友人や仲間ができ英気をもらう場所になりました。

ふたつ生活の場所を持てば仲間も2倍、生活の楽しさ2倍です。

江戸時代、丘の上に住むオランダ人たちが使っていたオランダ坂と呼ばれる石畳の道。坂の途中にカメラを構え、すり減った石を見つめ、昔の人が行き交う様子を想像しながら、絞りを開放F1.2にしてタイミングよく背景に人をぼかした(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/4,000秒、-0.3EV) / ISO 200 / WB:オート

撮影時に心がけていることはありますか?

“よく理解して撮影をする”と心がけています。

写真は表面的な捉え方しかできないものかもしれませんが、その土地や物をできるだけ調べ理解し、何度も撮影に行くことでその理解が深まれば撮れるものも深まるのでは、と努力をしています。

お盆には故人を送る精霊船を曳いて海までいく。その道中は大量の花火や爆竹で賑やかだ。その様子を大口径F1.2のレンズは暗くなった時間の行事を浮かび上がらせていく。少し望遠になり人々や花火から離れて撮影できる程よい距離感もいい(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/50秒、±0EV) / ISO 800 / WB:オート

長崎で特に追いかけている被写体やイベントはありますか?

街中には海外の影響を受けたものが多く、古くから中国との交易があり、中華街、唐人町、中国様式の寺などがあります。特に国宝の崇福寺は絵になりますね。西洋の影響を受けた山手洋風住宅群には古写真資料館もあります。そして長崎市郊外の教会、とくに外海(そとめ)の教会は美しいものです。

イベントでは、秋の長崎くんち、冬のランタンフェスティバルがフォトジェニックです。

1634年に始まった秋季大祭「長崎くんち」。船上では子どもたちが楽器を演奏している。大波を超えていくような迫力のシーンをシャープに切り取った(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F2、1/1,250秒、±0EV) / ISO 200 / WB:オート

90mm相当の画角を使っていく上で、使いこなしのポイントなどがあれば教えてください。

狭い画角なので切り取るイメージ。興味が向いた被写体と背景を組み合わせて、狭くても広がりや深さを持たせるようにします。

広角レンズなら、対象を組み合わせて構築しながら多くを語っていくイメージですが、中望遠なので言葉を少なくするイメージで。

またピントを合わせ、どこを意識したのかがはっきりと表現できるようにボカすことも、広角レンズとは異なる使いこなしです。

長崎市内には路面電車が走る。低速なので撮影しやすく、古い車両は絵になる。夕暮れの下校時、学生が乗車している車両を開放絞りで柔らかく撮影(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/500秒、±0EV) / ISO 200 / WB:オート

交換レンズに求める性能とは?

広告撮影用であれば、シャープさや周辺光量も十分な、一般的に良いレンズとされるものを使いますが、作品作りではシャープな描写だけでなく、柔らかさが欲しい時もあり、シャープさを気にしつつ、欲しいボケ感、ボケ量の大きさ、コントラストの強弱でレンズを選んでいきます。個性的なレンズが好きで使い分けていますね。

M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROの使用感や描写について、ご感想をお聞かせください。

何がボケているのか分かるほどの自然なボケで、いわゆるボケ味が素直なレンズです。それでいてシャープさも凄い。キメの細かい線が描けるレンズです。また大口径レンズながら軽量でコンパクト。防塵防滴にも対応していて気遣いがいらないタフさも良い点です。

デジタルカメラマガジンでは階調の豊かさに驚いたとコメントされていますが、このあたりをもう少し詳しく教えていただけますか?

被写体の明部から暗部にかけてのつながりが自然で、つまり階調が豊かで被写体を立体的に見せる事が出来ます。例えば空はただ青いだけでなく、薄い青、濃い青と色の濃淡も精密に再現するので、風景でもポートレートでもいい再現をします。高価なレンズはそれだけの価値を持っていると実感できます。

密集した島々のことを九十九島と呼ぶが、その島影を夕暮れの丘の上から狙った。太陽を画面に入れてもフレアやゴーストが発生しない点は特筆すべきだ(撮影:斎藤巧一郎)。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F8、1/60秒、-0.7EV) / ISO 200 / WB:6,000K

オリンパスのカメラで気に入っている機能は?

防塵防滴の機能は、カメラだけでなくレンズ、フラッシュまで施されていて天候や環境など気にせず撮影に臨めます。また最近は、マルチショット合成での高解像撮影もできるようになり、小さなカメラでも大きな画像を得られ、小型軽量なシステムは移動の多い私には嬉しい点です。

デジタルカメラマガジンにも斎藤巧一郎さんが登場!

デジタルカメラマガジン2020年1月号の連載「日本列島 ZUIKO LENSの旅」で、斎藤巧一郎さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROの解説が掲載されています。

本連載は47人の写真家が47の都道府県を巡るというもの。今回、斎藤さんは長崎県を巡っています。ぜひ、あわせてご覧ください。

制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部