新製品レビュー
TAMRON 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2
実売約4万円ながらα7R IVの描写力にも応える実力派
2019年12月10日 07:00
タムロンから、ソニーの35mm判フルサイズセンサーを搭載するEマウント用広角単焦点レンズシリーズが新たに登場した。焦点距離は35mm、24mm、20mmの3本をラインアップしており、2020年1月の発売を予定している20mm以外の2本は12月5日に発売済み。いずれも開放F値をF2.8とすることで、全長・質量ともに非常にコンパクトな造りとしている点が特徴のレンズシリーズだ。本レンズは発売済みの2本のうち、中間の焦点距離となる24mmである。
統一化が図られた外観デザイン・サイズ
本レンズのフィルター口径は67mmとなっているが、これは他の2本のレンズでも共通しており、意識的に統一されている。これによりPLフィルターやレンズキャップを共通化できる事も、シリーズとしての特徴になっている。レンズの全長は64mmで、重量は215gだ。
カメラ側の設定であるファストハイブリットAFや瞳AF、ダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)、カメラ内レンズ補正(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差)にも対応している。
レンズ構成は9群10枚だが、特殊硝材であるLD(Low Dispersion:異常低分散)レンズ3枚とGM(ガラスモールド非球面)レンズ1枚を効果的に配置することで諸収差を大幅に抑制し、画面周辺部にいたるまで高い描写性能を発揮。またタムロン独自のBBARコーティングを施したことで逆光時のゴースト・フレアの低減も実現している。
最短撮影距離はわずか0.12mと被写体へ寄れる設計なので最大撮影倍率1:2のマクロ的写真の撮影が可能。絞りは7枚羽根の円形絞りを採用。外観デザインはいたってシンプルだが簡易防滴構造となっており、防汚コーティングも施されている。
本レンズはレンズ自体が小型なため、付属のレンズフード「ALC-SH159」を装着するとホールディング時に指先がフィットして見た目にもキリッと締まる。
フードを逆付けにすればコンパクトに収納出来る。
機能をすべてボディ側に託す
鏡筒デザインはシンプルそのもので、操作部はピントリングのみとなっている。ハーフマクロでの接写が可能(最短撮影距離は0.12m)だが、切り替えスイッチのようなものは備えていない。側面にはメーカー名とレンズ名、レンズ設計が国内でおこなわれていることを示す文字が記されているのみだ。
作例
開放値F2.8で後方のビル群にフォーカスして撮影した。この距離感でも手前にある大きなオブジェは充分にボケ感を楽しめる。
色のりも良く、絞った時の質感描写も克明である。
僅か5cmくらいの小さな落ち葉でもクローズアップ撮影が可能だ。
揺れる水面に反射する太陽。こうした場面に出会すとついついシャッターを切ってしまうが逆光にも負けないコーティングはうれしい。
246青山通りに面したショーウィンドー。ガラス越しでも商品のシズル感が感じられる。
建設ラッシュの豊洲にて午後の斜光線を浴びる建設中の建物。コントラストの高い被写体だが建設中の鉄骨や重機、通行人の着ている洋服などの持つ質感も克明に描写されている。
日没直前の公園でスケートボードで遊ぶ少年たちを完全な逆光線下での撮影。周辺光量の低下も少なく僅かにフレアゴーストと色の滲みは出ているもののこの条件であれば充分なコーティングである。
コンパクトであることはアングル選びにも躊躇せず自由度が大きい。
色味も無くほとんどが陰影だけのコントラストの高い被写体でも絵になる。
夕暮れの都心を猛スピードで駆け抜けていく新幹線。咄嗟のシャッターチャンスにも強い。
かなり近い距離で狙っていたがまわりに大勢の人が居たのでなかなかコッチを向いてくれない。一瞬こちらを振り返った瞬間の一コマは眠そうな目にジャスピンなのは動物対応リアルタイム瞳AFの効能だろうニャ(笑)。
いつだって笑顔で迎えてくれるクリスマス衣装のサンダースおじさんを近接撮影。後方から強い逆光が射し込んでいるが全然平気だ。
3cmくらいしかないLED照明の発光体に近づいてアップで撮影。すでに点灯している他のイルミネーションLEDや背景からの強い光線も影響ない。
秋の終わりを告げる鎌倉の紅葉を逆光で撮影。逆光下でも鮮明かつ色表現も高精細再現されている。
小さなリンドウの莟。これはもうマクロレンズと呼べるくらいのクローズアップ撮影が可能だ。背景の玉ボケも美しい。
手水舎で手を洗う人たちを背景に撮影。合焦させた桶の金属質感は出しながらも他は自然なボケ味である。
スナップなどではF4に1段絞っただけでも画面がやや締まってくる。24mmくらいのワイドレンズの場合、画面に歪みを付けないためにややローアングルにすると良い。
国道134号線沿いの舗道から見下ろしたビーチの砂や暴風塀の竹、そして日向ぼっこしているおじさんの衣装やスニーカーまでも高精細に再現している。
江ノ島方面へ沈みかかった太陽へレンズを向けての完全逆光状態での撮影だが、気になるようなフレア・ゴーストも見られず広角レンズ特有のグラデーション描写も良好である。
日没間際の湘南の海でおやつ代わりの洋梨を防波堤の手前に置いて遠景のサーファーに合焦させての撮影。夕焼けに染まった洋梨をボカしてみたが美しいラインのまま再現。
太陽が沈み月が昇った頃に江ノ島でのライトアップが点灯した瞬間に観光客から歓声があがる。天候に恵まれてクッキリ見えた富士山から空の月までが美しいトワイライトシーンを24mmの画角でちょうど良く収めることが出来た。
本レンズは、ボディ側の機能利用を前提に設計されている。したがって、カメラ内のメニューにあるレンズ補正機能(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差など)をONにしてから撮影しないとレンズ本来の性能は発揮されないので注意が必要。
まとめ
昨今の大口径レンズにはメーカーの開発努力による良い部分がたくさんあるのだが、決して大口径高級レンズの持っているスペックだけが正義ではないという証しを具現化したようなレンズであるともいえる。
外観的には操作スイッチ類など余分なモノは一切なく、シンプルなデザインとなっている。
撮影倍率1:2という、広角レンズとしては驚異的な近接撮影が可能であることからテーブルフォトやちょっとした動植物のクローズアップ撮影にも向いているので、風景写真やスナップショット以外の場面でも使える多様性に富んだレンズであることは間違いない。AF速度も至近距離では若干迷う場面もあったが基本的には問題ない。
筆者は逆光写真が好物なのだが、今回いろいろな場面で撮影した結果、個人的に耐逆光性能が優れていると感じたし、高画素センサーのカメラ(α7R IV)での実写でも、その高精細な描写に応える画質が得られることも実証できたと思う。
同シリーズの他のレンズとの組合せ方もあるし、ソニー純正レンズやズームレンズをメインに使っているユーザー、あるいは“広角レンズの出番は少ないけど、あれば便利かな”という人にとっても、常用レンズに加えて持ち歩く、プラス1本のレンズとしてバッグに入れて持ち歩いてもまったく苦にならないコンパクトさと重量である。
明るい開放F値以外は全てのスペックを揃えていて、なおかつ低価格である(2019年12月時点での実売価格は税込で4万円前半となっている)ということももちろん魅力のひとつではあるが、このレンズはとにかく軽量・コンパクトであることが最大の特徴であろう。ズームレンズも多用する筆者だが、コンパクトなミラーレスカメラには、やはりコンパクトな単焦点レンズも良く似合うと感じた。
筆者の個人的好みの画角として、これから発売される20mmにも期待して是非試してみたいと思う。