新製品レビュー
Canon RF50mm F1.2 L USM
優れた描写力で立体感を表現 絞り開放で使いたい大口径標準レンズ
2019年7月1日 07:00
EFマウントからRFマウントへ。キヤノンの50mmのF1.2レンズといえばEFマウント版が現行レンズとしてラインアップしているが、35mm判フルサイズミラーレスEOS Rの登場にあわせて、RFマウントの大口径標準単焦点レンズ「RF50mm F1.2 L USM」が登場した。
2018年9月のEOS R発表とともにお披露目された4本のレンズのうちの1本。EOS R発売の翌月となる10月に早々にラインアップに加わった新鋭の50mmレンズだ。現状RFマウントのラインアップにある単焦点レンズは35mF1.8、85mmF1.2と、この50mmF1.2の3本。うち2本がF1.2という、RFマウント登場時の“ショートバックフォーカスによる自由度の高い光学設計”を体現するかのようなスペックが本レンズでも最大の特徴となっているといえるだろう。
外観
フィルター径が77mmとなっていることからもわかるように、50mmの単焦点レンズとしては太めの鏡筒デザインとなっており最大径は89.8mmをほこる。重量は約950gと、EFマウント版の約590gに比べてずしりとした重量感がある。
レンズの構成は9群15枚。うち2枚に研削非球面レンズを使用し、ガラスモールド非球面1枚、UDレンズ1枚となっている。絞り羽根は10枚で、最小絞りはF16。最短撮影距離は40cmだ。
スイッチ類もシンプルだ。側面には、AF/MFの切り替えスイッチとフォーカスリミッタースイッチがある。
フードをとりつけた状態。レンズ先端側に新しい操作体系のコントールリング、次にピントリングがくる。
ピントリングは適度な重さがあり、好みのトルク感。コントロールリングには露出補正を割り当ててみたが、測光をしたまま露出を微調整できるので重宝した。太めの鏡筒ながら操作に困ることもない。
ボディ(EOS R)が660gと小型軽量なのでレンズとのバランスが気になったが、実際にカメラを構えると良好なホールド性のためかストレスなく撮影できた。
絞り開放時の描写
梅雨時の光量が少ない場面では開放F値の明るいレンズが重宝する。場所は都内にあるアパレルブランドのショールーム。開放絞り値のF1.2で撮影した。
最短撮影距離の40cmまでモデルに近づいてオートフォーカスで撮影したが、ピントは左のまつ毛のみに合っており、他の部分はなだらかなボケを描いているのがよくわかる。ピント部分は絞り開放から非常にシャープで、引き込まれる写り。濡れたような髪の質感もよく描写している。
絞り開放値のF1.2からF2.8、F5.6と、同じ条件で絞りを変えて撮影した。手前の紫陽花と背景のコンクリートの描写の違いがよく感じられると思う。
近づいて撮影しているためもあり、絞り開放ではやや周辺光量落ちが感じられるが、限りなく薄いピント面を味わうにはやはり開放での撮影は楽しい。人物と紫陽花のバランスをとるのであれば、F2.8が良いだろう。立体感も程よく、コンクリートの質感も感じられる。
F5.6ではまるで目の前にモデルがいるようなリアリティがある。ピント面は当然大きくなるが、髪の1本1本を描き出す繊細さもあわせ持つ。
逆光撮影時の描写
少し離れて逆光で撮影。背景はやや白飛び気味だが、難しいシチュエーションながら肌が濁ることなく濃い陰影が印象的な一枚になった。こちらも同様に絞り開放で撮影したが、それぞれの質感の違いを細かに描き出している。この立体感は開放F1.2の明るさがなせる技だろう。普段このような場面では若干絞ることが多いが、開放時のこの写りを覚えると、積極的に絞り開放で撮影したくなる。
中央部の画質
カメラの設定をモノクロモードに切り替え、ベールのイメージでレースを纏ってもらいF1.8で撮影した。
ベール越しということでピントの精度が気になるところだったが、難なく左目にフォーカスした。わずかに絞ることによってピントのキレはよりシャープに、アウトフォーカス部分はより自然なボケで複雑な立体感を演出できる。
周辺部の画質
絞り開放で撮影するとわずかに周辺光量落ちがみられるが、被写体から多少離れるとほとんど気にならないレベル。モデルの左の袖口の布の質感もきっちりと描き出している。
F11まで絞って浜辺で撮影したが、周辺部に画質の劣化は全く見られないと言ってよいだろう。隅々まで砂と雲の表情を細かに描写している。
ボケ味
寂れたテニスコートをF3.5でフェンス越しに撮影。レンズによっては手前のフェンスのボケがうるさくなってしまうような場面だが、線の細い緻密な描写で、にじみも二重ボケもない。繊細なボケ味とともに驚くのはその立体感である。コートの砂面が浮き上がってくるような描写とたわんだネットが風でゆらぐ様子まで感じられるようだ。
EF50mmF1.2との描写の違いは?
EF50mmF1.2を「コントロールリングマウントアダプターEF-EOS R」を介してEOS Rに取りつけ、上のRF50mm F1.2で絞り値の変化による描写比較と同じ条件下で描写の違いを見た。
まずピント合わせだが、オートフォーカスで合わせるのは少々苦労した。RF50mm F1.2 L USMと比較するとピント面も含めて全体的に柔らかく、赤みが強い印象だ。一見すると女性の肌にはEF50mm F1.2L USMが向いているのでは、とも思ったが、よく見ると顔の輪郭部分にフリンジが出ていたり、紫陽花のボケが流れてしまっているのも気になるところだ。
まとめ
50mmレンズは最も使用頻度の高いレンズだが、RF50mm F1.2 L USMの性能の高さには驚かされた。サイズ感も重量もあるため気軽に持ち出すことができないのが残念だが、どこへ行くにもこのレンズで出歩きたい気にさせられるほどであった。
スナップはもちろん、F1.2の明るさを活かしたポートレートやテーブルフォトなどで立体感のある描写も楽しめる。あらゆる場面で活躍する万能レンズだ。
撮影協力:株式会社ギャルデ・コレクティブ