特別企画
大口径単焦点レンズの魅力とは? ポートレート向けRFレンズ4本を一気撮り
新レンズ「RF135mm F1.8 L IS USM」の実写もあり
2022年12月20日 12:45
2018年のEOS R SYSTEM登場以来、着々と充実しているキヤノンRFレンズのラインナップ。使用頻度の高いレンズから特殊な表現をカバーするレンズまで、多彩な個性を選べるようになってきた。2023年1月には「RF135mm F1.8 L IS USM」が追加され、さらに選びごたえのある布陣となる。
このページではそんなRFレンズについて、写真家によるポートレート向けレンズの実写とインプレッションを紹介したい。
撮影いただいたのはkanakoさん。2020年に「Canon fotomoti×CURBON」で次世代スターに選出され、陰影をテーマとしたポートレートで独自の世界観を演出している写真家だ。
使用したレンズは「RF50mm F1.2 L USM」「RF85mm F1.2 L USM」「RF85mm F1.2 L USM DS」、そして「RF135mm F1.8 L IS USM」。
RFレンズにはこれだけのポートレート向けのレンズが揃っているのだ。
キヤノン:your EOS.|EOSのポートレート
https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/article/portrait/
これら個性的なレンズで、kanakoさんはどんな世界を見せてくれるのだろうか。(編集部)
ポートレート撮影で単焦点レンズが活躍する理由
今回はRFレンズのうち、明るい単焦点レンズだけでポートレートを撮影してみたが、こうしたレンズはまさにポートレートを撮るときに重宝するレンズといえる。
単焦点レンズはズームレンズと違い、自ら動きながら構図を探すことになる。そのため結果的に、ズームレンズのときより構図のバリエーションが広がると感じる。焦点距離がもたらす画角を理解することが前提だが、私が考える単焦点レンズの魅力のひとつだ。
そして、ズームレンズより開放F値が小さいものが多いのも特徴。明るいレンズによる大きなボケ感を演出でき、シンプルに見せたいもの(被写体)が強調される。
また明るい単焦点レンズは、室内など薄暗い場所や、夜間など暗い時間帯でもシャタースピードを稼ぐことができる。ISO感度を上げずに撮影できるため、高感度ノイズを少なくできる。
明るい単焦点レンズの弱点としては、被写界深度の薄さがある。今回もF1.2のような明るいレンズを使用しているが、近年はカメラに搭載された優秀な瞳認識がアシストしてくれるようになった。より使いやすくなっている。
今回は4本のRFレンズを使って撮影してみた。それぞれ個性的なレンズなので、その魅力を解説したい。
圧倒的な明るさを自然な標準画角で——RF50mm F1.2 L USM
50mmという焦点距離は非常に使いやすい画角をもたらし、被写体とコミュニケーションを取りながら撮影できる。しかもこのレンズの最短撮影距離は0.4mと短く、被写体に近寄っての撮影が可能。画角の使いやすさもあいまって、寄り引き自在なレンズだ。
また、F1.2という圧倒的な明るさで、どんなシチュエーションにも適応できる。最短撮影距離まで寄って撮影することで被写体と背景への遠近感が生まれ、被写体を引き立てることができる。
モデルの瞳にピントを合わせての撮影。被写体の右目だけにピントを合わせ、左目を少しぼかしたかったため、絞り開放のF1.2で撮影した。
今までも50mmのレンズを使用してきたことがあるが、50mmでこのボケ感が生まれることに驚いた。F1.2の浅い被写界深度による大きくやわらかなボケ味が、一枚の写真に味を足してくれる感覚だった。
F1.2のボケで王道ポートレンズが進化——RF85mm F1.2 L USM
ポートレートレンズの王道ともいえる85mm。さらにこのレンズはF1.2の明るさも実現しており、ポートレート作品と相性のよい大きなボケが期待できる。
今回は大きなボケ感を創るためにイルミネーションを利用して撮影してみた。
イルミネーションの後方に立ってもらい、約1m離れて撮影。人通りが多い場所だったが、ボケのお陰で通行人をぼかすことができ、くっきりと映すことなく撮影できた。大きな前ぼけが、被写体を包んでくれるような演出ができた。
クリスマス仕様に飾られたお店のイルミネーションを背景のボケに活用。最短撮影距離は0.85m。寄った写真が撮れるので、余白と情報のバランスを計算することが必須になると感じた。クリスマスツリーも少し入れている。F1.2で撮影したことにより、被写体が引き立つ写真を撮ることができた。
このレンズでしか得られない美しいボケ描写——RF85mm F1.2 L USM DS
RF85mm F1.2 L USMをベースに、DS(Defocus Smoothing)コーティングを施したレンズ。ボケの輪郭を柔らかくする効果があり、DSのないRF85mm F1.2 L USMとはまた違ったボケ表現が楽しめる。
どちらの写真もF1.2で撮影した。85mmの圧縮効果が効いている。背景の玉ボケの違いを見てほしい。
RF85mm F1.2 L USM DSの方は、ボケ部分の輪郭が柔らかくなり、滑らかで自然と被写体に視線が誘導される。それでいてピントを合わせた被写体はくっきりと表現され、モデルの後れ毛までしっかりと捉えている。解像感も素晴らしい。
一方、玉ボケをはっきりと写したい場合は、DSがないRF85mm F1.2 L USMが向いていると感じた。
2つのレンズの違いは大きく、作風に合わせて使い分ける楽しみが広がりそうだ。
135mm独自の魅力とLレンズの描写力——RF135mm F1.8 L IS USM
11月2日に発表された新レンズ。85mmと200mmの中間ともいえる焦点距離で、より圧縮効果を引き出せる。描写力も優秀で、解像感、階調の豊かさは、さすがLレンズのクオリティ。今回使用した他の3本と同じく、ポートレートで多用したくなる期待のレンズだ。
「森の中に迷い込んできた」ようなシチュエーションで撮影。寄りと引きで撮影。モデルから3m程離れて撮影しているが、F1.8による後ろボケは圧巻だ。
こちらは8m程離れて撮影している。葉っぱの前ボケや後ろボケも得られ物語の中にいるような描写を撮影できた。ここまで離れていても、AFが的確にかつ迅速に合ったのには感動した。
秋の終わりから冬の始まりを感じる一枚。3m程上にある葉っぱを見上げて撮影した。F1.8で撮影することで、手前の枝と奥の葉が付いている枝での距離感を持たせている。枝の分かれ際まで移せているなど、鮮鋭な描写力も優秀だ。
「座って誰かを待っている」ようなシチュエーションで、10m程離れた場所からローアングルで撮影。AFでピントを被写体に合わせ、手前の芝生と奥の木や葉っぱをぼかした。これだけ離れているのに心地よいボケ感が得られ、豊かな立体感を生み出している。
まとめ:4兄弟は個性派揃い! 新レンズも画質・使い勝手ともに◎
今回の4本全体の撮影を通して、自分が撮りたい写真を自由自在に表現できるレンズという印象を受けた。Lレンズならではの、高い画質や描写力も魅力的だ。
高い描写力で色味を作り、素直なボケの表現で被写体を際立たせる。絞り開放で被写界深度が浅くても、瞳認識がピント位置を捉えて外さない。撮りたいシチュエーションに合わせて、ボケの表現を楽しむことができるレンズだった。
なかでもRF135mm F1.8 L IS USMは、85mm以上の焦点距離と開放F1.8の大きなボケにより、被写体をより際立たせる効果が得られる。遠近感が強調され、一枚の写真から物語を感じるような作品が得られると感じた。
RF135mm F1.8 L IS USMの撮影時は、情報の取捨選択(背景の整理)や被写体との距離感、前ボケや後ろボケなどを意識して撮影するように心がけた。またこのクラスにしては最短撮影距離が0.7mと短く、モデルに多少寄った撮影もできる。構図のバリエーションも広がるだろう。
このレンズで季節ごとの写真(特に桜とポートレート)を撮ってみたい。新しい可能性を見つけることができるレンズだった。