新製品レビュー

アルティザン・アンド・アーティスト Basalt Backpack ACAM-BS0001

スッキリした見た目ながらワガママな要求にも応えるカメラバッグ

取材のときは徒歩や自転車、交通機関を利用しての移動が多い。そのときの荷物はおおよそ町を散策して撮影するくらいの量であるため、カメラボディとレンズ2本(場合によっては、クリップオンストロボも)、小物入れ、ノートPCが入ればOK。フットワークも考えて、バックパックを愛用している。

年間の用途で見ると、取材の回数がもっとも多く、上記する要件にフィットするものを常々探しているのだが、しばらく大丈夫そうな製品と遭遇できた。今回はアルティザン・アンド・アーティストBasalt Backpack ACAM-BS0001をチェックしていく。

幅広で重量を感じにくいショルダーベルトを採用

Basalt Backpackは、スマートな外観のバックパックだ。カラーはブラックとグレー。ブラックの部分は、高級感を演出するため、PVCレザーを採用。PVCレザーは軽量で撥水性能もあり、かつ経年劣化しにくいのがメリット。そのため、外形寸法270×430×150mmのわりに、重量約930gとカメラ向けバックパックとしては比較的軽量となっている。なおグレーの部分はナイロン。

ショルダーベルトは、サイズからすると幅広のものが採用されており、クッションも分厚い。最大幅は実測で約70mm。ワンサイズ上と似たショルダーベルトであり、本製品のサイズからすると大きすぎる印象がどうしてもあるのだが、背負ってみると納得がいくだろう。

重量を感じにくく、背負ったままでの撮影もやりやすい。なおチェストストラップは取り外し可能だ。

α7R IIIがぴったり収まる収納部

収納を見ていこう。収納気室は上下にあり、上気室はアクセサリやモバイルバッテリーなど、下気室にボディやレンズが収納できる設計となっている。

上気室はポケットなどがない代わりに、下気室と同じく、全方位に高密度のクッション素材EVAフォームがあり、場合によっては上気室にレンズを取り付けたボディを収納しておくこともできるほか、付属するパーティションも使用可能だ。

想定されていなさそうだが、下気室に機材などを入れておき、上気室に着替えを押し込むことで、1泊の旅行にも耐える。

なお上気室と下気室のパーティションも位置調整可能だ。

下気室には4つパーティションが用意されている。上記しているが、こちらでもカバー裏を含む全方位を高密度のクッション素材EVAフォームで機材を保護する仕様だ。

カバーは完全に開かない仕様。

キャパシティを見ると、レンズだけであれば意外にも5本は詰め込める。レンズの全長は約130mmあたりが上限で、単焦点ならばあまり問題にならないが、ズームレンズの場合は寝かせる必要が多くあり、その分、持ち運べるレンズ数は減ってしまう。

町中での運用前提であるため、レンズ2〜3本にして、空いたスペースに予備バッテリーやブロワーなどを入れておくのが妥当だろう。またα7R IIIを入れると、あまりにジャストな収まり具合であったため、このあたりのサイズのボディを前提に開発されていそういだ。それでも若干の余裕があるため、L字プレートを装着したままでも収納できる。

α7R IIIとFE 24-70mm F2.8 GM(SEL2470GM)、MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Asphericalを入れた場合、ブロアーやLEDライト、モバイルバッテリーを入れておけるスペースが生じた。

下気室へのアクセス頻度が使用感をわけるポイント

判断が分かれそうな要素としては、下気室へのアクセス。バックパック背面、もしくは側面ではなく、正面から。レンズ交換する場合、Basalt Backpackを置く必要があり、機動力低下を回避できない。そのため、ズームレンズ中心であれば機動力をキープしやすいが、単焦点重点のときにはやや手間は増える。幸い、自立するため、風を避けつつレンズ交換できるところで妥協できるだろう。

気室以外を見ると、側面に13.3インチノートPCや書類などを収納できるコンパートメントがある。MacBook Pro 13を入れてみたところ、余裕をもっていれることができたが、ACアダプターもとなると厳しい。

ただ、WindowsノートPC(2018年以降)やSurfaceの場合であれば、スリムタイプのACアダプターであることが多く、この場合はセットで収納できるだろう。

下気室のカバーと右側面にポケット、左側面にペットボトル向けポケットがある。下気室カバー側のポケットはそれなりの厚みのあるものに対応するが、あれこれと入れておけるわけではない。目安としては単3形乾電池くらいの厚みになるだろうか。

右側面ポケットも同様で、名刺入れやモバイルバッテリーならば入るが、それ以上となると厳しい。かさばるものはポーチなどにまとめて、上気室に入れておく使い方がベターではないだろう。

下気室カバーのポケットのハンドルはやや深い位置にある。開けた状態で書類を一時的に挿しておくこともできる。
スマホを充電しつつ移動の場合は、ペットボトル向けポケットのほうが楽な印象。

機動性を損なわないサイズ感

以上の点を踏まえて、実際の運用を見ていくと、まず厚みで助かっている。

人混みが多いところを移動する際によくあるのが、ゴツいカメラバックパックだと接触回数が多いことが挙げられる。これは展示会取材でも同様であり、撮影時に接触→撮り直しのケースがかなり減少した。

加えて、ショルダーベルトの幅広さで重さを感じにくく、また素早く移動しているときにも本製品が左右に動いてしまうこともない。なお展示会時は5km/hくらいの移動速度が多い。

贅沢をいえば、側面中腹部にロック付きベルト、裏面にカート固定用ベルトが欲しいくらいだろうか。ロック付きベルトは展示会で受け取ったトートバックを取り付けて書類を突っ込みたいとか、傘を引っかけておきたいとか、取材中にあると便利といった理由から。カート固定用ベルトは、しばらく使用している間に、これ旅行先にもいいのではないか、と感じることが増えたからだ。

機材については、上記しているように下気室にボディ×1、ズームレンズ×1、単焦点レンズ×1、エアブロワーなどを入れておき、上気室に小物入れ、ACアダプター、場合によってはクリップオンストロボ、小型ディフューザーなどが多い。

このパターンで発表会+簡易的な物撮りに対応できるのはけっこう、うれしい。また、下気室にFE 70-200mm F2.8 GM OSS(SEL70200GM)を寝かせて入れることができるため、たとえばインタビューのカットなど要件が決まっているときに助かっているほか、上気室にGodox AD200を入れておける余裕があるため、ちょっと光源がいる場合にも出番となっている。

レンズ満載も可能は可能だが、他に必要なものをまとめにくいので、その用途での出番はいまのところない。

まとめ

周知の通り、カメラ用バックパックは用途別に多数が存在しており、今度こそは大丈夫じゃないかとひとつを選ぶも、しばらくして機材環境が変わると、いやこっちのバックパックがいいのでは……お出かけ用と機材満載用、1泊2日用も……レンズと同様にとても沼い。気がつくと増えている。

そんななかで、Basalt Backpack ACAM-BS0001は町中や要件が決まっている場合に扱いやすく、高い満足度を得られやすいバックパックだ。ポケットが少ない代わりにワガママを聞いてくれやすい上気室が活躍してくれるため、思った以上に出番がある。アルティザン・アンド・アーティストのオンラインストアで税込3万1,860円と、やや高めなのだが、頑丈で長く使える作りとなっているほか、普段使いのバックパックとしても見栄えがいい。徒歩や自転車の移動時のバックパックを探しているのであれば、店頭でBasalt Backpack ACAM-BS0001を背負ってみよう。

林佑樹

ライター・フォトグラファー。ライター方面はPCやスマホなどの通電モノのほか、ゲーム方面も。写真方面は研究所や研究室、機器の撮影が多めなわりに、ドラマのスチルなども請負中。夏コミのウスイ研究所写真集はメロンブックスとCOMIC ZINに転がっています。