新製品レビュー

LUMIX GH5(動画編)

プロレベルの動画機能を作例で紹介

LUMIX GH5(以下GH5)は、静止画も動画にも強いハイブリッドカメラである。少し前にはなるがGH5の静止画機能と画質についてはご紹介したが、静止画カメラとしても非常に優秀だ。今回はGHシリーズの強みである動画機能についてご紹介したいと思う。

新製品レビュー:LUMIX GH5(静止画編)~スチルカメラとしてもしっかり進化 色再現性も向上
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1077130.html

GH5は今までのGHシリーズのコンセプトを受け継ぎ、動画機能をどんどん進化させている。筆者の印象では、一眼レフカメラやミラーレス機の中では動画機能に関しては最も進んでいる印象のカメラと言えるだろう。

そのクオリティーの高さはハリウッドなどの映画でも使われており、映像のプロが満足する実力になっている。9月27日には大幅なファームアップが行われており、さらに多くの機能が追加されている。

フレームレート

GH5では4Kの収録に対応している。GHシリーズでは前機種のGH4で4K/30pのスタンドアローン収録に対応しており、今回のGH5では4K/60pの収録に対応した。

「○○p」はフレームレートのことで、1秒間の動画を何コマで表現するか決める大事な部分だ。フレームレートが多いほど動く被写体がスムーズに表現できる。一般的なテレビなどは30pが基本だが、飛行機や列車、動く被写体を4Kで撮影するのであればGH5はかなりメリットがあるだろう。

60pで収録しておけば、30pや24pにできたり、スローモーション動画にしたりも可能だ。また、GH5は4Kでも記録時間に上限のない無制限記録に対応している点にも注目しておきたい。

ビットレート

また、高ビットレートでの収録に対応している点も注目したい。ファームウェアVer.2.0の前はLong GOPの圧縮だけだったが、今回のファームアップでALL-Intraにも対応した。

GOP(グループ オブ ピクチャーズ)はイントラフレーム(Iフレーム)を元に前後の映像(PフレームやBフレーム)の差分を計算して再現する方式だ。簡単に言えば、全部のフレームを記録せず、フレームの前後を参照し映像の変化した部分だけを記録するため高圧縮だ。

Long GOPは複数のフレームにまたがって圧縮するため高圧縮になる。その代わり、トランスコード(再エンコード)が必要になるため扱いが少し複雑だ。

動きのあまりない被写体ではIPBの方が綺麗な場合があるが、動きが激しい場合は補間に失敗することがあり、動きが激しい被写体には向いていないこともある。

一方、ALL-Intra(ALL-I)は1フレーム毎がイントラフレームで構成されるため動きの激しい被写体でもきっちりと記録できる。トランスコードが必要ないため扱いが楽で映像編集には向いている。動きが激しい場合や画の変化が激しい場合は、Iフレーム毎の圧縮率が上がってしまい、IPBよりも画質が少し落ちることもある。

また、ALL-Iの場合最大約400Mbpsの高いビットレートで収録するため、容量が大きくなるのでSDカードもV90対応の高速な物が必要になるということも覚えておこう。

GH5では4:2:2 10bitでの本体収録を可能にしている点も注目度が高い。

GH4では4:2:0 8bit 4K/30pの収録まで記録できていたが、GH5では4:2:2 10bit 4K/30pに対応している。ただし、4K/60pのみHDMIからのモニタースルーで対応の外部レコーダーに記録する必要がある。

4:2:0 8bitと4:2:2 10bitとの違いは色情報量の違いだ。4:2:0と4:2:2では色情報は2倍違う。色情報の少ない4:2:0よりもより鮮明に被写体の微妙な色の変化や質感を表現できる。

また、4:2:0 8bitに対して4:2:2 10bitとでは情報量が128倍にもなり夕日のグラデーションの表現力やグレーディング時の耐性がアップする。編集とグレーディングを前提に撮影するのであれば4:2:2 10bitで撮影すると良いだろう。

バリアブルフレームレートとは

さらに、GH5ではバリアブルフレームレートでの表現力がアップ。FHDで180fpsのスローモーションから2フレームのクイックモーションまでに対応。4K撮影時でも60fpsのスローから2fpsのクイックモーションに対応している。

カメラでスローモーションの動画をプレビューできるため、イメージが掴みやすい。動画の設定時にVFR可能と画面に表示されればバリアブルフレームレート撮影ができる。

イメージしにくいかもしれないが、60fpsで収録した動画を30fpsの再生スピードで再生すると2倍のフレームがあるため、2倍のスローモーション動画として再生される。スローモーション機能を使えば、日常の世界などをドラマチックに表現することもできる。

イメージセンサーからの動画読み出し方法

GH5では4K収録時、イメージセンサー全域からの読み出しを実現している。GH4ではドットバイドット方式だったため、1,600万画素のうち約824万画素を使い4K撮影していた。そのため、クロップされてしまい画角が狭くなってしまった。約1.3倍ほどのクロップ効果があり8mmの広角を使うと10.4mm、35mm換算で20.8mm相当の画角になっていた。

しかし、GH5であれば8mmのレンズを装着すれば35mm判換算で16mm相当の画角になるため、広角を活かした撮影も可能になった。その他に単焦点レンズのボケ感もフルに活かせるので撮影しやすい。

Log記録

動画の「フォトスタイル」も豊富に搭載。GH4ではシネライクVと同Dの2つだったが、GH5ではシネライクVとDに加え、一般的な映像制作に使われるRec.709のガンマカーブに近い「709ライク」を搭載。sRGBに近い色域なのでWEBサイトなどでも使いやすい。

さらに、ファームウェアVer.2.0で新たに搭載されたHLG(ハイブリッドログガンマ)方式にも対応。HDR動画記録により階調の広い肉眼に近い動画の収録が可能になっている。HLG収録した動画はHDR対応のテレビなどで鑑賞することができる。

また、別売(DMW-SFU1)ではあるがV-Log L収録にも対応。V-Log Lはグレーディングを前提とした素材で12ストップ分の広いダイナミックレンジを実現している。

V-Log Lは見た目に近いビデオガンマとは違い、より多くの情報を記録するためのフォーマット。よりフラットで広いダイナミックレンジを記録する。特にハイライトやシャドーの情報量も多く、グレーディングでの調整幅が広い。

グレーディング時にLUT(ルックアップテーブル)を使いシーンとシーンの色や雰囲気を揃えることができる。LUTにはRec.709のLUTやフィルムをシミュレーションしたLUTなど様々だ。

一般にLog記録は、画面での露出決定などには不向きで慣れが必要だ。しかし、GH5に搭載されているLUTアシスト表示機能を使えば、LUTを当てた状態でプレビューが行えるのでイメージが掴みやすい。GH4ではLUT対応のモニターが必要だったが、カメラの画面で確認できるので助かる。

また、波形モニターも画面上に表示できるので、露出の決定などに役立つ。

これらによりV-Log L撮影時に露出を間違うことを防ぐことが可能だ。

フォーカストランジション

フォーカス送りなどは撮影では難しい要素の1つ。通常はAFではなくMFでフォローフォーカスなどを使いピント合わせを行うが、GH5には便利なフォーカストラジションが搭載されている。

フォーカストラジションとはAFを使うピント合わせだが、予めフォーカス位置を決めて撮影時に指定していた箇所からピント位置まで自動でピントを動かしてくれる機能。

フォーカスのポイントは最大で3カ所、フォーカス速度は5段階で設定可能だ。精度も高くプロ顔負けのフォーカシングが行える。

ただ、動いている被写体は無理なので、止まっている被写体などに使用すると良いだろう。フォーカシングのタイミングは録画のタイミングか任意のタイミングか選ぶこともできる。使ってみるととても便利なのでGH5ユーザーはぜひ使ってみよう。

オプション

オプションでは純正のマイクDMW-MS2が用意されている。このマイクを使えば、メニューから録音の指向性を変更できる。「ステレオ」「ガン」「スーパーガン」、集音範囲を変更できる「マニュアル」から選べる。

純正マイクならではの機能なので、音に拘りたい方は使用してみると良いだろう。

DMW-MS2に同梱のウインドスクリーンを装着したところ
指向性切り替えの設定画面

また業務用のマイクを使用する場合は、XLRマイクロホンアダプターDMW-XLR1を使用するとよい。給電も可能で業務用のXLRマイクを使える上、ボリューム、ゲイン、ローカット、オートレベル制御のスイッチもあるので、調整が自由に行える。

なお、、GH5にヘッドホンを繋げばリアルタイムに音声を聞くことができる。

ホットシューに装着できるLEDビデオライトVW-LED1も純正で用意されている。

作品

まとめ

GH5の動画機能はもはや業務用レベルだ。アメリカやヨーロッパを始め多くのビデオグラファーが使用しているのも納得がいく。

さらに、6K画質でのアナモフィック収録ができたり、アナモフィック画像のデスクイーズ表示が可能だったりと映画カメラ並の機能も備えている。

映像制作において必要な多くの機能を搭載しているため、この小さな本体で映画だって撮れてしまう。ドローンに載せたり、車載カメラとして使ったり様々な使い方もできるはずだ。

一見、機能だけ見てみると難しそうだが、動画に初めて挑戦するユーザーも本格派の方も十分満足できるカメラに仕上がっていることは言うまでも無いだろう。

モデル:高取祐司

上田晃司

1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。