ミラーレスカメラ用メーカー純正レンズまとめ

オリンパス編:高品位PROシリーズ & 趣味性の高い単焦点レンズが揃う

現在、国内の大手カメラメーカー8社からミラーレスカメラが発売されている。そのうち、オリンパス、ソニー、パナソニック、富士フイルムの4社については、ミラーレスカメラをメインとしたラインナップを展開している。

初のミラーレスカメラとしてパナソニック LUMIX G1が発売されたのが2008年の10月。その歴史はまだ10年に満たないものの、その短いあいだに機能も性能も飛躍的に向上しており、今ではハイエンドの一眼レフカメラをしのぐパフォーマンスを誇る機種さえ登場している。それにつれて、各社のミラーレスカメラ用交換レンズのシステムも整備が進み、相応にレンズ選びが楽しめる状況となっている。

一方、各社ともにシステムとして成熟しきっていないだけに、ほかにない個性的なレンズが魅力になっていたり、逆に欠けて穴が開いた部分が残されていたりもする。そのためカメラ選びの際には、各社の交換レンズラインナップに、自分にとって必要なレンズがそろっているかどうかを把握しておく必要がある。

本連載では、ミラーレスカメラを主力とする4社の交換レンズラインナップを概観し、それぞれのオイシイところはどこなのか、また注意すべき穴はどこにあるのかを探っていく。読者のみなさんのカメラ選び、レンズ選びの一助となれば幸いである。

第1回はオリンパスの交換レンズラインナップを見ていこう。

※「〜mm相当」の表記は、すべて35mm判換算での数値になります。
※実勢価格の表記はすべて税込での価格です。

ラインナップの概要

オリンパスのマイクロフォーサーズは2009年7月に発売されたPEN E-P1からのスタート。その後、エントリー層向けのPEN E-PLシリーズやPEN E-PMシリーズが追加され、2012年3月にEVF内蔵型のOM-D E-M5が登場。初期はズームレンズ、単焦点レンズともに小型軽量さを重視した感のあるレンズが多かったが、現在は大口径かつ高性能(そのぶん、大きくて重い)なものもそろいつつある。

現行のレンズシステムは3つのシリーズにわけられている。

M.ZUIKO PROシリーズ

防塵・防滴性を備えた高性能タイプのグループ。高い光学性能に加えて防塵・防滴処理がほどこされた堅牢な金属製鏡胴、ワンタッチでAFとMFが切り替えられるスライド式フォーカスリングなどの特徴を持つ。概して大柄で重さもあり、価格も高いが、ハイエンドの描写力が楽しめるのが魅力となっている。

M.ZUIKO PREMIUMシリーズ

小型軽量かつ高画質でボケのよさも兼ね備えた単焦点レンズのグループ。金属外装の高級タイプもあれば、いわゆる「撒き餌」と称されるお手ごろ価格のレンズもある。比較的明るいものが多く、シャープな描写とボケのよさの両方を楽しむことができる。

M.ZUIKOシリーズ

お手ごろ価格ながらキレのいい描写が楽しめるコンパクトズームのグループと言える。

その他

1.4倍のテレコンバーターMC-14、フィッシュアイコンバーターFCON-P01、ワイドコンバーターWCON-P01、マクロコンバーターMCON-P01、フィッシュアイボディーキャップレンズBCL-0980(9mm F8)、ボディーキャップレンズBCL-1580(15mm F8)がある。※ボディーキャップレンズは交換レンズではなくカメラアクセサリーの扱い。

広角域:完成度の高い2本のズームレンズ。明るい魚眼レンズも

ズームレンズ

画質重視で選ぶなら、M.ZUIKO PROシリーズで、設計の新しい「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」(14-28mm相当)がいい。

ただし、大柄で重さもあるので、グリップのしっかりした(もしくは外付けグリップが用意された)ボディと組み合わせるのがおすすめだ。また、前玉が張り出した、いわゆるデメキン型なのでフィルターワークに懲りたい人にはおもしろくないだろう。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」(18-36mm相当)は沈胴式鏡胴を採用した小型軽量タイプで、フィルターも使える。

設計はやや古めだが「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」と比べなければ、画質面でもそれほど不満は感じないと思う。PEN E-Pシリーズ、PEN E-PLシリーズと組み合わせるのにはぴったりだ。

単焦点レンズ

「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」(24mm相当)、「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」(34mm相当)ともに金属製の鏡胴を採用していて、別売のフードも金属製(そのぶんお高い)で見ばえもいい。小型軽量で明るさもあるので、PEN系のボディと組み合わせてのスナップなどは楽しい。

ところで、10mm(20mm相当)やそれより短い超広角系がないのは需要との兼ね合いもあるだろうが、14mm(28mm相当)のレンズがまったくないのは釈然としない。この画角には熱烈なファンも多いので早急に穴をふさいでもらいたいところだ。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO」(16mm相当、対角魚眼レンズ)はやや特殊な立ち位置のレンズで、魚眼レンズでこの明るさが必要な人にはたまらない1本だ。

標準域:秀逸なPROレンズ。高価ながらF1.2単焦点の性能にも注目

ズームレンズ

注目はやはりM.ZUIKO PROシリーズの2本で、画質の高さ、防塵・防滴性などは見逃せない。

「M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO」(24-80mm相当)は比較的手が届きやすい価格だし、スペックから考えてもお買い得感がある。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」(24-200mm相当)は大きさ、重さ、価格の高さにひるんでしまうが、ただの便利ズームに終わらない写りと強力な手ブレ補正は大きな魅力だ。

M.ZUIKOシリーズは小型軽量さが強み。キットレンズにも採用されている「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」(28-84mm相当)、防塵・防滴性を備えた高倍率の「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II」(28-300mm相当)は推せる。

M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ

ただ、M.ZUKO PROとM.ZUIKOの中間的存在がないのが物足りないところで、12-60mmないし12-70mm(24-120mm相当、24-140mm相当)ぐらいのPREMIUM級が追加されると選択肢が増えて楽しそうだ。

単焦点レンズ

スペック的にも写り的にも、「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」(50mm相当)はとても魅力的なレンズである。ただし、お値段が張るのは覚悟してほしい。

その一方で、実勢価格で4分の1程度の「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」も、十分に素晴らしい画質とボケ描写を楽しませてくれる。どちらにもそれぞれ良さがあるので悩ましいところだ。

望遠域:600mm相当で手持ちが可能!マイクロフォーサーズらしく軽量小型のラインナップ

ズームレンズ

明るさ、シャープな描写、防塵・防滴性などを兼ね備えたM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROは、スペックから考えれば軽量コンパクトでおすすめ度も高いが、価格も相応にする。

気軽に身軽に望遠も、というなら「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R」も悪くない。ただし、プラスティックマウントなのはちょっとおもしろくないが。

一方「M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II」は、画角から考えればかなりのお買い得品だろう。

標準ズームレンズと同様、ここにもやはりM.ZUIKO PROとM.ZUIKOの中間的存在があっていいと思える。ねだりすぎかもしれないが。

単焦点レンズ

小型軽量低価格、かつほどよく明るくてボケ味までそろった「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」は、オリンパスの撒き餌の代表格で、買っておいて損はしない1本。

一方の「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」も、切れ味・ボケ味ともに素晴らしい。ただし個人的に、画角の中途半端感がどうしようもなく気になってしまう。そこがぴったり合う人には価値の高いレンズだ。

そして、5軸シンクロ手ぶれ補正の「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」。オリンパスのマイクロフォーサーズ用交換レンズではもっとも高価なレンズだが、600mm相当のレンズが三脚座込みで1.5kgを切るのだから、それだけで値打ち物といえる。画質の高さ、強力な手ブレ補正も魅力だ。

マクロ

マクロレンズは標準系ながらやや望遠寄りとなる「M.ZUIKO DIGITAL 30mm F3.5 Macro」(60mm相当)と、中望遠の「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」(120mm相当)の2本で、いずれもM.ZUIKO PREMIUMシリーズだ。

最大撮影倍率は30mmが1.25倍、60mmは等倍(1倍)で、35mm判換算で2.5倍ないし2倍に相当するクローズアップが楽しめる。また、60mmは防塵・防滴仕様なので、ネイチャー系の撮影にも強い。

まとめ

マイクロフォーサーズは画面サイズが小さいだけに高感度などでの不利もある一方、交換レンズがコンパクト化できるメリットがある。特に望遠系は焦点距離が半分ですむだけに、画角ベースで考えると大きなアドバンテージとなる。軽快な撮影を楽しみたい人にはうってつけと言える。

単焦点レンズの望遠系、超広角系がさびしいので増強してもらいたいところ。また、M.ZUIKO PROとM.ZUIKOの中間のクラスのズームレンズも追加されるとうれしいと思う。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。