ミニレポート
最新タムロンレンズのUSB Type-C端子でできること
静止画/動画で活躍 専用ソフト「TAMRON Lens Utility」使い方解説
2021年12月9日 12:00
レンズにUSB端子を装備
TAMRON Lens Utilityを使うと、同社製レンズのうちコネクターポート(USB Type-C)を搭載したレンズをPCから直接カスタマイズできるほか、ファームウェアの更新も可能となる。執筆時点での対応レンズは「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」(Model A063)と「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」(Model A058)の2本だ。
PCとレンズの接続は専用の「TAMRON コネクションケーブル」(CC-150、直販価格は税込2,500円)の使用が推奨されている。TAMRON Lens Utility自体は無償で、同社Webサイトからダウンロードできる。
レンズのカスタマイズという点では、レンズマウントに取り付けてPCと通信する「TAMRON TAP-in Console」が以前からあったが、TAMRON Lens Utilityの場合はそうしたアクセサリーが不要となる。
接続も簡単
カスタマイズの方法は2通りあり、レンズのみを接続する方法と、カメラにレンズを付けた状態で動作を確認しながら行うモードがある。
ここでは、35-150mm F/2-2.8 Di III VXDを用いてカメラで確認しながら行うモードでカスタマイズを試した。すぐに設定が反映されて動作を確認できるので、こちらがおすすめだ。
まずレンズを装着したカメラの電源をONにして、ケーブルでPCと接続する。その後、TAMRON Lens Utilityを起動して、「カメラで確認しながらレンズカスタマイズを行う場合」の「開始」を押す。
カスタムできる内容は、カスタムスイッチの割り当てとフォーカスリングの動作だ。
カスタムスイッチの割り当て
カスタムスイッチ(1/2/3)への割り当て可能な機能は以下の通り。いずれも、設定次第でフォーカスセットボタンの機能も自動的に決定される。
・カメラボディ機能割り当て
・フォーカスプリセット
・A-Bフォーカス
・フォーカス/絞りリング機能切り替え
・設定なし
フォーカスプリセット
ピントが合った状態からピントを外していく動作を自動で行う機能。動画撮影に有用で、ピントを外した状態でフォーカスセットボタンを1秒以上押してそのピント位置を記録させる。次いで、ターゲットにピントを合わせてから録画を開始する。
録画中にフォーカスセットボタンを押すとピントが外れた位置にフォーカスが移動する。もう一度フォーカスセットボタンを押すとボケた状態からAFが行われ、AF枠の位置にピントが来る。フォーカスの移動速度は8段階に設定できるので、表現に合わせた速度で撮影可能だ。
A-Bフォーカス
これも動画向けの機能で、画面内でピント位置を変える表現が可能になる。まずターゲットがあるA地点とピンと送り後のB地点でそれぞれフォーカスセットボタンを1秒以上押して、ピント位置を記録させておく。
録画中は、フォーカスセットボタンを押すごとにピント位置がAとBを行き来する。こちらもフォーカスの移動速度が8段階で設定可能となっている。
フォーカスプリセットとA-Bフォーカスは似た機能だが、A-Bフォーカスが決められた2点にしかピントが合わない(自動的にMFになる)のに対して、フォーカスプリセットは合焦時はカメラのAF枠に応じた位置にピントが来る(AF-Cで使用可能)ようになっていた。
これらの機能は静止画撮影でも利用可能。フォーカスプリセットなら夜景撮影時に明るいうちにピント位置を記録させたりできる。フォーカスの移動速度設定は動画撮影時のみ有効。静止画撮影時は最大速度でフォーカスが移動する。
なお、カスタムスイッチ(1/2/3)には同じ項目を設定することも可能。一例として、A-Bフォーカスを移動速度別で設定しておくといった使い方も可能だ。
フォーカスリングのカスタマイズ
フォーカスリングは、「MF回転方向」と「MFレスポンス」の2項目で設定できる。
「MF回転方向」はデフォルト(撮影者から見て時計回りで近距離方向)とリバースの2つ。慣れた方に設定すると良いだろう。
「MFレスポンス」はノンリニアとリニアがあって、ノンリニアはフォーカスリングの回転速度に応じてピントの移動量が変化するもの。速く回せば回転角度が少なくてもフォーカスの移動量は多くなる。こちらがデフォルトだ。
一方のリニアは、フォーカスリングの回転角度に応じてピントの移動量が決まる。回す速度は無関係で、言わば昔のMFレンズと同様になる。回転角は90/180/270/360度から選べる。
その他、レンズファームウェアのバージョン確認と、更新があればアップデートも可能となっている。
動作を見ながら設定できる便利さ
TAMRON Lens Utilityを使ったカスタマイズでは、設定中にカメラで動作を確認できる点が大きなメリットだろう。これは従来のTAP-in Consoleではできなかったことだ。
例えば、フォーカス移動の速度設定などはその場で見ながらやれば作業が早い。また、TAP-in Consoleが不要なのでそのぶん低コストでカスタマイズができるのもユーザーには嬉しい点。
A-Bフォーカスといった機能も、ミラーレスカメラで高品質な動画撮影が当たり前になった今、非常に有用な機能だ。というのも、MF操作でこれやろうとすると一定のスピードでピントを送ったり、合焦位置で綺麗に止めるのはなかなか難しいからだ。
自動フォーカスの機能で少々気になったのは、フォーカスセットボタンを押す際にその振動がわずかにレンズに伝わってしまう点。特に35-150mm F/2-2.8 Di III VXDはその全長にもかかわらず三脚座が無いので、雲台上で揺れやすい。かなりしっかりした三脚を使わないと揺れを抑えるのは難しいかも知れない。
そこで、このUSB端子を活用したリモートコントローラーのようなものがあれば、レンズに振動を与えること無く、フォーカスセットボタンを押せる。せっかくなのでこうした発展性にも期待したいところだ。
タムロンからは今後USB端子付きのレンズがさらに登場することとは思うが、こうしたインテリジェントなレンズは大歓迎だし、その先駆けになるのが今回のシステムと言えそうだ。