交換レンズレビュー
FUJIFILM GF45mmF2.8 R WR
GFXの性能を引き出す克明な描写
2018年1月30日 12:00
GF45mmF2.8 R WRは、中判ミラーレスカメラFUJIFILM GFX 50S用の6本目のライナップとして2017年11月に登場したレンズだ。
GF45mmの焦点距離は35mm判換算値にすると約36mm相当となるので標準レンズより若干広めの画角である。非球面レンズ1枚とEDレンズ2枚を使用し、諸収差を抑えた高画質な描写を実現しつつ、約490gと小型軽量。防塵・防滴シーリングも施されている。
発売日:2017年11月16日
実勢価格:税込22万円前後
マウント:富士フイルムGマウント
焦点距離:36mm相当(35mm判換算)
最短撮影距離:0.45m
フィルター径:62mm
外形寸法:約84×88mm
重量:約490g
デザイン
GFX 50Sに装着してみた感じは、常用している標準レンズのGF63mmF2.8と比較して重量はこちらが若干重くて長さも17mm長いのだが、鏡胴径が同じく84mmと似たようなサイズ感なのでフードも装着しての実際の使用時の印象としてはほぼ同じ。
GF63mm同様に中判センサー用のレンズと思えばかなりコンパクトな設計で、ボディ装着時に持った感じも35mmフルサイズの一眼レフカメラと変わらないくらいのサイズ感と質量なので手にも馴染む。
他のGFシリーズ同様にややマットな塗装仕上げで絞りリングはプラスチックを採用。フォーカスリングにはゴムが使用されている。
付属のレンズフードを装着した状態。ここではFUJINONの刻印を上にして取り付けているが、焦点距離が書かれている方が上部にくるようにすると、交換レンズを複数本使い分ける際には便利だ。深い切れ込みがあるデザインの花型フードで、斜めから射し込んでくる余分な光線を遮断するには十分な設計といえよう。
操作性
他のGFレンズ同様に、レンズ鏡胴手前側に大ぶりな作りのクリックストップ付き絞りリングがある。アナログカメラ時代を知っている写真家にとっては操作性や視認性においても大変便利だし、若い世代のユーザーにとってはアナログ的なデザインそのものが人気なのではないだろうか。
レンズ先端側にあるフォーカスリングは左手の指が自然に置かれるところにあり、スナップショットなど瞬時にマニュアルでピント位置を操作するような場面でも使い勝手が良いようにかなり広めの幅で作られている。
この2つのリングがGFレンズシリーズでは同じ位置関係に配置されているので、他のGFレンズを使っていれば慣れた感覚で行える。
作品
開放F2.8で手前の絵馬に対して斜めから構えて撮影。すぐ後ろにある絵馬から徐々にボケていき、自然な奥行き感も良好な表現だ。
鈴緒の七五三縄部分を至近距離で撮影。直径約5~6cmだが合焦部分では克明なマテリアル描写となった。後方の扉までは約2mだが金箔の輪郭ボケも素直な描写である。個人的にはマクロっぽい撮影もしたいのでもう少し寄れるとうれしい。
ダルマさんの集団をF16まで絞って撮影。中央部、お札横のピンク色のダルマさん集団に合焦させたのだが、手前の暖簾の布地から一番奥のダルマさんまでほぼパンフォーカスでピントも合っており、素材や色再現も良い感じだ。
旧家内部。壁に造られた飾り窓からかつての豪商の暮らしが見える。感度ISO1600でも文句ないシャープな描写。
手持ちのシャッター速度を考慮した範囲内で思いっきり絞ったF22(ちなみに最小絞りはF32)。フォーカスポイントは2階にある錆びた金属製扉。各部それぞれの素材感はリアルに再現されている。ややワイド寄りの画角ではあるが焦点距離は45mmなので手前の庇部分だけは被写界深度外となった。
おみくじを引いて出た箱の中身にフォーカスして開放絞りで最短撮影距離近くまで迫った。木製の箱も取っ手の金属もボケ味には満足だ。
屋根の上で修理作業をしている人を完全逆光でねらってみたが、フレアやゴーストの発生はかなり抑えられている。
燈籠の扉の取っ手にAFでフォーカスして撮影。背景にある木々の葉っぱの木漏れ日から来る逆光が造り出す玉ボケも自然な感じの描写。
真っ赤な鯛みくじが釣られている様子をスナップ。こういったシーンではマニュアルフォーカスが活躍しそうだ。鯛まで約1m程度だったが、他の部分はボカしながら立体的な描写ができる。
フィルムシミュレーションの設定は、かつて銀塩時代に多用していたVelvia(ベルビア)。彩度が高いフィルムの持ち味をデジタルで再現するのにも適したレンズだ。晴れ渡った冬の青空に灯籠にペイントされた赤と緑色が鮮やかな発色だ。
カリッとしたコントラストで暗部まで再現されている。この町には古い建物が今でもたくさん残されている。いろんな時代の建築物が混じっているのが、歴史的な遺産のもう1つの価値でもある。
ここはヨーロッパ? いやいや埼玉県。薄暮の時間がやってきた。僅かに輝く茜色を際立たせるためにギリギリまで切り詰めた露光設定でもディティールを残した描写だ。
冬の冷たい空が暮れるのは早い。外灯がポツポツと灯りはじめた頃、小江戸川越の顔ともいえる時の鐘がある通りをシルエットに暮れゆく空に向かってシャッターを切った。
昭和初期の建築物。昼間歩いていた時には気が付かなかったが夜になり灯りが点いたら素敵なステンドグラスがあった。同じく古いランプシェードを前ボケにしてステンドグラスを撮影。
まとめ
GFシリーズの広角系レンズとしては、これまでは標準からワイド域までの35mm判換算25-51mm相当のズームレンズGF32-64mmF4 R LM WRと、同じく35mm判換算18mm相当の単焦点広角レンズGF23mmF4 R LM WRの2種類だった。しかも2本とも開放F4だったところへ追加された本レンズは、開放F値が1段分明るいF2.8となった。
残念な点は最短撮影距離が45cmと若干長いことだろうか。もう少し被写体に近づけるとポートレートなどでも顔をクローズアップで撮影しつつ、背景をボカしながら広く撮り込むという表現が可能なのになと個人的には思う。
しかし、明るいF値、軽量コンパクトな設計、36mm相当の画角は汎用性に富んでいるのでドキュメントスナップからポートレート、風景にと様々なシーンで使いやすいレンズで、とてもシャープな描写だ。
位置付けはもちろん広角レンズであるが、第2の標準レンズとしての活躍の場も多いことだろう。