交換レンズレビュー
RF100-300mm F2.8 L IS USM
超望遠ズームなのに“全域F2.8” 高い対応力の望遠Lレンズフラッグシップ
2023年8月2日 07:00
「RF100-300mm F2.8 L IS USM」の魅力は、超望遠ズームレンズでありながら、ズーム全域で開放F2.8を実現していること。レンズ内手ブレ補正は5.5段分、ボディ内手ブレ補正機能との協調制御で6段分にアップ。小型軽量化により手持ち撮影も可能。EXTENDER(1.4倍、2倍)を併用することで、さらに焦点距離を延ばせる利点もある。
私は今でも「EF300mm F2.8L IS II USM」に「EF-EOS Rマウントアダプター」を付け、ミラーレスカメラで室内スポーツや鉄道撮影に使用している。
室内スポーツは、照明が暗い会場での撮影や、速いシャッタースピードを必要とする競技で、明るいF値のレンズは欠かせない。また鉄道撮影においても、早朝や夕方に通過する列車を撮るのに、F値が明るい超望遠レンズは重宝する。
「RF100-300mm F2.8 L IS USM」ならF2.8の明るさをズームで扱えるようになるうえ、EXTENDERで対応範囲を広げられる。ということで、鉄道および旅客機の撮影で試してみた。
各部説明
まずは一眼レフカメラ用のいわゆる“サンニッパ”「EF300mm F2.8L IS II USM」と比べてみよう。「RF100-300mm F2.8 L IS USM」の方が全長が75.4mm長く、質量も240gアップする。
しかし「EF300mm F2.8L IS II USM」に「EF-EOS Rマウントアダプター(110g)を装着すると、その差は+130gとほぼ同等になる。
つまり、「EF300mm F2.8L IS II USM」をズーム化させたことでレンズが7枚増えているにも関わらず、質量はあまり変わらないわけだ。随所で軽量化が図られていると感じた。
「EOS R3」に「RF100-300mm F2.8 L IS USM」を装着したときの重量バランスも良い。構えやすく振りやすく、鉄道や飛行機の撮影なら手持ちでの撮影も容易だった。
レンズを構えながら左手親指で回しやすいズームリングも優秀。被写体を追いかけながらのズームも滑らかに行える。
レンズ先端から、フード取り付け部、キャップ・フィルター取り付け部、レンズファンクションボタンが4か所という配置。続いてRFレンズの特徴でもあるコントロールリング、ズームリング、フォーカスリングが続く。
スイッチ部は上から、レンズファンクション&フォーカスプリセット&フォーカス呼び出し、撮影距離範囲の選択、フォーカスモード切替、手ブレ補正ON/OFF、手ブレ補正のモード切替となっている。
本レンズからの新たな装備が、鏡筒ボディ側のレンズファンクション/フォーカスプリセットボタン。カメラを構えながら右手で操作することを想定している。
レンズファンクションの設定はデフォルトではAF-OFFになっている。それ以外にもカスタマイズが可能。
三脚座には細ネジ穴と太ネジ穴を装備。そのほか、ストラップの取り付け部を鏡筒に備えている。
フィルター径は最大クラスの112mm。ドロップインフィルター機構ではないので、PLフィルターやNDフィルターを使う場合、このサイズの丸型フィルターを用意することになる。
また、レンズフードは短めなので、取り付けて持ち歩いてもそれほど邪魔にならない。
鉄道
さっそく鉄道を被写体に画質を確認してみた。
絞り開放でもズーム全域で隅々までクリアに写りで、単焦点レンズに匹敵する高画質といえる。ボディ側の各種レンズ光学補正にも対応しているので、F2.8でもシャープだ。ボケも美しい。
ズーム全域でF2.8ということで、悪条件下での撮影にも挑んでみた。夕方から夜にかけて暗くなる雨の中、金網越しおよび強いライトがレンズに入る状況だ。金網越しで撮影しているのでライトがクロスフィルターを付けたような輝きを見せている。
このような条件になると、一眼レフカメラと「EF300mm F2.8L IS II」の組み合わせではAFが迷い、シャッターが切れないまま新幹線が通過してしまうことがあった。それが今回は「乗り物優先」で運転席部分をAF追従、するとほぼすべてのカットでピントが合った。「EOS R3」の測距輝度範囲の広さ(EV-7.5~20)に感心するともに、本レンズの特殊コーティングASC(Air Sphere Coating)の効果についても実感した。
またこのときは雨の中の撮影ということで、レインカバーを付けて撮影。レンズ表面にはフッ素コーティングが施され、撥水性は十分感じられた。
こういう撮影の時、いつもなら次の列車が来るまでにカメラボディのレーティング機能でチェックを付けている。しかし今回はレインカバーをしていたので操作が少々面倒だ。そこで、右手側のレンズファンクションボタンをレーティングに設定。素早くレーティングを行うことができた。
流し撮り
本レンズは「EOS R3」の「流し撮りアシスト」にも対応している。スローシャッターにおける流し撮りの成功率が上がるという機能だ。
「流し撮りアシスト」離陸に向けて滑走路を走る飛行機を手持ちで流し撮り。F2.8で撮れるのでISO感度を抑えられ、暗いなかでもAFの追従性能が良く、流し撮りにも有効なレンズだ。
手ブレ補正機能
手ブレ補正機能(IS)はレンズ単体で5.5段分の補正効果をうたう。またボディ内手ブレ補正を搭載したカメラとの組み合わせで、協調制御により6段分の効果が得られる。辺りが暗くなってきたときや三脚が使用できない時などで役に立つ。
本レンズの手ブレ補正には3つのモードがある。モード1=静止している被写体、モード2=流し撮り、モード3=不規則な動きにそれぞれ対応する。私は常にモード3を使用していて、スポーツ撮影で有効活用している。
この写真は羽田空港第1ターミナルの展望デッキから第3ターミナル方面を狙っていた時に、太陽が沈んでから富士山が浮かび上がってきたところだった。手持ちでもしっかりレンズをホールドできればシャッタースピード0.3秒で手ブレを抑えることができた。
EXTENDERにも対応
私がこのレンズで一番気になっていた点。それは「EXTENDER RF1.4×」(以下RF1.4x)と「同RF2×」(以下RF2x)を装着した際の使用感だ。組み合わせたときの焦点距離・開放F値は、それぞれ140-420mm F4、200-600mm F5.6になる。
「RF1.4x」を「RF100-300mm F2.8 L IS USM」に装着してみたところ、AFの追従性が悪くなることはなく、画質低下も気にならなかった。
ただ「RF2×」を装着すると、被写体によりAFのつかみが鈍ることがあった。とはいえ、つかんでしまえば狙ったポイントにピントを合わせ続けてくれた。
「EXTENDER RF2×」を装着し、さらに1.6倍クロップ(約1,720万画素)で撮影。APS-Cサイズの「EOS R7」でも同様の画角で撮影できるわけだ。
撮影を終えて
100-300mmという広い焦点域でズーム全域F2.8を確保。AFの追従性も良く、特に悪条件下でレンズ性能の良さが際立った。
スペックを考えると比較的軽量なので、単焦点レンズやズームレンズを複数本持ち歩くよりフットワークは軽くなる。標準ズームレンズとして「RF24-105mm F4 L IS USM」も使っているので、「RF100-300mm F2.8 L IS USM」との組み合わせでさまざまな撮影に対応できそうだ。
EXTENDERとの相性も良い。このレンズの必需品になるだろう。鉄道、飛行機、スポーツ撮影などに最適なレンズだと感じた。
しかし、気になる点もあった。
ひとつはフォーカスリングの位置が分かりづらかったこと。AFで撮影することがほとんどだが、ファインダーをのぞきながらとっさにマニュアルでピントを合わせたい時もある。右手側のレンズファンクションボタンを押してAF-OFFにし、フォーカスリングをまわそうとしたが、フォーカスリングの位置がわからなくてシャッターチャンスを逃してしまったことがあった。まだ使い慣れてなく、フォーカスリングの位置がつかめていなかったのもあるが、何かしらの引っ掛かりがあると対応しやすいだろう。
もうひとつはシャッターを押しながらズームリングをまわすと、ピントがずれてしまう現象だ。例えば300mmで連写中、向かってくる列車がフレームからはみ出しそうになったのでワイド側へズームアウトすると、その瞬間にピントがはずれてしまうことが何度かあった。
設定や使い方に問題があったのか、このあたりは今後また試して検証してみたい。
【2024年4月16日】キヤノンよりRF100-300mm F2.8 L IS USMの最新ファームウェアが公開されました。更新することで、素早いズーム操作時にピントが合いやすくなるとのことです。