交換レンズレビュー
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary
Artシリーズでも通用しそうな描写力 逆光にも強い
2017年12月29日 12:00
シグマのミラーレスカメラ用交換レンズとしては5本目となる「SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary」がラインナップに加わった。
本レンズはAPS-Cフォーマットで24mm相当、マイクロフォーサーズでは32mm相当となる広角レンズで、開放F1.4の大口径ながら手に入れやすいコストパフォーマンスの高さが魅力だ。
広い画角を生かして切れ味の良い風景を撮っても良し、開放F1.4を生かして被写体に大きく寄れば豊富なボケとパースが付いたダイナミックな写真を撮ることもできるオールラウンダーだ。
シグマのミラーレスカメラ用交換レンズにはモデル名に「DN」が付いており、現在Artラインに3本、Contemporaryラインに本レンズを含め2本がラインナップされている。
Artラインのコンセプトは高性能レンズをふんだんに用い光学的に徹底的な画質向上を求めたものに対して、Contemporaryラインでは画質、重量、価格などのバランスを求めたレンズとなり、デジタル補正を含めて最大のポテンシャルを発揮するような設計思想となる。
SIGMA 16mm F1.4 DC DNは非球面レンズ2枚、FLDレンズ2枚、SLDレンズ1枚含む13群16枚構成で、9枚円形絞り、最大絞り値はF16となる。Contemporaryラインながら特殊レンズを贅沢に用い、絞り羽根も9枚と高級レンズ並のスペックだ。
今回はソニーEマウント用SIGMA 16mm F1.4 DC DNとα6500を組み合わせて撮影する機会を得たので詳しくレビューしていく。
発売日:2017年11月22日
実勢価格:税込4万9,000円前後
マウント:ソニーE、マイクロフォーサーズ
最短撮影距離:25cm
フィルター径:67mm
外形寸法:約72.2×92.3mm
重量:約405g
※数値はEマウント用
デザイン
外観は光沢感があり締まりのあるデザインでMF/AFスイッチなどもなくシンプルだ。MF/AFの切換はカメラ本体側から行う。
F1.4の大口径レンズなため最大径72.2mm(フィルター径67mm)、全長92.3mmとAPS-Cフォーマット向けとしてはややずんぐりした形状で、重量は405g。
α6500(453g)に装着すると若干フロントヘビーとなるが、全体が1kg未満なため撮影していて疲れるというほどではない。
マウントには堅牢性のある真鍮を採用。ゴムシーリングが施されているため、簡易防塵防滴機構を備えている事も注目だ。
前玉の枠部分にはシグマレンズの特徴でもある「Made in Japan」がさりげなく印字されている。しっかりとした花形レンズフードが同梱されているのも嬉しいポイントだ。
他のシグマレンズと同じくマウント交換サービスにも対応しているため、有償で他のマウント(現在はマイクロフォーサーズ用のみ)への変換も可能だ。
AF
SIGMA 16mm F1.4 DC DNには滑らかで静粛性のあるステッピングモーターを採用。撮影中の動作音が気になることはなく、動画撮影にも使える。AF速度も高速でα6500では中央から周辺の測距点までストレスなく使用することができた。
作品
まず、中央部の解像感についてだが、開放からキレのある描写をしてくれる。F1.4では等倍でよくみてみると少し甘く感じるものの、ここから1-2段程度絞るとこれはContemporaryラインのレンズなのか? と思うほどの描写を見せてくれる。
発売当初から良く写るレンズとの評判を聞いていたが、評判通りのキレのある描写だ。
周辺部の解像感は中央に比べればやや劣るものの、等倍で見れば分かるという程度のもので像の流れもごく僅か。広角レンズの周辺部でこの価格帯のレンズとしては十二分に解像していると言える。
周辺部同じく少し絞れば解像感は上がってくるが中央ほどまでは解像しない。
解像感はArtラインに匹敵するものであったが、形のしっかりしたものを撮影すると樽形の歪曲収差が少し目立つ。この辺が光学設計のみで収差を補正するArtラインとの違いなのかもしれない。
ただし、本レンズはサードバーティー製レンズながらカメラ内レンズ補正が使用できる。カメラ内でレンズ補正をONにしておけば歪曲を気にせず撮影できるためあまり心配はいらない(ただし画角がわずかに狭まる)。
F1.4と非常に明るいため、16mm(35mm換算24mm相当)の広角にも関わらず大きなボケを作りながら撮影をすることも可能だ。
手前の木の葉にピントを合わせて通りの奥をボカしてみた。ボケの出方は好みによるところも大きいが少し主張が強く固めに感じるかもしれない。
最短撮影距離は25cmと十分に寄って撮影することも可能だ。安価なレンズでは最短撮影距離付近で解像感が極端に落ちるものもあるが、本レンズは寄ってもピントの合った部分はしっかりと解像したままだ。
右下の花のしべの部分もしっかり解像している。開放、最短撮影距離で撮影すれば広角とは思えない浅い被写界深度で撮影を楽しめる。
また、少し話がそれるがF1.4では晴れた日に明るい被写体を撮ると1/4,000秒では露出オーバーとなる事も多いため、1/8,000秒が切れるボディだと安心だ(α6500は最高1/4,000秒のため度々露出オーバーとなった)。ND2かND4のフィルターを活用しても良いだろう。
9枚円形絞りを採用しているため玉ボケもしっかり円形となる。超ローレベルで水たまりの落ち葉にクローズアップし、F1.4で奥のキラキラを玉ボケにしてみた。
中央部は非常に綺麗な円形で周辺部でも口径食はあまりみられない。ただし、このような強い点光源を玉ボケにすると若干フチが強調される形となりここは好みが分かれるところだろう。
広角レンズなら画面内に太陽が入ることも多いため、光条の出方もチェックしてみたがそれほど絞り込まずF11でも素直な18本の光条が綺麗に出た。
F16まで絞り込まずこれだけ光条が出るなら小絞りボケによる解像低下も防げる。さらに、驚いたことにこれだけ太陽を直接画面内に入れてもゴーストがほとんど発生しなかったことだ。
このシーン以外でも何度か太陽を画面に入れてみたがゴーストの発生量は非常に小さく、フレアによるコントラスト低下もあまり見られない。しっかりとした反射防止コーティングが施されていることが伺える。
軽量なAPS-Cフォーマットのシステムとなるので街の中の映り込みなどアグレッシブなアングルも楽に挑戦可能だ。ワイドな画角を利用して左右対称の不思議な写真を撮影してみた。左右対処に撮るには反射している面にピッタリとレンズを付ける事が大事。その点でこのような小型なシステムはとても優れている。
中央から周辺まで高い解像感を得られるレンズのため、明暗差のある被写体を少し絞ってカッチリと撮りたい場合にも向いている。
陽が低くなる冬期は日中でも形が良い影が出やすいため本レンズ1本で広角スナップを楽しむのも良いだろう。歪曲補正を入れればこのようなレンガが背景になっているシーンでも歪みは気にならない。
まとめ
以上、SIGMA 16mm F1.4 DC DNの描写について作例を用いながら紹介した。本レンズの1番の魅力はキレのある高い解像感であり、Contemporaryラインとは思えぬ描写だ。ここだけ見ればArtと名乗っても良さそうな仕上がりだと感じた。
また、歪曲や色収差などもみられるものの、こちらはカメラ内や撮影後の現像時に十分補正可能なレベルなのでそれほど気にしなくても良さそうだ。
ボケ感は個人的には単焦点にしてみればやや硬さが残る気がするのだが、これだけ良く写る広角F1.4の大口径レンズが5万円以下というのはバリュープライスと言ってもよいのではないだろうか。
Eマウントで広角単焦点を考えているユーザーは第一候補として検討する価値のあるレンズであると感じた。