交換レンズレビュー
Canon EF85mm F1.4L IS USM
AFは高速で精度も高い 周辺まで高い解像力
2017年12月28日 12:00
2017年11月20日に、キヤノンは35mmフルサイズ対応の交換レンズ「EF85mm F1.4L IS USM」を発売した。
キヤノンEFレンズの85mmは、2006年3月に発売された超大口径のEF85mm F1.2L II USM(実勢価格は税込21万円前後)、軽量コンパクト設計のEF85mm F1.8 USM(実勢価格は税込5万5,000円前後)があり、今回の1本を加えて3本体制のラインナップとなる。
EF85mm F1.4L IS USM は、F1.4の明るさの大口径に加え、最新の光学設計でシャープなピントと美しいボケ味を両立している。また、85mmのレンズではキヤノン初となるISを搭載し、シャッタースピード4段分の手ブレ補正を実現。手持ちでのポートレート撮影のほか、風景やスナップを中心に幅広いシーン・被写体に対応する。
レンズ構成は非球面1枚を含む10群14枚。絞りは9枚羽根の円形絞り。最短撮影距離は0.85m。フィルター径は77mm。
鏡胴部には防塵・防滴構造が、レンズには表面に付着した汚れを取り除きやすいフッ素コーティングが施されており、過酷な状況での撮影にも耐えうる仕様となっている。
今回は、当レンズを用いてポートレート撮影を行った。EOS 5D Mark IVに装着して撮影した作例を見ながら、本レンズの魅力を体感していただければと思う。
発売日:2017年11月20日
実勢価格:税込18万円前後
マウント:キヤノンEF
最短撮影距離:0.85m
フィルター径:77mm
外形寸法:88.6mm×105.4mm
重量:約950g
デザイン
デザインはLレンズシリーズのものを踏襲。マット仕上げの黒い鏡筒にゴム製フォーカスリング、そしてレンズ先端部にはLレンズの象徴である赤いラインが刻まれている。
EF85mm F1.2L II USMのぼってりしたフォルムに比べると、スマートな印象だ。決して小さくはないがバランスの良いつくりをしているので、手になじみ安定したホールド感が得られる。
今回は撮影で3時間ほど持ち歩いたが、特に疲れは感じなかった。長時間の手持ち撮影をするユーザーを考えての設計がなされていると感じた。
レンズフードET-83Eが付属する。
操作性
フォーカスモードスイッチと手ブレ補正スイッチは、鏡筒の左側面にまとまっている。ちょうど左手の親指のポジションに配置されているので、ファインダーを覗きながらでもAFとMFを楽に切り替えることができる。
撮影中はスイッチの位置などいちいち確認していられないので、このシンプルなつくりは大変ありがたい。
AF
インナーフォーカスとリングUSM(超音波モーター)を採用し、さらに高速CPUと最適化したAFアルゴリズムによって、高速かつ高精度なAFを実現している。
当レンズを使ってみて一番驚いたことは、AFの速度と精度だ。筆者が普段使用しているEF85mm F1.2L II USMに比べると、AFの速度と精度が飛躍的に向上している。
暗所でも合焦速度はほとんど落ちず、狙ったところにぴったりと合う高速かつ高精度なAFが気持ちよく、ストレスなく撮影ができた。よりシャッターチャンスを逃さない仕様になったと感じた。
また、フルタイムMFも搭載されている。フルタイムMFとは、AFの後、撮影者が最終的なピント調整ができるように、ワンショットAFの後、フォーカスリングを回転させるだけで即時にMFが可能となる機能だ。これは、リングUSMを搭載したすべてのEFレンズで実現されている。
作品
モデルにフェンスの前を歩いてもらい、F5.6まで絞って撮影した。ピントの合っているモデルの顔や髪の毛だけではなく、画面の隅のフェンスまで鮮明に描写されており、周辺部の解像感も高いことがうかがえる。
さきほどの写真と同じシーンで、モデルの前にまわりこみ、絞り開放・順光で撮影をした。肌の質感がナチュラルに再現されていると感じた。特に、嫌味のないハイライト部の描写に、キヤノンのレンズらしさを感じた。
絞り開放でモデルに近づいた。背景の木漏れ日の点光源が円形ボケとなって表現されており、全体的に優しい雰囲気の写真に仕上がった。ボケの形は完全なる円形ではないが、気になるほどではない。
やや引いて、絞り開放でモデルの全身を撮影した。このくらい引くと、背景を判別できる程度にぼかした上、被写体を際立たせることができる。個人的には、絞り開放で引き絵を撮ったときのこの自然な描写が好みだ。寄りだけではなく引きでも多用したくなる。
モデルに、フェンスにもたれかかってもらったところを撮影した。レンズの色乗りが良いので、こういった黒っぽい部分の多い、濃いめのシチュエーションにも積極的に使いたくなる。
最短撮影距離(85cm)までモデルに近づきシャッターを切った。85cmというと、やや遠いように思えるが、モデルの顔で画面をいっぱいにできる距離だ。モデルにほぼ正面から向き合い、絞りは開放にて撮影をしたが、左のまつ毛にはピントが合い、右目はボケている。被写界深度の浅さを実感することができる。
カフェにて、カップに手を添えるモデルを撮影した。暗所であったが感度をあげたくなかったので、シャッタースピードを落として撮影をした。手持ちでシャッタースピードを1/15秒に設定したが、なんとブレていなかった。
筆者は普段、手ブレを恐れてEOS 5D Mark IVで手持ち撮影をする場合はシャッタースピードを1/125秒以下にすることはほとんどない。よって、今回手持ち1/15秒で撮影できたことに大きな驚きを覚えた。ISの強力さを改めて実感したシーンであった。
まとめ
高い画質や操作性はもちろんだが、手に馴染みやすいバランスの良いデザインになったこと、EF85mm F1.2L II USMに比べてAF速度、精度が圧倒的に向上したこと、ISの搭載により強力な手ブレ補正機能が備わったことで、手持ちポートレート派の撮影をより充実させるレンズに仕上がっていると思った。
ロケの多い筆者も、この1本であれば信頼して持ち歩ける、と感じた。