ミラーレスユーザーのための最新マウントアダプター入門

フルサイズ編:AFや手ブレ補正が動作する「スマートアダプター」を紹介

持っているキヤノンEF/ニコンF/ライカMレンズを活用しよう

本格的なミラーレスカメラ時代に突入し、それと歩調を合わせるようにマウントアダプター界隈も盛況だ。マウントアダプターは、一般的にはミラーレス機にオールドレンズを付けるために用いられるが、その一方で付加機能付きのものも、その数を増やしてきている。本稿ではこれからミラーレス機を使う人に向けて、最新マウントアダプターを中心にその基本と活用を解説していきたい。

第1回となる本稿は、35mm判フルサイズミラーレスカメラにおけるマウントアダプターの活用を解説する。

乗り換え組のためのスマートアダプター

マウントアダプターを使うと、マウント形状の異なるボディとレンズを連結できる。要はマウントの変換リングだ。ミラーレス機が登場し、このマウントアダプターが爆発的にその種類を増やしていった。ミラーレス機はフランジバック(マウント面から撮像素子までの距離)が短いため、様々なマウントのマウントアダプターが製造できるからだ。昨今、マニアの間で流行っているオールドレンズによる撮影は、ミラーレス機とマウントアダプターが大きく貢献している。

その一方で、最近は実用面でのマウントアダプター活用が注目を集めている。フルサイズミラーレスカメラが着々と浸透し、デジタル一眼レフカメラからミラーレス機への乗り換えが進む。そうした中、デジタル一眼レフカメラのレンズ資産をミラーレス機でも活用したいというユーザーが増えてきたのだ。そうしたニーズに応えたのが、スマートアダプターである。

スマートアダプターとは、現行AFレンズを他社マウントボディでAF動作させるマウントアダプターのことだ。電子接点を搭載し、レンズとボディが電子的に連係する。

電子接点を有するスマートアダプターは、AF動作に加えてボディ側での絞り制御が可能だ。

この手の製品は従来からあったのだが、AF精度が実用的とは言い難いものだった。しかし、ミラーレス機が像面位相差AFを搭載したことをきっかけに、スマートアダプターのAF精度が飛躍的に向上している。もちろん、レンズ側の手ブレ補正機能、レンズ情報のEXIFへの記録なども可能だ。

スマートアダプターの種類によっては、レンズ側の手ブレ補正が有効になる。レンズの機能性をマウントアダプター経由でもしっかり活かせる。
スマートアダプター経由で撮影した画像は、絞り値やレンズ名など、各種レンズ情報がEXIFに記録される。純正レンズと同様に、EXIFによる画像管理が可能だ。

さて、本稿ではフルサイズミラーレス用のスマートアダプターを中心に紹介していきたい。フルサイズミラーレスの利点は、やはりレンズ本来の画角で撮れることに尽きるだろう。スマートアプダターで他社AFレンズを使う際も、フルサイズミラーレスなら使い慣れた画角で撮影できる。また、ソニーのフルサイズミラーレスはボディ内手ブレ補正機能を搭載しており、撮影面での扱いやすさも見逃せない。今回は各種スマートアダプターの動作ムービーも用意した。フルサイズ用の最新スマートアダプターのパフォーマンスを実感してほしい。

ハイスピードコントラストAFを搭載:Commlite CM-EF-E HS

Commlite(コムライト)の「CM-EF-E HS」は、キヤノンEFマウントおよびEF-SマウントレンズをソニーEマウントボディで動作させるスマートアダプターだ。

キヤノンEFマウントレンズをソニーEマウントボディに装着する。

電源はカメラから供給され、AF動作とボディ側での絞りコントロールを実現する。キヤノンのレンズをソニー製のミラーレスカメラで使うという、人気カテゴリーのスマートアダプターだ。

本製品を像面位相差AF対応ボディで使うと、きわめて高速にAFが動作する。これは昨今のスマートアダプターのトレンドだ。

では、像面位相差AF未対応のボディではどうか。本製品はハイスピードコントラストAF駆動システムを搭載しており、像面位相差AF未対応のボディでも高速なAF動作が可能だ。

キヤノンEFマウントレンズのAF動作と絞りコントロールが可能だ。
電子接点を搭載しており、レンズとボディが電子的に情報をやり取りする。

マウントアダプター側面のC/Pボタンを押すと、ハイスピードコントラストAFと像面位相差AFが切り替えられる。これまで旧タイプのボディだとスマートアダプターはAFのスピードと精度に期待できなかったが、このCM-EF-E HSなら、ボディを選ぶことなくスピーディーなAFを実感できるわけだ。ハイスピードコントラストAFの搭載は、本製品を選ぶうえで大きな動機づけになるだろう。

側面のC/PボタンでハイスピードコントラストAFと像面位相差AFを切り替えられる。
アダプター内部のUSB端子はファームウェアのアップデート時にmicro USBケーブルをつなぐ。
着脱式の三脚座を装備する。太い鏡胴のレンズでも三脚固定が可能だ。

細い草に速やかにピントが合う。AFの精度も申し分ない。

ソニーα7 III / キヤノンEF70-300mm F4-5.6L IS USM + CM-EF-E HS / 絞り優先AE(1/320秒・F5.6・±0EV) / ISO 500 / AWB

STM(ステッピングモーター)対応レンズのAFが高速動作する。実に快感だ。

ソニーα7 III / キヤノンEF50mm F1.8 STM + CM-EF-E HS / 絞り優先AE(1/400秒・F1.8・-0.7EV) / ISO 100 / AWB

ニコンGレンズがAF動作する:Commlite CM-ENF-E1 PRO

スマートアダプターは様々なメーカーから登場しているが、その多くはキヤノンEFマウントレンズ用である。そうした中、Commlite「CM-ENF-E1 PRO」はニコンFマウントのAFレンズに対応した製品だ。

電子接点付きのニコンFマウントを備え、ニコンAF-SレンズのAF動作が可能。絞りリングのないGレンズは、カメラボディ側で絞りをコントロールできる。

ニコンFマウントのAFレンズをソニーEマウントボディで使えるようになる。
絞りリングのない、いわゆるGレンズに対応。カメラボディ側で絞りを制御できる。
電子接点を搭載し、ニコンのAFレンズがソニーEマウントボディでAF動作する。

AF動作は安定しており、精度は実に良好だ。シャッター半押しでテンポよくピントが合う、実用性の高いマウントアダプターである。

前述の通り、ニコンレンズ用のスマートアダプターは選択肢が限られている。ニコンのレンズ資産をソニーEマウントボディで活かしたいのであれば、CM-ENF-E1 PROは貴重な選択肢だ。

マウントアダプター一体型の三脚座を装備している。

開放で手前の枯葉にピントを合わせる。迷いなく速やかに合焦した。

ソニーα7 III / ニコンAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + CM-ENF-E1 PRO / 絞り優先AE(1/200秒・F1.8・±0EV) / ISO 100 / AWB

遠景での合焦もスピーディーだ。ポプラ並木にジャストでピントが合う。

ソニーα7 III / ニコンAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + CM-ENF-E1 PRO / 絞り優先AE(1/2,000秒・F2.8・±0EV) / ISO 100 / AWB

オールドレンズをAFで使う:TECHART LM-EA7

オールドレンズは、その大半がMFレンズだ。マウントアダプター経由でミラーレス機に装着した際は、当然ながら手動でピントを合わせることになる。そんなオールドレンズ界の常識を覆してしまったのが、TECHART(テックアート)の「LM-EA7」だ。このマウントアダプターはレンズ取り付け側がライカMマウントになっているのだが、小型モーターを内蔵しておりマウント面が前後に動く。そう、マウント面の動作でAFを実現するというキワモノ中のキワモノなのだ。

レンズ側がライカMマウント、ボディ側がソニーEマウントだ。
一見すると普通のライカMマウントだが、このマウント面が前後に動作する。

ただし、動作面はいたって堅実だ。昨今の像面位相差AF搭載ボディが功を奏し、小気味よくピントが合う。AFモードをスポットSにして、被写体にピンポイントでピントを合わせるのがコツだ。

マウントアダプター下部に小型モーターを内蔵する。底面に電子端子があり、電源はカメラボディから供給される。

LM-EA7のレンズ側マウントはライカMマウントだ。とは言え、ライカMマウントレンズ専用というわけではない。別途マウントアダプターを追加して二段重ねにすると、様々なマウントのオールドレンズをAFで使えるようになる。最近はLM-EA7を常用してオールドレンズで撮影している人も増えている。

マウントアダプターを二段重ねにすれば、ライカMマウント以外のオールドレンズもAFで使える。ここではニコンF→ライカMマウントアダプターを重ねている。
シャッターを半押しすると、このようにマウント面が前後して被写体にAFでピントを合わせる。

AFモードをスポットSに設定し、水仙の花にピンポイントでピントを合わせる。MFレンズがAF動作することに感動を禁じ得ない。

ソニーα7 III / ニコンNikkor 55mmF1.2 + TECHART LM-EA7 + K&F Concept KF-NFM / 絞り優先AE(1/1,250秒・F2・±0EV) / ISO 100 / AWB

ニコンZとEOS R用アダプターも登場

今秋、キヤノンとニコンから相次いでフルサイズミラーレスカメラが登場し、カメラ業界そのものが大きな節目を迎えた。久々の新マウント登場にマウントアダプター業界も湧く。

新マウントにマウントアダプターを一番乗りでリリースしたのは、焦点工房の自社ブランドSHOTENだった。ニコンZ 7とEOS Rの発売に合わせ、ライカMマウント用のニコンZマウントアダプター、ならびにキヤノンRFマウントアダプターを投入。時を置かずして、様々な一眼レフカメラのマウントに対応する製品も発売した。

左側がSHOTENのキヤノンEFマウントアダプター、右側が同じくSHOTENのニコンZマウントアダプターだ。ライカMマウントを筆頭に、多様なマウントに対応する製品をリリースしている。

これまでオールドレンズのベースボディはソニーα7シリーズが定番だったが、SHOTENのマウントアダプターを契機に、ニコンZシリーズとEOS Rも人気ベースボディに成長していくことだろう。

ニコンZ 6にライカMマウントのズミルックス50mm F1.4を装着。定番ライカレンズをフルサイズ機で心おきなく使える。
ロシア製のM42マウントレンズ、ヘリオス-40-2 85mm F1.5を装着した。希代のクセ玉がニコンのフルサイズ機で甦る。

ニコンボディでズミルックスを使う日が来るとは。SHOTENのマウントアダプターは無限遠から近接まで問題なくピント合わせできた。

ニコンZ 6 / ライカSUMMILUX 50mm F1.4 + SHOTEN LM-NZ / 絞り優先AE(1/800秒・F1.4・±0EV) / ISO 100・AWB

ニコンZ 6は手ブレ補正機能を搭載しており、中望遠オールドレンズを使う際も手ブレの心配が少ない。

ニコンZ 6 / Helios-40-2 85mm F1.5 + SHOTEN M42-NZ / 絞り優先AE(1/1,600秒・F1.5・±0EV) / ISO 100 / AWB

次回はAPS-Cとマイクロフォーサーズ編

35mm判フルサイズ環境のマウントアダプターは、すでに十分すぎるほどの種類がある。オールドレンズで撮るということに関して、オーソドックスなマウントであればどんなレンズでも付く状況だ。その一方で、今回最新のスマートアダプターを試用し、その精度と速度に驚かされた。以前テストした製品と比べ、段違いに性能が良くなっているのだ。像面位相差AFの恩恵は、めぐりめぐってマウントアダプターにも及ぶ。きっとレンズ資産活用の切り札になってくれるだろう。

次回はAPS-C機とマイクロフォーサーズ機のマウントアダプター事情を紹介する。こちらもスマートアダプターを中心に、実用性の高い製品が目白押しだ。このカテゴリーはレンズ本来の画角よりも狭くなってしまうものの、その点を補うマウントアダプターもある。マウントアダプターがレンズ活用のキーアイテムであることを実感してもらえるだろう。

制作協力:焦点工房

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp