ミラーレスユーザーのための最新マウントアダプター入門
フルサイズ編:AFや手ブレ補正が動作する「スマートアダプター」を紹介
持っているキヤノンEF/ニコンF/ライカMレンズを活用しよう
2018年12月6日 07:00
本格的なミラーレスカメラ時代に突入し、それと歩調を合わせるようにマウントアダプター界隈も盛況だ。マウントアダプターは、一般的にはミラーレス機にオールドレンズを付けるために用いられるが、その一方で付加機能付きのものも、その数を増やしてきている。本稿ではこれからミラーレス機を使う人に向けて、最新マウントアダプターを中心にその基本と活用を解説していきたい。
第1回となる本稿は、35mm判フルサイズミラーレスカメラにおけるマウントアダプターの活用を解説する。
乗り換え組のためのスマートアダプター
マウントアダプターを使うと、マウント形状の異なるボディとレンズを連結できる。要はマウントの変換リングだ。ミラーレス機が登場し、このマウントアダプターが爆発的にその種類を増やしていった。ミラーレス機はフランジバック(マウント面から撮像素子までの距離)が短いため、様々なマウントのマウントアダプターが製造できるからだ。昨今、マニアの間で流行っているオールドレンズによる撮影は、ミラーレス機とマウントアダプターが大きく貢献している。
その一方で、最近は実用面でのマウントアダプター活用が注目を集めている。フルサイズミラーレスカメラが着々と浸透し、デジタル一眼レフカメラからミラーレス機への乗り換えが進む。そうした中、デジタル一眼レフカメラのレンズ資産をミラーレス機でも活用したいというユーザーが増えてきたのだ。そうしたニーズに応えたのが、スマートアダプターである。
スマートアダプターとは、現行AFレンズを他社マウントボディでAF動作させるマウントアダプターのことだ。電子接点を搭載し、レンズとボディが電子的に連係する。
この手の製品は従来からあったのだが、AF精度が実用的とは言い難いものだった。しかし、ミラーレス機が像面位相差AFを搭載したことをきっかけに、スマートアダプターのAF精度が飛躍的に向上している。もちろん、レンズ側の手ブレ補正機能、レンズ情報のEXIFへの記録なども可能だ。
さて、本稿ではフルサイズミラーレス用のスマートアダプターを中心に紹介していきたい。フルサイズミラーレスの利点は、やはりレンズ本来の画角で撮れることに尽きるだろう。スマートアプダターで他社AFレンズを使う際も、フルサイズミラーレスなら使い慣れた画角で撮影できる。また、ソニーのフルサイズミラーレスはボディ内手ブレ補正機能を搭載しており、撮影面での扱いやすさも見逃せない。今回は各種スマートアダプターの動作ムービーも用意した。フルサイズ用の最新スマートアダプターのパフォーマンスを実感してほしい。
ハイスピードコントラストAFを搭載:Commlite CM-EF-E HS
Commlite(コムライト)の「CM-EF-E HS」は、キヤノンEFマウントおよびEF-SマウントレンズをソニーEマウントボディで動作させるスマートアダプターだ。
電源はカメラから供給され、AF動作とボディ側での絞りコントロールを実現する。キヤノンのレンズをソニー製のミラーレスカメラで使うという、人気カテゴリーのスマートアダプターだ。
本製品を像面位相差AF対応ボディで使うと、きわめて高速にAFが動作する。これは昨今のスマートアダプターのトレンドだ。
では、像面位相差AF未対応のボディではどうか。本製品はハイスピードコントラストAF駆動システムを搭載しており、像面位相差AF未対応のボディでも高速なAF動作が可能だ。
マウントアダプター側面のC/Pボタンを押すと、ハイスピードコントラストAFと像面位相差AFが切り替えられる。これまで旧タイプのボディだとスマートアダプターはAFのスピードと精度に期待できなかったが、このCM-EF-E HSなら、ボディを選ぶことなくスピーディーなAFを実感できるわけだ。ハイスピードコントラストAFの搭載は、本製品を選ぶうえで大きな動機づけになるだろう。
細い草に速やかにピントが合う。AFの精度も申し分ない。
STM(ステッピングモーター)対応レンズのAFが高速動作する。実に快感だ。
ニコンGレンズがAF動作する:Commlite CM-ENF-E1 PRO
スマートアダプターは様々なメーカーから登場しているが、その多くはキヤノンEFマウントレンズ用である。そうした中、Commlite「CM-ENF-E1 PRO」はニコンFマウントのAFレンズに対応した製品だ。
電子接点付きのニコンFマウントを備え、ニコンAF-SレンズのAF動作が可能。絞りリングのないGレンズは、カメラボディ側で絞りをコントロールできる。
AF動作は安定しており、精度は実に良好だ。シャッター半押しでテンポよくピントが合う、実用性の高いマウントアダプターである。
前述の通り、ニコンレンズ用のスマートアダプターは選択肢が限られている。ニコンのレンズ資産をソニーEマウントボディで活かしたいのであれば、CM-ENF-E1 PROは貴重な選択肢だ。
開放で手前の枯葉にピントを合わせる。迷いなく速やかに合焦した。
遠景での合焦もスピーディーだ。ポプラ並木にジャストでピントが合う。
オールドレンズをAFで使う:TECHART LM-EA7
オールドレンズは、その大半がMFレンズだ。マウントアダプター経由でミラーレス機に装着した際は、当然ながら手動でピントを合わせることになる。そんなオールドレンズ界の常識を覆してしまったのが、TECHART(テックアート)の「LM-EA7」だ。このマウントアダプターはレンズ取り付け側がライカMマウントになっているのだが、小型モーターを内蔵しておりマウント面が前後に動く。そう、マウント面の動作でAFを実現するというキワモノ中のキワモノなのだ。
ただし、動作面はいたって堅実だ。昨今の像面位相差AF搭載ボディが功を奏し、小気味よくピントが合う。AFモードをスポットSにして、被写体にピンポイントでピントを合わせるのがコツだ。
LM-EA7のレンズ側マウントはライカMマウントだ。とは言え、ライカMマウントレンズ専用というわけではない。別途マウントアダプターを追加して二段重ねにすると、様々なマウントのオールドレンズをAFで使えるようになる。最近はLM-EA7を常用してオールドレンズで撮影している人も増えている。
AFモードをスポットSに設定し、水仙の花にピンポイントでピントを合わせる。MFレンズがAF動作することに感動を禁じ得ない。
ニコンZとEOS R用アダプターも登場
今秋、キヤノンとニコンから相次いでフルサイズミラーレスカメラが登場し、カメラ業界そのものが大きな節目を迎えた。久々の新マウント登場にマウントアダプター業界も湧く。
新マウントにマウントアダプターを一番乗りでリリースしたのは、焦点工房の自社ブランドSHOTENだった。ニコンZ 7とEOS Rの発売に合わせ、ライカMマウント用のニコンZマウントアダプター、ならびにキヤノンRFマウントアダプターを投入。時を置かずして、様々な一眼レフカメラのマウントに対応する製品も発売した。
これまでオールドレンズのベースボディはソニーα7シリーズが定番だったが、SHOTENのマウントアダプターを契機に、ニコンZシリーズとEOS Rも人気ベースボディに成長していくことだろう。
ニコンボディでズミルックスを使う日が来るとは。SHOTENのマウントアダプターは無限遠から近接まで問題なくピント合わせできた。
ニコンZ 6は手ブレ補正機能を搭載しており、中望遠オールドレンズを使う際も手ブレの心配が少ない。
次回はAPS-Cとマイクロフォーサーズ編
35mm判フルサイズ環境のマウントアダプターは、すでに十分すぎるほどの種類がある。オールドレンズで撮るということに関して、オーソドックスなマウントであればどんなレンズでも付く状況だ。その一方で、今回最新のスマートアダプターを試用し、その精度と速度に驚かされた。以前テストした製品と比べ、段違いに性能が良くなっているのだ。像面位相差AFの恩恵は、めぐりめぐってマウントアダプターにも及ぶ。きっとレンズ資産活用の切り札になってくれるだろう。
次回はAPS-C機とマイクロフォーサーズ機のマウントアダプター事情を紹介する。こちらもスマートアダプターを中心に、実用性の高い製品が目白押しだ。このカテゴリーはレンズ本来の画角よりも狭くなってしまうものの、その点を補うマウントアダプターもある。マウントアダプターがレンズ活用のキーアイテムであることを実感してもらえるだろう。
制作協力:焦点工房