ミラーレスユーザーのための最新マウントアダプター入門
APS-C・マイクロフォーサーズ編:小型軽量ボディをサブカメラとして活用
画角を広くするフォーカルレデューサータイプなど
2018年12月13日 07:00
前回は、フルサイズミラーレスカメラ向けの最新マウントアダプターを紹介した。今回はAPS-C機とマイクロフォーサーズ機のマウントアダプターを解説しよう。このカテゴリーでもスマートアダプターは盛況だ。加えて、画角を35mm判の本来の画角に近づけるフォーカルレデューサータイプも見逃せない。最新製品を中心に、その機能性と使い勝手をレポートしよう。
後半では、富士フイルムのAPS-Cミラーレスカメラとマイクロフォーサーズ機のマウントアダプター事情を中心にお届けしたい。
APS-C機でレンズ資産を再利用
APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレス機は、装着したレンズの焦点距離が約1.5倍になる。そのため手持ちのレンズ資産を本来の画角で使いたいという場合、不利であることは否めない。
しかしその反面、フルサイズミラーレス機に比べて小型なので、サブ機としてAPS-Cミラーレスカメラを使うという選択は十分に考えられるだろう。幸いなことに、レンズの焦点距離をフルサイズ相当に変換するマウントアダプターも登場している。使用するマウントアダプターを厳選すれば、APS-Cミラーレスカメラでも実用性の高いレンズ資産の再利用が可能だ。
一度は試したいハイパフォーマンス:Fringer FR-FX1
富士フイルムのミラーレス機を使っているのであれば、Fringer(フリンガー)の「FR-FX1」はぜひとも注目しておきたいスマートアダプターだ。FR-FX1は、キヤノンEFマウントレンズを富士フイルムXマウントボディに装着する。AF動作に加え、マウントアダプター側の絞りリングで絞りコントロールが可能だ。絞りリングで直感的に絞り制御できるのが良い。
本製品最大の特徴は、AFの精度と速度が頭ひとつ抜きん出ている点だ。像面位相差AF搭載機の登場で、スマートアダプターは軒並みパフォーマンスが良くなった。それを踏まえた上で、FR-FX1の精度と速度は突出したものがある。スマートアダプターにネガティブな印象を持っているなら、一度FR-FX1を試してみてほしい。今時のスマートアダプターはやるなあと、印象が変わるはずだ。
周辺部に被写体を配置したところ、狙い通りに合焦してくれた。動作がスピーディーで実に使い勝手がよい。
やや遠距離での撮影。中央の黄色く色付いた木にピントを合わせる。悩むことなく速やかに合焦した。
安価で高画質なレデューサーアダプター:Lens Turbo II NG-FX
APS-C機で35mm判フルサイズ相当の画角で撮りたい。そんなわがままを可能にする製品がある。それがフォーカルレデューサーアダプターだ。レデューサー(縮小光学系)と呼ばれるレンズを内蔵し、APS-Cで35mm判フルサイズ相当の画角に変換する。
中一光学の「Lens Turbo II」(レンズターボII)シリーズは、コストパフォーマンスのよいレデューサーアダプターとして定評がある。3群4枚のレンズを搭載し、画角を0.726倍に変更。富士フイルムAPS-C機にNG-FXI経由で焦点距離50mmのレンズを付けた場合、50mm×1.5倍×0.726倍で35mm判換算55mm相当となる。なお、レンズターボIIは富士フイルムAPS-C機のイメージセンサーに最適化されており、周辺部の解像力が向上している。
ニコンレンズに対応した「レンズターボII NG-FX」にはもうひとつ利点がある。それは絞りリングのないニコンGレンズに対応している点だ。ノーマルタイプのニコンFマウントアダプターの場合、ニコンGレンズを付けると絞りが絞り込まれた状態のままになる。それに対し、ニコンGレンズ対応のレンズターボII NG-FXであれば、マウントアダプター側の絞りリングで絞りを制御できるのだ。つまり、ニコンGレンズを実絞りで使えるのがアドバンテージである。
ニコンGレンズをノーマルタイプのマウントアダプターでX-T3に装着。75mm相当となる上、最小絞りなのでガチガチに絞り込まれた描写だ。
NG-FX経由で撮影した。35mm判換算55mmに相当する。絞りは1段ほど絞り、背景を適度にボカしてみた。
ライカレンズで接写したい:SHOTEN LM-FX M
マウントアダプターは元来、レンズとカメラをサポートする立場のアイテムだ。ところが、レンズ本来の機能性を超えるアイテムがある。それがマクロアダプターだ。マウントアダプターにヘリコイドを組み込み、これを繰り出すことでレンズ本来の最短撮影距離よりも寄ることができる。
特に最短が0.7〜1mと長いライカレンズでは、このマクロアダプターが俄然仕事をしてくれる。マクロアダプターの種類にもよるが、レンズ本来の最短距離の1/2程度までは接写可能だ。
SHOTENの「LM-FX M」もそうした製品のひとつで、ライカMマウントレンズでマクロ撮影を実現するマウントアダプターだ。
ヘリコイドの繰り出し量は6mmで、この手の製品として繰り出し量が多い設計だ。それだけぎりぎりまで寄れるというわけだ。
レンズの最短撮影距離1mで撮影した。レンジファインダー機のレンズは寄りきれないのがもどかしい。
レンズを最短にセットし、LM-FX Mも最短にして撮影した。ライカレンズでここまで寄れるのは感動的だ。
まだあるAPS-C機向けマウントアダプター
先にレデューサーアダプターのレンズターボII NG-FXを紹介したが、レデューサーは不要、ニコンGレンズの絞り機能だけほしいという人もいるだろう。そうしたニーズに応えるのがK&F Conceptの「KF-NGX2」だ。絞りリングを搭載し、ニコンGレンズを実絞りで使える。もちろん、ニコンFマウントレンズも装着可能だ。
また、キヤノンのAPS-Cミラーレスカメラ、EOS Mシリーズを使っているならば、コムライト「CM-EF-EOSM」に注目しておきたい。これはキヤノンEFマウントレンズをキヤノンEF-Mマウントボディに装着し、AF動作させるスマートアダプターだ。同じ目的の製品はキヤノン純正品もあるが、純正のアダプターよりもリーズナブルな価格帯を実現している。
マイクロフォーサーズのアダプター事情
元祖ミラーレスカメラのマイクロフォーサーズだが、昨今、オールドレンズのベースボディとしては少々分が悪い。焦点距離が2倍になってしまうため、レンズ本来の画角で撮ることが難しいからだ。
しかしこれは見方を変えれば、小振りのレンズで望遠撮影ができるというメリットに転じる。マイクロフォーサーズ機は総じてコンパクトなので、手頃なサイズで望遠システムという発想も一興である。ここからは、そんなマイクロフォーサーズ機向けのマウントアダプターを紹介しよう。
全部盛りのスマートアダプター:Commlite CM-AEF-MFT Booster
Commlite(コムライト)の「CM-AEF-MFT Booster」は、言うなれば全部盛りのキヤノンEFマウントレンズ対応スマートアダプターだ。
4群5枚のレデューサーレンズを搭載しており、0.71倍での撮影が可能。
電子接点を備え、キヤノンEFマウントレンズのAF動作と絞り制御ができる。AF動作も申し分のないパフォーマンスで、狙ったところにストレスなく合焦してくれる。隅々まで解像し、マスターレンズの画質をスポイルしない作りになっている。
焦点距離50mmのレンズを例にとると、50mm×2倍×0.71倍で35mm判換算で71mm相当となる。マイクロフォーサーズ機でAPS-C機相当の画角を得られるわけだ。マイクロフォーサーズ機で画角をかせぎたい場合に、魅力的なマウントアダプターである。
アダプター側には三脚座が装備されている。三脚座底面はアルカスイス互換規格だ。
レデューサーレンズを省略したCM-AEF-MFTもラインアップしている。
F5.6まで絞って遠方の木立にピントを合わせた。隅々まで木々のディテールを描いている。
開放で手前の花にピントを合わせ、背景を大きくボカした。他社製レンズなのに、純正レンズのように安心して使えた。
ニコンGレンズを実絞りで:Commlite CM-NF-MFT
マイクロフォーサーズ機で絞りリングのないニコンGレンズを使いたいなら、Commlite「CM-NF-MFT」がよい候補となるだろう。
ニコンGレンズは、マウントの互換性を確保しただけのアダプターだと実絞りで撮影できず、絞りが最小絞り固定となってしまう。しかし、このCM-NF-MFTは絞りリングを搭載しており、ニコンGレンズを実絞りで使用できるのだ。
絞りリングはクリック感のある仕様なので、どの程度絞り込んだかを把握しやすいだろう。MFでも構わないからニコンGレンズを実絞りで使いたい、といったニーズにマッチしたマウントアダプターだ。
開放から1段相当絞って撮影した。ニコンGレンズを任意の絞りにセットして撮影できる。
まとめ
さて、2回にわたってスマートアダプターを中心にマウントアダプター事情を紹介した。ミラーレス機が本格的な普及期に突入し、これまでデジタル一眼レフカメラと併用していた層も、ミラーレスカメラへの完全移行を検討しているにちがいない。そうした状況だからこそ、他社AFレンズをAF動作させるスマートアダプターや本来の画角を実現するレデューサーレンズ搭載アダプターが重要度を増してくる。
デジタル一眼レフカメラの高性能レンズを処分してしまうのか、それともミラーレス機でもスタメンレンズとしてがんばってもらうのか。これまで愛用してきたレンズを新たな環境でも使いたいなら、本稿で紹介したようなマウントアダプターの活用を検討してみてはどうだろう。
制作協力:焦点工房