イベントレポート

日本カメラ博物館で「明治150年 カメラの夜明け」展が開幕

約200点をテーマごとに展示 古写真技法に関する講演会も

日本カメラ博物館は、特別展「明治150年 カメラの夜明け」を2月27日から6月24日まで開催する。内閣官房「明治150年」の関連施策として開催される特別展。

技術史の観点で"写真とカメラの夜明け"といえる明治時代に、日本と世界でどのようなカメラが発展してきたのか、どのように普及するようになったかを展示紹介する趣旨。約200点の展示品は、以下のテーマごとに分類されている。

・スライディングボックスカメラと組立暗箱
・スタジオカメラ・組立暗箱
・フォールディングカメラ
・クラップカメラ
・ボックスカメラ
・レフレックスカメラ
・ステレオカメラ
・パノラマカメラ
・特殊な機構や構造を持つカメラ
・明治期の日本製カメラ

1839年(天保10年)にフランスで写真が発表されてから約10年、鎖国状態の幕末でも各藩は最新技術として写真を研究していた。日本の開国と同時に、より多くの技術や文化が西洋から流入。当初はプロ(職業写真師)のものだった写真が、乾板などの登場によってアマチュアにも普及するようになる。海外留学や海外から来た技術者に学んで写真用品を国産化する試みも進められるなどして、写真産業の基礎が構築されていったという。

左の超小型スライディングボックスカメラは撮像範囲が17×23mm、右は83×108mm。前後2つの箱をスライドさせてピント調節を行うスライディングボックスカメラ(ジルー・ダゲレオタイプからの形式)から、蛇腹を用いた組立暗箱に移行していく。
さまざまな組立暗箱。
小西本店の「チェリー手提暗函」。国産最初の工業化された初心者向けカメラとして知られる。右が初代(1903年)のレプリカ、左が2代目(1904年)の実機。ともに60×90mmの乾板。
明治期に活躍した女性写真師の錦絵。
携帯暗室。湿板写真は撮影現場で感光剤の塗布から現像処理まで行わねばならなかった。左は年代不詳の日本製、右は1880年のイギリス製。
ドイツ・H.マダーの完全金属製フォールディングカメラ「インビンシベル」(1898年)。クロームメッキに赤蛇腹の外観が特徴的。130×180mm乾板。
ドイツ・C.P.ゲルツの「アンゴー」(1896年)。1920年代まで長期間製造されたクラップカメラ。薄く折りたためて軽量なため、報道写真の現場で戦後まで使用された。80×105mm乾板。手前は小西本店の「写真機械用品目録」。
同じくドイツ・C.P.ゲルツの「テナックス」(1908年)。45×60mm乾板。テナックスの名は1960年代まで続く。クラップカメラとは、カメラをセットした時に生じる「ぱっちん」という音が由来。
スウェーデンのハッセルブラッドが最初に販売したボックスカメラ「スベンスカ エクスプレス」(1900年)。90×120mm乾板。
乾板やロールフィルムの内蔵などにより、感光材料の位置にピントグラスを置くのが難しくなったために登場したのが「レフレックスカメラ」。撮影用レンズと別に構図・ピント確認用のレンズを持つ二眼レフカメラに対し、撮影用レンズと感光材料の途中に鏡を入れてファインダーに光路を導いたのが一眼レフカメラ。
フォクトレンダーの「ステレフレクトスコープ」(1888年)。中央のビューレンズ、左右のテイクレンズを持つ三眼式のステレオカメラ。二眼レフカメラ「ローライフレックス」の縁戚としても知られる。
様々なパノラマカメラ。広角レンズを装着したもの、大きな画面を撮影できるレンズで細長い画面を撮影するもの、首を振るようにレンズが動くもの、カメラ本体が回転するものと4種類に大別できるという。
特別展の図録を販売している。

講演会

4月21日(土)には、関連する講演会として「古写真の魅力と学術写真の探求 島津斉彬はどのように写されたのか」(要申込。300円)を開催。農学博士・元農林水産省家畜衛生試験場写真室の安藤義路氏を講師に迎える。

安藤氏は銀板写真や湿板写真などの古写真技法を研究しており、大河ドラマ「西郷どん」のために島津斉彬の銀板写真を再現した。講演会では、それらの作製手法や感想を実物の作例とともに紹介し、古写真の魅力を語るという。

安藤氏が撮影・処理した銀板写真。感光材料には水銀の代わりにヨウ素を用いている。安全性は高いものの感度を取るのが水銀より難しく、研究のポイントになっている。
角度により像が鮮明に見える。手前には保護のためにガラスが貼られている。
もとになる銅板(下)と、銀メッキして表面を磨いた銅板(上)。

CP+2018にも出展

日本カメラ博物館は、3月1日開幕の「CP+2018」で特別展示「フランスカメラとレトロかわいいカメラ」を開催。CP+2018の特集テーマが「パリ」であることにちなんだもので、"写真発祥の国"フランスのユニークで貴重なカメラを展示するとしている。

本誌:鈴木誠