ニュース

富士フイルム、新世代のセンサー/プロセッサーを搭載した「X-T3」

AF・連写性能を強化 スポーツファインダーモードも

富士フイルム株式会社は、9月6日、ミラーレスカメラ「FUJIFILM X-T3」の発売を発表した。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2種類。

9月20日の発売で希望小売価格はオープン。店頭予想価格はボディのみ18万5,000円前後、レンズキットが23万5,000円前後(ともに税別)。レンズキットにはXF18-55mmF2.8-4 R LM OISが付属する。

2016年9月に発売されたミラーレスカメラ「X-T2」の後継機。X-Tシリーズは一眼レフカメラ風の中央にファインダーがあるデザインを踏襲した上位シリーズ。本機はX一桁シリーズの3世代目となる。

本モデルでは撮像素子と画像処理エンジンが刷新されたほか、前モデルおよび同じく一眼レフカメラスタイルの「X-H1」に比べて、連写性能や動画撮影能力が強化された。

撮像素子と画像処理エンジンを刷新

撮像素子にはAPS-Cサイズの有効2,610万画素のX-Trans CMOS 4センサーを搭載。同シリーズ初となる裏面照射型を採用した。これにより高解像度と高いS/N比を実現したとしている。また、従来ISO 200からとなっていた常用最低感度が引き下げられISO 160からとなった。上限は12800。拡張時はISO 80~51200となる。

画像処理エンジンもX-Processor 4に進化した。4つのCPUを搭載したことで処理速度が大幅に向上したとしており、3世代目であるX-Processor Proを搭載するX-T2およびX-H1に比べ、約3倍の処理速度となっているという。

AF

画像処理エンジンの刷新に伴う処理速度の高速化により、静止画撮影時のAF速度・精度も大幅に向上した。

像面位相差AFにおける低輝度限界が、それまでの-1EVから-3EVまで拡張された。これによりキャンドルライトのような暗いシーンでも高精度なピント合わせが可能だとしている。

また、位相差演算アルゴリズムを改善したことで、画面全体を動き回る激しいスポーツなどでも正確なフォーカシングが行えるという。

このほか、動きのある被写体を捉えやすくする機能として「スポーツファインダーモード」を搭載。画面内に1,660万画素(1.25倍クロップ)相当のフレームが表示され、被写体がフレームに入る前から対象を視認できるという機能で、通常時より短いブラックアウトタイムで撮影できるようになるとしている。

顔AFもX-T2、X-H1比で約2倍に向上。AF-Cにも対応することで、動きのあるポートレート撮影や正面から横顔まで、これまで顔検出/瞳AFが難しかったシーンでもしっかりとピント合わせを行うという。

動画撮影機能

4K(29.97pなど)のほか、DCI 4K(24pなど)での記録にも対応する。連続記録時間は、4K、DCI 4Kともに29.97pで約20分まで。

4K/60Pの10bit出力も実現している。同社によればAPS-Cサイズ以上のセンサーを搭載したミラーレスカメラとしては世界初だとしていう。

ノイズ判別精度を向上させた新たなノイズリダクション処理に加え、新たな機能として、直前のフレームとの差分情報を元にノイズ低減を行う「4Kフレーム間NR」を採用。ISO12800でのノイズを約2段分改善したとしている。また、F-Log撮影の最低感度がISO800からISO640へ拡張された。

強化された撮影性能

連写枚数は、最大約11コマ/秒、電子シャッター使用時には最大約30コマ/秒となる。電子シャッター使用時のローリング歪みについては、X-T2・X-H1比で約半分に低減したという。

また、新たに「プリ撮影」機能が搭載された。これは、シャッターボタンを半押しした時点から記録を開始し、レリーズタイムラグを擬似的になくすというもの。

画づくり

同社中判ミラーレスデジタルカメラ「GFX 50S」にのみ搭載されていた「カラークロームエフェクト」をAPS-Cの「Xシリーズ」として初めて搭載。同機能は特定の色の濃淡を印象的に強調し、立体感、質感を効果的に演出する、というもの。また、X-H1に搭載されていたフィルムシミュレーション「ETERNA」も搭載する。

モノクロ表現も強化された。フィルムシミュレーションに「モノクロ調整」を搭載。モノクロ表現で温黒調・冷黒調の調整が可能になる。「ACROS」も引き続き搭載される。

バッテリー・撮影枚数

バッテリーには、NP-W126Sを使用する。静止画の撮影可能枚数は約390枚(ノーマルモード、XF35mmF1.4 R使用時)。4K動画の実撮影では約40分(29.97p時)。

X-T3専用の縦位置バッテリーグリップ「VG-XT3」も用意する。メーカー希望小売価格は4万9,400円(税別)。防塵・防滴・耐低温-10度に対応し、バッテリー2個が装填できる。都合、ボディ含めて計3個でのバッテリー運用が可能となり、ノーマルモード時で最大約1,100枚の撮影が可能となる。

また、VG-XT3は撮影途中で電池が切り替わっても途中停止しなくなったため、ストレスなく撮影を続けることができるという。また、バッテリーグリップ自体が充電機能を有しており、付属するACアダプター(AC-9VS)を使用して装填したバッテリー2個の同時充電が可能。フル充電に要する時間は約2時間だとしている。

なお、X-T2の「縦位置パワーブースターグリップ」(VPB-XT2)をX-T3で使用することはできない。また、VG-XT3は名称から"ブースター"がなくなっているが、これはグリップの有無に関わらず、X-T3のパフォーマンスが変わらないため。

外観・機能

ファインダーには倍率0.75倍、369万ドットのEVFを搭載。表示タイムラグは0.005秒で、表示フレームレート約100フレーム/秒を実現。

この他、基本的な外観・インターフェースは前モデル「X-T2」を踏襲。細かなダイヤル形状の変更等で使いやすさに配慮したブラッシュアップが図られている。横方向に開く3方向チルト機構の背面モニターも健在。

その他の改良点として、3.0型の背面モニターに新たにタッチパネルが採用された。タッチパネルはX-E3にも搭載されていたが、Tシリーズでも導入されることとなった。

また、EVFの視度調整ダイヤルにロック機構が採用された。ノブを引っ張り出して回転させる仕組みで、持ち運び中の誤操作を防ぐ。

軍幹部のダイヤルや背面のボタンも大型化したほか、ヘッドフォン端子をボディ側に搭載。これにより動画撮影に必要な端子類がカメラ本体に集約された。端子カバーは取り外し式で、動画撮影用リグの使用で妨げとならない構造となっている。

入出力端子にはUSB Type-C(USB3.1 Gen1)規格を採用。HDMIマイクロ端子(Type D)、3.5mm径ステレオミニジャック、2.5mm径リモートレリーズ端子、シンクロターミナルを備える。

外形寸法は、132.5×92.8×58.8mm。質量は約539g(バッテリー、メモリーカード込み)、約489g(本体のみ)。

本誌:宮澤孝周