FUJIFILM X、それぞれのコンセプトを探る

フィルム譲りの高画質。そして風景撮影で嬉しい防塵・防滴・耐低温ボディ

風景写真家・小松ひとみさんに聞く「X-T2」の魅力

小松ひとみさんとご愛用中のFUJIFILM X-T2。

富士フイルムのミラーレスカメラ「Xシリーズ」には、同じイメージセンサー、同じ映像エンジンを搭載した4モデルが存在する。X-T2、X-Pro2、X-E3、X-T20の4機種だ。

他のカメラメーカーのラインナップと異なり、明確なヒエラルキーを持たないこれら4台の違いとは何か。スペックシートからわからない特徴を導きたく、それぞれのリアルユーザーに愛機の話を聞いた。それがこの連載「FUJIFILM X、それぞれのコンセプトを探る」になる。

今回のテーマは「FUJIFILM X-T2」。

すべての写真家のニーズに応えられるというフラッグシップモデルがX-T2だ。スナップを意識したもうひとつのフラッグシップ「X-Pro2」に対して、汎用的な立ち位置が特徴だ。富士フイルムがユーザーとして想定するのは、オールジャンルのプロ・ハイアマチュア。

例えば、レンズ光軸と位置を揃えたセンターファインダースタイルは、一眼レフカメラライクな操作性を提供。縦位置パワーブースターグリップVPB-XT2の装着で作動するBOOSTモードでは、メカシャッターで約11コマ/秒の連写性能を実現。強化されたAF性能と合わせ、動体撮影もこなす。そして防塵・防滴・耐低音構造によるタフネス性能。4K動画についても設計時より対策済みであり、あらゆる撮影業務に対応するのだ。(編集部)

イメージセンサーX-Trans CMOS IIIセンサー 約2,430万画素
レンズマウントFUJIFILM Xマウント
撮影感度ISO100〜51200(拡張設定を含む)
最高シャッター速度1/8,000秒(メカシャッター)
連写性能約8コマ/秒(本体のみ) 約11コマ/秒(VPB-XT2装着時)
ファインダー0.5型有機EL 約236万ドット
液晶モニター3型3方向チルト 約104万ドット
動画最大3,840×2,160/29.97p(4K) MPEG-4 AVC/H.264準拠
外形寸法132.5×91.8×49.2mm
質量約507g(付属バッテリー、メモリーカード含む)

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今回はX-T2を愛用する写真家・小松ひとみさんに、X-T2を選んだ理由や気に入っているところなどをお聞きした(聞き手:曽根原昇)

雪国の風景を求めて 写真家・小松ひとみさんとは

写真展「みちのく色語り」の会場で。

雪国の自然・文化を題材とした美しい写真で知られる写真家・小松ひとみさん。秋田県に在住されていることもあり、東北地方にちなんだ観光ポスターや雑誌・新聞での連載など、幅広く活躍されているのでご存知の方も多いだろう。

そんな小松さんは、女子バスケットボールの実業団出身という、写真家としては少々異例の経歴をもっている。しかし、退団後に写真家助手に転身したことで、それまでと違った日々野山を歩く生活へと変わり、それ以来、みちのく(東北地方)の四季折々の自然が見せてくれる豊かな色調にすっかり魅せられるようになってしまったという。それだけに、小松さんの色に対する造詣はとても深く、その作品は非常に繊細で美しい色彩で表現されていることを特徴としている。

そして、銀塩時代から被写体の特性や状態に合わせ、いくつものカラーフィルムを使い分けていたという小松さんが、現在最も愛用しているカメラが富士フイルムの「X-T2」である。

現在、東京、大阪など6都市を巡回する写真展「みちのく色語り」を開催中で、同名の写真集を上梓するなど、相変わらずご多忙の小松さんである。

『樹華文様』 撮影:小松ひとみ
 X-T2 / XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR / 絞り優先(1/800秒・F13・-1.0EV) / ISO 200 / 98.2mm / Velvia
『雀の毛槍』 撮影:小松ひとみ
 X-T2 / XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR / 絞り優先(1/4,000秒・F2.8・-1.0EV) / ISO 400 / 194mm / Velvia

JPEGで完成された画質がXシリーズの魅力

−−積極的に富士フイルムのデジタルカメラを使っている理由は何でしょうか?

小松:フィルムの時代から、富士フイルムの「フジノン」レンズの描写が好きだったことが理由のひとつです。私自身ずっと使っているので信頼があります。

−−確かにフジノンレンズは昔から定評のあるレンズで今も多くのファンいますね。

小松:もうひとつの理由が、富士フイルムのデジタルカメラはフィルムと同じ感覚で使えることです。フィルムシミュレーションを使えばフィルムを選ぶようにデジタルカメラが使えます。アマチュアの方に富士フイルムのデジタルカメラはどうかと聞かれた時には「これはデジタルカメラと思ってはダメですよ。いろんな種類のフィルムが入ったカメラなんですよ」と答えるようにしています(笑)

フィルム時代と同じ色をメニュー操作で切り替えられる。富士フイルムのカメラで気に入っている点のひとつだそうだ。

−−フィルムは主に何を使っていましたか? やはり風景写真なのでベルビアとか?

小松:もちろんベルビアも使っていましたけど、色やコントラストに合わせてプロビアやアスティアなどもよく使っていました。富士フイルムのデジタルカメラなら、そのフィルムチェンジがすごく簡単、極端な話、1枚ずつでもフィルムの種類を(デジタル的に)変えられるので気に入っています。フィルムカメラに馴染んだご年配の方にも勧めやすいですし、実際に喜んでもらえます。

−−今現在でもフィルムは使っていますか?

小松:使っていますよ。でも、今ではほとんどの撮影をデジタルカメラでするようになっています。雑誌の仕事が多かったのでデジタルカメラを導入したのがキッカケでしたけど、フィルムシミュレーションが使える便利さが手伝って、風景写真などの作品も富士フイルムのデジタルカメラで撮ることが多くなりました。

−−小松さんは、東北の職人さんなど、文化芸能の写真も多く撮られているということですが、風景写真家としてもアマチュアの方に富士フイルムのデジタルカメラをお勧めできますか?

小松:もちろんです。自分が使ってみて本当によいと思いますので、皆さんにも紹介しています。特に、JPEG撮ってだしで後処理なしで色がとてもよいところが勧められる理由です。私は基本的に、RAW+JPEGで撮るようにしていますけど、富士フイルムのデジタルカメラなら撮って出しのJPEGでほぼ完成されていますので、あまりRAWに頼らずに済みます。

『あぜに咲く』 撮影:小松ひとみ
 X-T2 / XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR + 1.4x / 絞り優先(1/2,000秒・F8・+0.3EV) / ISO 400 / 181mm / Velvia

ミラーレスカメラで撮れる作品が増えた

−−他にデジタルカメラを導入してよかったことはありますか?

小松:軽いということですね。今の富士フイルムのレンズ交換式デジタルカメラはすべてミラーレスなので、山に行くときでもシステムが軽くなって助かります。

−−元アスリートの小松さんなのに!?

小松:もう還暦ですよ(笑)体力が落ちていくのは仕方がないことです。でも写真に対する気持ちは若いのでまだまだ撮りたいものはたくさんありますよ。

−−機材がミラーレスになって軽くなると写真も変わりますか?

小松:中判のフィルムカメラなどですと「ここで撮るぞ!よいしょ!」みたいな腰を据えた撮り方でした。でも、ミラーレスカメラなら息をするように瞬きするように気軽に目についたものを撮ることができます。逆に言えば、フィルムの時についつい撮り逃していたシーンを、ミラーレスカメラになった今、撮り集めているところです。

ミラーレスカメラの機動性がなければとれなかったという作品。山間で相当な距離を歩き、被写体のそばまでたどり着いて撮影した。

X-T2をメインカメラにする理由は?

−−今よく使っていらっしゃるデジタルカメラはX-T2ですよね?

小松:はい、X-T2をメインカメラとして使っています。

−−富士フイルムのミラーレスカメラといえば、X-T2の他にもX-Pro2、X-T20、X-E3など、同じ撮像センサー(X-Trans CMOS III)と同じ画像処理エンジン(X-Processor Pro)を使ったカメラがラインナップされています。つまり画質は同じと考えていい訳で、その中でX-T2を選んだ理由とは何でしょうか?

小松:それは何といってもX-T2が防塵・防滴構造を採用しているからです。ホコリが多く、さらに水で濡らしてしまうこともある山中にいるわけですから、カメラは丈夫である方が安心できます。寒冷な東北で写真を撮ることが多いので、耐低温構造であることも大切です。

−−水やホコリが原因で写真が撮れなくなっては意味がないですものね。

小松:防塵・防滴・耐低温構造を採用したということで、初代X-T1の頃から愛用しています。X-T2ではさらに、フォーカスレバーが装備されたり、グリップがリデザインされて握りやすくなったりなど、操作性がずっと良くなったこと撮影していて実感できるのでいいですね。

『水辺に潜む』 撮影:小松ひとみ
 X-T2 / XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR / 絞り優先(1/40秒・F14・-1.7EV) / ISO 400 / 392mm / Velvia

−−X-T2は3方向チルト式モニター(縦位置・横位置に関わらず光軸上にモニターを配置できる機構)も便利そうですね。

小松:そうそう、ミラーレスカメラで軽くなったうえに、ハイアングルやローアングルの撮影も簡単にできるので、ますます撮影できるシーンが増えました。

−−交換レンズは何をお使いですか?

小松:広角は「XF10-24mmF4 R OIS」、標準は「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」、望遠は「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を主に使っています。

小松さんが使用しているXF10-24mmF4 R OISとXF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR(X-T2に装着)。

小松:特に最近は「XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」を気に入っていて、今回の写真展でもこのレンズで撮った写真を多く展示しています。富士フイルムのレンズの中では比較的大きなレンズですので、これはやはり安定したデザインのX-T2だとバランスよく撮れます。

小松さんのXF50-140mmF2.8 R LM OIS WRとX-T2。大きめのレンズには、グリップが比較的大きくファインダーがレンズ光軸上にあるX-T2が使いやすい。

まとめ

小松さんが富士フイルムのデジタルカメラを使う理由は、「フィルムと同じ色、同じ感覚で撮ることができる」ことと、「軽量なミラーレスカメラなのでこれまで以上に撮影領域が広がった」という2点に要約することができるだろう。さらに、数ある富士フイルムのデジタルカメラの中でX-T2を選んだ理由は「防塵・防滴・耐低温仕様で安心して使える」ということだった。

単純なようではあるが、東北地方の厳しい環境のなかで自然と向き合う小松さんにとって、それらの理由は非常に重要であることが理解できた。小松さんにとって、X-T2はもはやかけがえのない信頼できる相棒となっているようだ。

X-T2といえば、登場時には縦位置パワーブースターを装着した動体撮影能力に注目が集まった。それは文化芸能の撮影において役立っており、その上でフィルム譲りの画質やタフネスさが、自然風景の撮影で力を発揮してくれているということである。

差別化することなく同じ画質を提供してくれる富士フイルムのXシリーズカメラであるが、撮影条件の違いによるカメラの選択に道筋をつけてくれたインタビューとなった。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。