特別企画
ロモグラフィーのダゲレオタイプレンズをいち早く使ってみた
現代によみがえった強烈なボケのレンズ
2016年7月21日 07:00
今年4月、ロモグラフィーがクラウドファンディングサイト「MotionGallery」で発表して衝撃を呼んだ「Daguerreotype Achromat 2.9/64 Art Lens」(以下ダゲレオタイプレンズ)。
ロモグラフィーのWebサイトで、絶賛プレオーダーを受付中です。
そんなダゲレオタイプレンズの試作品を使う機会がありましたので、報告したいと思います。
ダゲレオタイプレンズって何?
改めてダゲレオタイプレンズの紹介を簡単に。
ダゲレオタイプレンズは、ロモグラフィーの「Petzval 85」「Petzval 58 Bokeh Control」に続く、35mm判対応のマニュアルフォーカス交換レンズです。
Petzval(ペッツバール)はご存知の通り、背景をぐるぐるボケにしてしまうことに意義があるレンズ。
一方ダゲレオタイプレンズは、初の実用式写真撮影法として1839年に発明された、ダゲレオタイプのカメラに搭載されたアクロマート(色消し)レンズ(世界初の光学レンズとされる)に発想を得たという製品。
果たしてどんな描写が得られるのでしょうか。
手にしてびっくり これは……
「はい、試作品ですよ」とぽんと手渡されたそれは…表面がザラザラで、いかにも作りかけといった見た目。
「これって……ひょっとして磨く前の真鍮?」
すかさず私の脳裏には、「試作品なので写りがわかれば良い。真鍮を磨くのは無駄である」と静かに語る、腕組みをしたロシア人熟練工の姿が浮かびました(ダゲレオタイプレンズの製造は、ロシアのゼニットが担当しています)。同時にざらついた手触りと重みに金属らしさを覚えて「これはこれで良いかな」と思い始める始末。磨く前の真鍮に触れるという、貴重な経験になりました。
もちろん製品版ではPetzvalと同様、表面はピカピカに磨かれていることでしょう。プレオーダーした方は、どうぞご安心ください。
ちなみに今回試した真鍮ゴールド(になるはずのレンズ)の他に、ブラックもあります。ロモグラフィーオンラインショップでの販売価格は、真鍮ゴールドが5万9,800円、ブラックが6万9,800円。
レンズフードを外したところ。一番左はキャップです。
レンズフードのPetzvalと同じく、レンズフードの先端に取り付けられます。
マウント面です。EFマウント。
マウントアダプターを介して、α7 IIに装着してみました。凛々しいというか神々しいというか。
焦点距離は64mm。開放F値はF2.9。お借りしたのはキヤノン用ですが、ニコン用やペンタックスK用も予約も受け付けています。
試作品には絞り板もついてました。借りた時はこんな風にじゃらんと束ねられていました。
こうやって差し込んで使います。
これはStandardタイプの絞り板。差し替えることで、F2.9からF16まで調整可能です。
これはLumière(ルミエール)。
こちらはAquarelle(アクエール)。
ちなみに今回のセットについてきた、このレンズポーチにベタ惚れしました。コシがあるしっかりした革素材が気持ち良い。
Petzval 58 Bokehにも付いてきますが、単体でも4,980円で購入可能です。
撮ってみたら
さっそく外に持ち出して撮影してみました。カメラはα7 IIです。
紗がかかったようなふわっとした世界の中、ピントがあった箇所が立ち上がってきます。これはずいぶんとソフトな描写。プラス補正で柔らかさが強化されます。
少し違うけど、Petzval張りのぐるぐるボケも。
Aquarelle絞りで撮影。刺々しい背景のボケをみてください。
この日はドン曇りでしたが、もっと陽光が明るい条件だと、Aquarelle絞り独特のボケ描写が強調されていたでしょう。
同じ被写体をStandard絞り、Lumière絞り、Aquarelle絞りで。
ボケ描写の差がすごいことになっています。
次も絞り板を変えて撮影。
結構寄れるのも、このレンズの良い点です。
F2.9で最短撮影距離で撮影。Standad絞りで開放のF2.9です。ソフトレンズっぽい趣き。
こちらはStandard絞りでF4。
F4にすると結構しゃきっと写りますね。ソフトな描写を残しつつモノの形も描く。色々試したくなります。
独創的なコンセプトに期待大!
いや、久しぶりにワクワクしましたね。ダゲレオタイプレンズの描写は想像以上におもしろかったです。絞り板を替える操作も楽しいし。ソフトな描写のため見辛いピントも、ライブビューなら拡大できるので意外に問題なし。
おそらくポートレートでの利用がふさわしいのでしょう。ただし最短撮影距離の短さを生かせば、料理や小物の撮影でも威力を発揮しそうです。
この強い個性をどう作品に生かすのかは、撮影者それぞれの感性次第。創造性を刺戟するレンズですね。発売されたらどんな作品が世に出回るかいまから楽しみです。
モデル:片岡ミカ
※価格表記はロモグラフィーオンラインショップでの販売価格で、すべて税込です。