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あの「ペッツバール型レンズ」がどうなったかロモグラフィーに聞いてきた

皆さんは覚えているだろうか。今年7月、ロモジャパンはクラウドファンディング企画「Lomography Portrait Petzval Lens」を発表。19世紀のペッツバール型レンズを現代によみがえらせ、キヤノンEFマウントおよびニコンFマウントのレンズとして発売するというものだ。

Lomography Portrait Petzval Lens。キヤノンEFマウント用とニコンFマウント用を用意。一般購入者向けの出荷は来春になる見込み。

 その奇抜なプロジェクトが話題を呼び、目標100万円の出資募集は無事クリア。海外からの出資が多くを占めたものの、日本でもたくさんの支援者が現れたという。

 このほどロモジャパンの直営店に担当者のTat Tso氏が来日したとのことで、製品化への進捗状況を聞きに行った。

 その前に「Lomography Portrait Petzval Lens」について、簡単におさらいしよう。このレンズは、初の大口径レンズとして知られるペッツバールを復刻したもの。フォクトレンダー向けに作られたものが有名だ。

左が19世紀のペッツバール型レンズ。右がLomography Portrait Petzval Lens。ひとくちにペッツバール型といっても数多くが存在したが、なるべくオリジナルの設計に近づけたとのこと。

 レンズ構成は3群4枚。開放F値はF2.2。中央がシャープで、背景に渦巻きボケが生じるという収差を売りにしたレンズになる。

 絞りはF16まで6段階。真円の穴を開けた薄い鉄板を差し込む方式で、撮影者がのぞむ絞り値に差し替える。フォーカスは鏡胴下の丸いノブを回すことで調整する。

 鏡筒は真鍮。19世紀当時のイメージを持たせたレトロなデザインを採用したという。試作品を見せてもらったが、分厚い真鍮外装の質感と、フォーカスノブの重い操作性が印象的だった。

 現在、ロシアの一眼レフカメラ・レンズメーカー、Zenit(ゼニット)社で製造を進めており、まずはクラウドファンディングの出資者に手渡すための数量を作っている最中だという。出荷は来年のはじめ頃と見られる。

 その後、来春には一般の購入者向けに発売される。販売価格は検討中とのことだ。

 試作品の完成度は高く、早い段階での発売が可能に思えた。が、全品がハンドメイドとのことで、そう簡単に量産できるものではないという。

製造現場で撮影された写真(以下同)。鏡筒は真鍮製で、金色に輝く。塗装はされない。
鏡筒は真鍮削り出しにより作られている。
かぶせ式のレンズキャップも真鍮製。

 Zenit社で設計・製造を行なう理由は、民間企業はもとより、軍事までカバーするZenit社の品質を見込んでのことという。もともとロモグラフィーではゼニットのカメラを取り扱っており、その関係は深い。

 なおこのレンズは、ロモグラフィーが純粋なカメラマーケットに挑戦する最初の製品になるという。これまでロモグラフィーの製品は、ヴィレッジ・ヴァンガードなどの書籍・雑貨店での販売が中心だった。今回はキヤノンおよびニコンのデジタル一眼レフカメラに装着できることから、カメラ専門店などへの販路も考えているそうだ。

クラウドファンディング企画ではブラックカラーの限定モデルも用意された。黒の塗装がはげると、真鍮の下地が現れるはずとのこと。

(本誌:折本幸治)