新製品レビュー

ロモグラフィーの新レンズ「Lomogon 2.5/32」で撮影してみました

独特な描写と不思議な絞り調整が楽しい

ロモグラフィーの新レンズ、Lomogon 2.5/32が登場します。

1992年に発売されたコンパクトフィルムカメラ Lomo LC-Aに採用されたレンズ(32mm F2.8)を再設計し、一眼レフカメラで使用できるようにした製品です。

近年のロモグラフィーの製品は、クラウドファンディングを活用して世に出ることが通例になっています。今回のLomogonもクラウドファンディングで発表されました。目標金額の100万円に対し、すでに1,000万円以上が集まるという人気ぶりです。もちろん製品化、そして発売が決定しています。

発売後は今年の12月以降に順次発送されるとのこと。クラウドファンディングへの支援者には、販売予定価格の最大40%引きで提供される予定です。

対応マウントは、キヤノンEF、ニコンF、ペンタックスK。各種ミラーレスカメラのマウントアダプター同梱版も用意されます。

Lomogon 2.5/32はこんなレンズ

※本ページ内の作例およびテキストは、試作品を使用したものです。外観・仕様・画質などは実際の製品とは異なる場合があります。

では、Lomogon 2.5/32について見ていきましょう。

ユニークなのは、外装の材質を選べること。真鍮ゴールド、真鍮ブラックに加えて、アルミニウム鏡筒のブラックの計3種類がラインアップされています。

今回は真鍮ゴールドの試作機を使ってみました。ロモグラフィーの真鍮鏡筒レンズといえば、ペッツバールダゲレオタイプが思い浮かびますが、それらと同様のずっしりとした重厚感が味わえます。

ニコン用のLomogon 2.5/32を、マウントアダプターを介してソニーα7 IIに装着したところです。

ちなみに重量ですが、WebサイトのQ&Aによると「最後まで改良を加えて、できる限り軽量化する予定です」とのことです。

レンズ構成は6群6枚。焦点距離は32mm。広角レンズとしてみるとそれほど広い画角ではないですが、28mmと35mmの中間的な画角は日常的に使いやすいレンズといえます。

また、開放F値はF2.5で、Lomo LC-Aに採用されるレンズよりも1/3段ほど明るくなっているのが特徴。味わい深いぼけが特徴のレンズだけに、少しでも開放F値が明るいのは嬉しいです。

最短撮影距離は40cm。Lomo LC-Aでは最短80cmだったので、大幅に短縮されました。ワイドレンズなので、背景を意識しつつも、被写体をより大きく写せ、インパクトのある一枚に仕上がります。

ユニークな絞り操作

絞りはレンズ側面に装備されるダイヤルで調整します。ペッツバールやダゲレオタイプは絞り板を差し込むタイプでしたが、無くしやすいのが難点でした。ダイヤルを回して絞りを変えるという操作が、独特で面白いです。

レンズからはみ出している黒い円盤を回すと、絞りが変化します。操作感はなめらかで、はっきりしたクリックストップがあります。

選択できる絞り値はF2.5、F4、F5.6、F8、F11。絞り羽根での調整ではなく、大きさの異なる円形の穴が切り替わります。そのため、点光源の丸い美しいボケが楽しめそうです。

フォーカスも当然マニュアルです。フォーカスリングのトルク感はほどよく、現代のAFレンズにはない操作感がこのレンズの魅力をより引き立ててくれます。

作品

絞り開放では周辺が程よく光量落ちします。中央にメインの被写体をもってくることで、そこに視線が引き込まれるトンネル効果が得られます。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F2.5 / ISO 160(モデル:yumi)

慣れるとフォーカスリングを回しながらのピント合わせも快適。楽しみながら撮影できます。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F2.5 / ISO 100(モデル:yumi)

現代レンズのようなとろけるようなボケではなく、むしろ主張するようなクセの強さが感じられます。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F2.5 / ISO 100(モデル:yumi)

半逆光のポートレートでも、意外にコントラストが残っています。光源の位置によって描写が変わってくるのもこのレンズの楽しみのひとつです。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/400秒 / F2.5 / ISO 100(モデル:ジェナ)

周辺部の流れも少なく、画面全域でキレの良い描写です。発色にもロモレンズらしさを感じます。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F2.5 / ISO 2000(モデル:矢沢なり)

撮影最短距離40cm付近でのカット。背景となるカフェの店内のボケも独特。不思議な立体感が感じられます。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F2.5 / ISO 3200

F5.6くらいまで絞ると周辺光量落ちも見られなくなり、画面全体で均一な再現が得られます。細い枝1本1本までとてもシャープに写ってくれました。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/60秒 / F5.6 / ISO 800

強い逆光の場合、放射状のゴーストが出ることがあります。あえて画面内に強い光を入れることで、ふんわりとしたやわらかな雰囲気に仕上げました。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/200秒 / F2.5 / ISO 100

デジタルカメラなのにフィルムカメラLC-Aのような味わい深い写真が楽しめるのはとても魅力ですね。

α7 II / Lomogon 2.5/32 / 1/1,000秒 / F2.5 / ISO 100

まとめ

「なぜ撮るの?」と聞かれて、「このカメラの絵作りが大好きなので!」と答えたくなるのがフィルムカメラのLC-Aです。そのLC-Aを思わせる描写をデジタルカメラで楽しめるところが、このレンズの最大の魅力だと感じました。

Lomographyならではの世界感のある描写を、気軽に持ち出せるサイズ感のレンズで楽しめるLomogon。

マニュアルフォーカスレンズを使ったことのない人にも、ピント合わせのしやすさや独特の描写など魅力いっぱいのレンズなのでおすすめしたいです。

片岡三果

北海道三笠市出身。絵画を描く気持ちで写真を表現する写真画家。漫画家の両親、大叔父が油絵画家という家庭環境に育ち、幼い頃から美術、デザインを学ぶ。専門学校東京デザイナー学院にて「カメラと仲良くなる」をテーマに写真実習の講師をつとめる。アルバム大使。 カメライベント「Petit Trianon」を主催。2018年8月17日~23日に富士フォトギャラリー銀座で個展を開催。