トピック
ニコン「Z 8」で旅客機を撮る!伊丹空港の撮影スポットを巡る2日間
中野耕志さんが教える撮影セミナーが開催
- 提供:
- 株式会社ニコンイメージングジャパン
2023年8月17日 07:00
弊社インプレスが運営する写真SNS「GANREF」における「注目製品レビュー ニコンZ 8」のイベントとして、旅客機撮影のセミナーが7月29日と30日に開催された。本セミナーにはGANREFメンバー8人のレビューワーのうち、7人が参加した(1人は体調不良で不参加)。セミナーで撮影した写真を通して「Z 8」の魅力に迫る企画だ。
今回のセミナーは写真家の中野耕志さんを講師に迎え、大阪国際空港(伊丹空港)付近で撮影を行うという趣旨だ。伊丹空港は旅客機を間近に撮影できるスポットとして知られる。1泊2日のセミナーでは、中野さんから直接撮影のアドバイスを受けることができたほか、作品の講評会も行われた。
レビュアーに選ばれたGANREFメンバーには、「Z 8」や希望するレンズが1カ月間貸し出された。その間に撮影した作品や使用感などがすでに数多くGANREFに投稿されている。
「Z 8」はフラッグシップのニコンZ 9に近い性能を持ちながら、小型化したモデル。9種類の動体検出AFや最高120コマ/秒の連写などが可能となっている。5月に発売された新モデルで、実勢価格は税込60万円前後だ。
なおセミナーで使用する推奨レンズとして中野さんが挙げたのは、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の7本となっていた。
座学で旅客機撮影の基本を学ぶ
初日は新大阪駅近くのブリックビルに集合。午後からの撮影を前に1時間30分ほどの座学があった。ここで旅客機写真の基本的な撮り方や「Z 8」の設定方法が伝授された。
中野さんは「Z 9」の登場時に2台購入してそれまでの一眼レフカメラから移行。しかしボディの重さもあるため、「Z 8」が出てからは「Z 9」と「Z 8」の2台体制にしているそうだ。
AFに関しては「Z 8」は旅客機の検出モードがあるため、旅客機やヘリコプターを自動で追尾してくれる。「Z 9」も旅客機検出はできるが、乗り物モードとして1つになっているため、中野さんによると現状では「Z 8」のほうが旅客機の検出性能は高いそうだ。特に旅客機が画面内で小さい場合の食い付きが良いという。
ブラックアウトフリーのEVFも搭載しており、連写しながら安定してフレーミングできる点も動き物の撮影に向くとのこと。また、ZマウントレンズはFマウントレンズよりも周辺画質も向上しており、レンズ性能も含めて「Z 8」はお勧めという。
旅客機写真の基本は記録写真で、真横に近い機体を晴天の順光で撮ることが多く、これをコレクションするのがひとつの楽しみとしてある。加えて、情景と絡めたショットを目指すのもある。こちらは天気や時間帯がシビアなのでピンポイントで狙わないと難しいところもあるとのこと。
背景と機体の重なりも考える必要があり、あらかじめ旅客機がどう動くかを認識した上でシャッターを切るようにする。旅客機を追いながらズーミングすると操作が間に合わないので、先に画角を決めておくことが大切だそうだ。
光も重要で、映えるためには順光が理想。そのため太陽の方向や角度を考慮して撮影する場所や時間を選択する必要もあるという。曇天では機体がクリアにならないので、晴天時を狙うのがポイントだ。
シャッター速度はブレを防ぐために1/500秒や1/1,000秒と速めにする。ただし、プロペラ機の場合はプロペラが回っているように写すためにシャター速度を落とすと良い。流し撮りの場合は1/125秒以下を試し、露出オーバーになる場合はNDフィルターを使うようにする。
一方日が落ちてからの撮影では、離陸機が滑走路に入る時に機体に夕陽が反射するところも狙い目とのこと。ホワイトバランスは日中は晴天、夕焼けが抜けたら電球にしているそうだ。
カメラの設定としては、空をバックにした場合は周辺が落ちやすいのでビネットコントロールを強めなどにすると良いそうだ。
手ブレ補正はスポーツモードに設定。露光前にセンタリングしないので、がたつきが無く撮りやすい。
感度設定を1段ステップ、露出補正ステップを1/2段に設定することで、ダイヤルの移動量を少なくするという技も披露された。また、使わないフォーカスエリアのタイプは出ないようにしておくという。
猪名川土手で離陸機を狙う
座学が終わると一行は貸切バスに乗り込み、最初の目的地である猪名川土手へ。滑走路の西側から空港を一望できるポイントだ。沖縄や新千歳行きなど燃料を多く積んだ浮き上がるのが遅い機体も撮りやすい場所になっている。
撮影現場でもレンズの貸し出しが行われ、参加者は希望するレンズを試すことができた。
撮影をしながら講師の中野さんに疑問点などを聞き、その場でアドバイスをもらえるのはこのセミナーの大きな魅力。さっそくカメラの設定方法などを尋ねる姿が見られた。このシチュエーションの場合、露出の設定はISO 100、F8、1/1,000秒を基準にすると良いとのことだった。
天気も良く、手持ちでも狙いやすいシーンが多かったようだ。
伊丹スカイパークでは流し撮りにチャレンジする人も
続いてはバスで伊丹スカイパークに移動。空港に併設された公園で滑走路と平行な長い敷地となっている。こちらも離陸機の滑走や浮き上がるところを狙える。
機体が目の前を横に動くので流し撮りもしやすく、トライする参加者も多かった。また旅客機認識のAFを試した参加者からは、しっかり追従してくれるという感想があった。
ここでは撮影中の中野さんの画面を見られるよう、モニターが用意されていた。被写体をどのように追いかけているのかを見られる貴重な経験だろう。
夜景に機体が映える千里川土手
バスに戻った一行へはお弁当が配られ夕食に。その後、千里川土手に移動して夕方からの撮影が始まった。
千里川土手は滑走路端に近く、機体を大迫力で撮影できる有名な場所だ。土手は滑走路に近い方と千里川を挟んで滑走路から遠い側の2つがあるが、ここでは遠い側での撮影となった。
この日の日没は19時過ぎで、その後30分くらいは残照の時間となり夕焼けをバックに撮ることができる。到着してしばらくすると夕焼けから日没となり、天気が良かったことから夕陽に映える機体も美しく、参加者は夢中でシャッターを切っていた。
いずれの場所でも旅客機が来るタイミングを中野さんが教えてくれるので、慌てること無く準備ができるのもプロが同行する撮影ならではで良かったと思う。
19時30分くらいからは日が落ちて夜間の撮影となった。ここで中野さんが勧めていたのが明るい単焦点レンズ。超望遠レンズや広角レンズも良いが、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」や「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」などがシャッター速度が稼げて使いやすいとのこと。
夜間撮影では機体のお腹に滑走路のランプが反射したところを狙うほか、アンチコリジョンライトの点灯した瞬間を写すといったアドバイスがあった。構図を作ってスタンバイするため、三脚も有用だとのこと。
初日は3カ所を回り撮影は終了。ホテルにチェックインして明日の撮影に備えた。
早朝から千里川土手で着陸機を撮影
2日目は朝方の到着ラッシュを狙うため、6時半にホテルを出発。千里川土手に向かった。昨晩と違い、滑走路に近い側での撮影となった。
この日も快晴でクリアな視界になっており、超望遠レンズも使いやすい状況だった。今回、発売前のレンズである「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の試作品が1本貸し出し用に持ち込まれており、試す参加者も多かった。
600mmまでカバーしながら実勢価格が25万円ほどということで、ニコンの想定以上の予約があったという話題のレンズだ。試作品ながら画像の持ち帰りとレビューへの投稿が可能となっていた。試した参加者からは、「かなり遠い旅客機も引き寄せられる」「迫力が凄い」という声が聞かれた。
中野さんによると、画質が良いことに加えて1本でワイド端とテレ端のバリエーションがすぐに作れるのが良いところという。従来はカメラ2台に別々のレンズを付けていないと対応ができなかったそうだ。
最後は伊丹空港の展望デッキで
続いては、セミナー最後の撮影地である伊丹空港の展望デッキにバスで向かった。
展望デッキは滑走路に向かって左が南ターミナル、右が北ターミナルとなっている。南ターミナルからはANA機が、北ターミナルからはJAL機がよく見える。
展望デッキにはレンズを出す穴もあるが、基本的に金網で覆われている。中野さんによると金網が写らないように撮るためには、絞りを開けフードを外してレンズを金網に近づけて撮るとよいとのこと。
ここでは駐機中の旅客機が狙えるほか、着陸機と離陸機も望遠レンズで撮影可能。ここも流し撮りを試したり、夏雲と旅客機を絡めた構図を作るなど各自工夫している様子だった。
レベルアップに繋がる講評会
伊丹空港を後にし、一行は昼食のため東三国のHortensia Bistro(オルタンシア ビストロ)へ。ここでフレンチに舌鼓を打ちつつ歓談に花が咲いた。
食事の後は、初日に集合したブリックビルに再び向かった。ここでは各自がセレクトした2枚をプリントして中野さんによる講評会が行われた。
参加者はかなりの枚数を撮影しており、セレクトも一苦労。しかし、いずれも納得できる写真が撮れたようだ。
プリントはエプソンのA3ノビ対応プリンター「SC-PX1V」で作成。用紙はA3のクリスピアを使用した。
講評会では各自が前に出て自分の作品を紹介。中野さんがさらなるレベルアップのためのアドバイスを述べた。いずれの参加者もハイレベルな作品になっており、旅客機写真の魅力が伝わってくる仕上がりだった。ぜひともGANREFのページでその力作をご覧いただきたい。
参加メンバーの作品とコメント
NIKKOR Z 85mm f/1.2 Sを借りたのは、1枚目の写真を撮りたかったからです。大口径の中望遠レンズで旅客機のお腹を撮るのが一番の目標だったので、それが達成できて嬉しいです。今までは置きピンでうまく撮れなかったのですが、旅客機の認識機能を使って今回撮れました。カメラの性能は格段に上がっていますね。
先生がロケハンされて「こう撮ると良い」というのを教えてもらえたので、歩留まりが上がりました。自分で試行錯誤する前にセミナーで勘所を教えてもらえたのが良かったです。
旅客機撮影に適した「Z 8」「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」
各参加者は「Z 8」の目玉である旅客機の認識機能を存分に使って作品を作り上げており、その威力を垣間見ることができた。労せずに旅客機撮影ができるようになり、旅客機撮影が今ひとつ上達しないという人や、旅客機写真の初心者にもうってつけのモデルといえそうだ。中野さんは、旅客機認識を使うようになってからは従来の3D-トラッキング機能は使わなくなったと話している。
「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」も大いに注目したい製品だ。「Z 8」と組み合わせれば、旅客機撮影の強い味方になるのは間違いだろう。
レンズといえば、旅客機撮影における「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」や「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」といった大口径レンズの適正が意外だった。あまり旅客機撮影で使うイメージが無かったレンズなので勉強になった。
このところなかなか開催できなかったリアルの撮影ツアーとあって、講師と気軽に話をしたり、参加者同士で情報交換をしたりとかなり密度の濃い2日間になった。素晴らしい作品と多くの学びを持ち帰ったことと思う。筆者も楽しみながら、メンバーのレビューを拝見したいと思う。