特集

2015年「私はこれを買いました!」(第2回)

大浦タケシ・大高隆・河田一規・北村智史

2015年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系記事にご寄稿いただいた皆様および本誌編集者に、今年新品で購入したデジタルカメラ、レンズのうち、特に思い入れのある製品について語っていただきました。(50音順、敬称略、全4回)

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やっと手に入れたGR ブラッシュアップされた機能も満足

リコーGR II/大浦タケシ

ようやく手に入れたデジタルの“GR”。正直に書かせてもらえれば、フィルム時代を知る者として、1/1.8型クラスのセンサーを積むいわゆるGR DIGITALシリーズには触手が伸びるものではなかった。

写りがよいといわれていたが、それはレンズが単焦点であることに起因する部分だけの話しで、階調再現性や高感度特性は所詮コンパクトデジタル。ボケらしいボケも期待できるはずもなく、何であんなに注目され人気があるのかさっぱりわからなかったのである。2009年8月に掲載した「GR DIGITAL III」のレビュー文末で語っているとおり、大型センサーを搭載するGR DIGITALの登場を強く願って止まなかったことはいうまでもない。

そして2013年、遂に登場したAPS-Cセンサー搭載モデル「GR」。ところが今度は、筆者が業務で使用するカメラが相次いでモデルチェンジを行ったのと、写真展開催のために出費が嵩み購入するタイミングを逃す。ちなみにGRのようなカメラは純粋に仕事で使うこと少ないので、どうしても購入のプライオリティは低くなってしまうのである。

GR IIについては、他に可及的速やかに手に入れなければならないカメラも無かったこともあり、この夏リリース開始とともに即購入。ようやく自分のものになったことに加え、WBのアルゴリズムやWi-Fiの搭載など先代からブラッシュアップされておりうれしく思っている。何よりAPS-Cセンサーによる質の高い描写は、撮る喜びを満たすものである。

2015年はキヤノンEOS M3も手に入れたが、GR IIはレンズ収納時によりコンパクトになることもあり持ち出す機会が多く、たいへん気に入っている。欲をいえば、EVFかフレームのほどほどに正確なOVFが内蔵されると、カメラとしての魅力はさらに増したように思えてならない。

おおうらたけし:自分にとって今年一番のトピックは2年ぶりに写真展を開催したこと。毎回そうだけど、開催するまでは見に来た人たちに受け入れてもらえるかスゴく不安で、終わったら終わったでこれほど寂しく感じるものはない。そして次の写真展のことを考え始めるのでR。

RICOH GR II(実写編)

日常の記録にうってつけの標準レンズ

HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR/大高隆

今年はライティング機材やカメラバッグの更新に関わる出費が多く、カメラ・レンズの類はあまり買わなかった。そんな数少ない中で一番のお気に入りといえば、HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WRだろう。

以前のレビューにも書いた通り、このレンズは「標準レンズ」としてとてもよくできている。望遠側の開放絞りがF4と少し暗いのは単焦点のDA limitedに及ばない点だが、総合的な描写性能はDA Limitedの名を冠するにふさわしい高品位なものだ。

高性能な「標準ズームレンズ」が欲しいという方には、これではなくHD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6 ED DC WRの方を勧める。16-85mmはAFも速く、幅広い撮影状況に対応可能な、とてもズームレンズらしいレンズだ。

一方、このHD DA 20-40mm Limited は単焦点レンズでスナップを撮るのが好きな人にこそ勧めたい。ボディ1台レンズ1本の軽装でも広角から準望遠までのパースペクティブが選べ、レンズ交換の間にシャッターチャンスを逃すこともない。ズーム域が狭いので足で動くのを基本とし、強いパースが欲しいならズームリングを左に、抑えたければ右に回す。ファインダーを覗きながらの微調整などはまずしない。

HD DA 16-85mmは私自身いずれは欲しいと思っており、繰り返し拝借してテストしているのだが、高倍率ズームの宿命として、16-85mmはディストーションが少し目立ち、端正な描写という点で20-40mmには及ばない。逆光撮影時のヌケの良さも20-40mmに一歩譲る。

扱いやすさという見方でも、サイズが大きい16-85mmは「撮影するぞ」という気合の高まりがないと持ち出すのが少々億劫だが、コンパクトな20-40mmは日々持ち歩いても邪魔にならない。フードの上からキャップをかけるスタイルなのでキャップを外すだけで撮影でき、速写性も優れている。

難点としてあげるとすればそのキャップが外れやすく、金属製なので落ちると音がうるさく、傷になりやすいのが玉に瑕だ。簡便なゴムキャップがオプションで用意されれば、もっと実用的になると思う。とはいえ注文をつけたい所はその程度で、私の2015年ベストバイは間違いなくこのレンズだ。

おおたかたかし:パーソナルワークとして福島県富岡町の避難指示区域辺りを撮り歩く仕事に手をつけたところです。2011年秋に取材で訪れ、その後、気にかけながらも再訪を果たせずにいたのですが、警戒レベルの見直しにより特別な許可なしに立入りできるようになったのを機に、政治的なことはおいて、ともかく「当事者」であるために、できるだけ通ってみようと考えています。来るべき2016年が皆様にとって佳い年でありますように。そしてお手元の写真機が皆様の暮らしの佳き同伴者でありますように。よい写真を残しましょう。

「K-3 II」から読み解くPENTAXの魅力

マクロレンズいらずの近接性能

オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO/河田一規

最初は小型軽量化のメリットが大きい海外取材系の仕事で使い始めたマイクロフォーサーズ機だが、そのうち国内取材にも使い始め、さらにブツ撮りもというように守備範囲が広がって、今では仕事撮影のかなりのパーセンテージをマイクロフォーサーズ機で行うようになってきた。

もちろん、個人的な趣味の撮影では35mmフルサイズ機やAPS-C機などいろいろなフォーマットのカメラを使っているが、こと仕事用カメラということに関して言えば、自分の場合9割方はマイクロフォーサーズ機だ。

そうした仕事機材の変化に伴ってもう1つ変わってきたのがレンズのセレクト。

以前だと、ちょっとした「寄り」のカットを撮影するためにマクロレンズは必須だったのだが、マイクロフォーサーズ用レンズはフルサイズ用などに比べるとどれも画角の割に寄れるものが多い(フルサイズに比べれば実焦点距離が短いので当たり前だが)ため、普通の取材ではマクロレンズを別途用意する必要がなくなってしまったのだ。

もちろん、近接主体の仕事ではマクロレンズは今でも必須だけど、そうでない普通の取材であればマクロレンズの出番はかなり少ない。

というわけで、今年はオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROを購入した。今まで使っていた某社マイクロフォーサーズ用F2.8標準ズームも小型軽量で描写的にもすごく満足していたのだけど、オリンパスの方がより寄れるのだ。で、買い換えた。

ズームレンズのマクロ機能なんかオマケみたいなものだろうと思われている方も多いだろうが、最近のズームの近接画質向上はめざましく、もはや「オマケ」の域ではなく、十分に実用になる。技術の進歩は凄いなぁと改めて思う今日この頃なのだ。

かわだかずのり:数年前から自分の中でオーディオ熱が盛り返していて、昨年から今年にかけてレコードプレーヤーを3台も購入してしまった。手元に残したのは1台だけだが、ひと仕事を終えた後に聴くバイナルは最高です。

写真家2人による実写レビュー!まずはスナップ編

外付けグリップでPROレンズとの相性よし

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/北村智史

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark IIの前に使っていた同じオリンパスのPEN E-P5は、写りはもちろん、デザインや使い勝手も気に入っていたのだけれど、首を長くして待っていたM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROと組み合わせたときにバランスが悪くなりそうなのと、キットに同梱されていた電子ビューファインダーVF-4で、EVFの便利さが身にしみていたこともあって、次はEVF内蔵のOM-Dを、と考えていた。

とは言え、E-M5 Mark IIにしても、本体のグリップは薄くて重さのあるレンズと組み合わせるには少々頼りない。なので、別売の金属製外付けグリップECG-2を取り付けている。エントリークラスのAPS-Cサイズ一眼レフと大差ない重さというのはうれしくないが、重さのあるM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROを装着してもしっかりホールドできるし、バランスもまあまあ悪くない。マイクロフォーサーズらしさがどこかに行ってしまったのには泣けるけれど。

内蔵EVFも、先代のE-M5に比べて大幅に強化されている。解像度は144万ドットから236万ドットに、倍率は1.15倍から1.3倍(ワタシが愛用している「スタイル1」表示の場合。全画面表示の「スタイル3」なら1.48倍になる)にスペックアップ。しかも、VF-4にはないキャッツアイコントロールも備えている。まわりの明るさに応じて輝度を自動調整してくれるおかげで、長時間の撮影でも目が疲れにくくなったと感じている。これも、買ってよかったなぁ、と思えた点だ。

それから、バリアングル式モニター化されたことも大きい。ホールド性なら同じOM-Dでもグリップの大きなE-M1のほうが上だし、位相差検出AFを搭載しているところも魅力的だが、バリアングル式のE-M5 Mark IIを見てからチルト式のE-M1を選ぶというのは、ワタシ的にはありえない。このところ縦位置で撮ることのほうが多いので、縦位置でのロー/ハイアングル撮影が得意なバリアングル式は見逃せないスペックなのである。

そんなわけで、購入から約10か月経った今も、デスクの上に置いていて、用もないのにいじって遊んでいる。今のところ、いじり飽きそうな気配はない。

きたむらさとし:相変わらずの貧乏暮らしだが、こっそりとM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8をブラックにリプレースして、今はマンフロットの新しいボール雲台を買おうかどうか悩み中。来年は一眼レフのシステムを増強するつもりで、バリアングル式のアレのモデルチェンジはいつかなぁ、などと妄想しつつ迎える年の瀬であります。

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(第3回に続きます)

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