新製品レビュー
RICOH GR II(実写編)
特徴的な絵作りの新機能をチェック
Reported by澤村徹(2015/7/15 07:00)
7月17日、リコーGR IIが発売になる。Wi-Fi搭載と新エフェクト追加が大きな特徴で、従来機から1.8mmだけ背が高くなった。イメージセンサー、画像エンジン、全体のコンセプトに大きな変更はなく、一連のGRシリーズ同様、「変わらぬ進化」を遂げたモデルだ。この堅実ぶりはもはやGRのお家芸と言えるだろう。
GR IIのCMOSセンサーは有効画素数約1,620万画素で、APS-Cサイズとなる。画像処理エンジンはGR ENGINE Vだ。このデジタルカメラの中核をなす部分は、実のところ前機種のGRから変わりない。基本的な画質はほぼ同等である。試しにGR IIとGRで高感度撮影を比べてみたところ、ともにISO3200までは常用可能な画質で、ISO6400からノイズがのってディテールが甘くなっていく。ともに解像力とノイズののり具合に大きなちがいはなかった。
絵作りに関する新機能について見ていこう。まず、ホワイトバランスにCTE(Color Temperature Enhancement)が加わった。元々はペンタックスが開発したホワイトバランスのモードで、画面内に多い色を強調する働きを持つ。AWB(Auto White Balance)と比べてみると、AWBがニュートラルなホワイトバランスを目指しているのに対し、CTEは画面内の目立つ色を重視する。例えば、画面内に赤い被写体を写し込むと、ホワイトバランスが暖色寄りになるわけだ。より「らしく見える」というのがCTEの利点と言えるだろう。
ホワイトバランス:CTE
朱色のブリキのおもちゃに寄る。AWBではニュートラルな色合いだが、CTEでは暖色が強くなった。
ベンチの青が目立つカットだ。CTEだとAWBよりも青みの強いホワイトバランスになった。
GR IIは6つのエフェクトモードが加わった。「HDR調」「明瞭コントロール」「光沢コントロール」「雅(MIYABI)」「鮮やか」「人物」が新エフェクトモードで、そのうち「HDR調」「明瞭コントロール」「光沢コントロール」の3つは特に効き具合の強いエフェクトだ。
「HDR調」は適用するだけで絵画的なクセの強い絵になる。HDR調と名付けられている通り、ストレートなHDR処理というよりも、HDR画像でよく見受けられるイラストテイストを強調したような絵作りだ。
「明瞭コントロール」「光沢コントロール」は、それぞれ効き具合を9段階で調整できる。設定値5がエフェクト効果の±0の状態で、プラス方向、マイナス方向、それぞれ4段ずつ調整可能だ。
「明瞭度コントロール」はいわゆるローカルコントラストで、輪郭部を中心にコントラストを高めてくれる。効果を強めると、ディテールが際立ってくるのがわかるだろう。市販RAW現像ソフトなどでは定番化しつつある画像編集機能だが、それを撮影時に適用したり、カメラ内RAW現像で使えるのは便利だ。
一方、「光沢コントロール」は独自性が感じられるエフェクトである。その名の通り、光沢感を強調する機能で、主にハイライト部を強調する。今回、シルバージュエリーを被写体にして試したところ、被写体の光沢が際立って見える。ただし、光沢以外のハイライトも同様に強調されるので、多少使いこなしを要するだろう。
GR IIの画像を改めて見ると、余裕のある仕上がりが印象的だ。RAWとJPEGの絵作りを比較すると、RAWから若干コントラストアップしたものがJPEGといった印象だ。ともに階調がしっかりとキープされており、素の状態からユーザーの好みで絵を作り込むだけの余裕が感じられる。GR IIはエフェクト機能をはじめ様々な画像調整が可能だが、そうした加工を施しても早々に画質的に破綻するような心配はない。GR IIはカスタマイズによって真価を発揮するカメラであり、それは操作系のみならず、画質についても言えることなのだ。
作品集
クジラのオブジェの微妙な陰影の付き方を、JPEG撮って出しでていねいに再現できている。広角モデルのわりに線が細く、繊細さを感じさせる描き方だ。
開放から広範囲にわたってシャープな描き方だ。歪曲もほとんど感じられず、広角コンパクトとしてこれまで培ってきた底力を見せつける。
開放でプレートにピントを合わせる。滲みと一切無縁のシャープな描写はさすがだ。加えてボケ量もしっかり確保されており、APS-Cイメージセンサーの大きさが功を奏している。
陳列ケースの中央あたりにざっくりとピントを合わせた。抹茶飴の表面の筋が一本ずつていねいに描かれている。ハイキーで撮っているせいもあるが、コントラストの付き方がいくぶんマイルドだ。
上カーソルキーでマクロモードに切り替え、紫陽花に寄る。合焦精度ならびにスピードにもすぐれ、躊躇なく寄って撮れるところが良い。
電球の表面にピントを合わせた。いかにもAFが悩みそうなシーンだが、シャッター半押しでピタリと合焦。気持ちよく撮影できた。後ボケがなだらかでいい雰囲気だ。
色褪せた木製の戸を狙う。発色が華美にならずに、色褪せた状態をストレートに再現してくれた。高彩度でごまかさないところに、絵作りと画質への自信が感じられる。
暗所をISOオートで撮影した。ISO500での撮影となったが、ノイズはほとんど見受けられない。
撮影協力:JAY TSUJIMURA