特別企画

カシオEX-100の「宙玉(そらたま)」とは?

元ネタ“宙玉”の考案者、上原ゼンジが試す!

EX-100の「宙玉」で撮影した店先のチューリップ。はっきりとした色のコントラストは宙玉で撮影すると引き立つ。

 昨年末に発売となったカシオEXILIMシリーズのフラッグシップモデルである「EX-10」には、「宙玉(そらたま)」という機能が搭載された。この「宙玉」は「宙玉レンズ」を使わずに、似たよう効果が得られるデジタルエフェクトだ。そしてこのたび発売となった「EX-100」にもこの機能が搭載されている。今回はその「宙玉」と「リアル宙玉」の写りや使い勝手などをチェックしてみた。

28-300mm相当F2.8の10.7倍ズームレンズを搭載する「EXILIM EX-100」。発売は3月20日。実売価格は8万9,800円前後。
EX-100に搭載されている「宙玉」。アートショットの一つとして利用できる。

まずは“リアル宙玉”の作例

「宙玉」というのは私が5年ほど前に思いついた撮影技法のこと。透明球を使って撮影するのだが、透明球を穴の空いた透明板に張り付けることにより、透明球が宙に浮かんでいるようなイメージになる。

お菓子の空き箱を使って作った宙玉レンズ。ピントが合うようにするためにクローズアップレンズを使っている。

 また玉に映る景色を接写することにより、素通しの部分の背景は強制的にボケた描写になる。デジカメ Watchでお菓子の筒を使った工作を紹介したり、スマホアプリなどにも搭載されたおかげで、けっこう認知度は上がってきているようだ。

絞りF8で撮影しているが、輪郭はかなりボケてふんわりとした描写になっている。このボケ感は絞り値、焦点距離、センサーサイズなどにより変わる。
打ち上げ花火を宙玉に閉じ込めてみた。バックは強制的にボケるが、花火やイルミネーションなど、光るものを撮影するときれい。
マイクロフォーサーズで絞り気味に撮影したため、少し輪郭がはっきりしている。さらに絞ればもっとはっきりするが、バックが見えすぎても面白くない。

リアル宙玉と宙玉はどう違う?

 リアル宙玉の特徴としては、透明球を使っているので、魚眼レンズのように画角が広くなるということ。魚眼レンズは高価だが、アクリル球などを使った工作で超広角の撮影をできるのがミソ。また、絞り値によって球の輪郭や背景のボケ具合が変化するが、通常のレンズでは味わえないようなボケ具合がなかなか面白い。

 一方、宙玉の場合は撮影した画像を加工しているので、画角自体は広くならない。リアル宙玉が超広角とすれば、宙玉は標準レンズぐらいのイメージだ。リアル宙玉では絞りを絞ると玉のエッジがくっきりし、開けるとぼやけるので、好みの描写にするためには絞りのコントロールを行う。

 宙玉での玉のエッジは常にくっきりとしているので、くっきりさせたい場合に絞る必要はないが、ボケた描写にすることはできない。この辺りが、両者の描写の違いとなる。

EX-100の宙玉作例

※リンク先の画像はすべて長辺800ピクセルにリサイズしています。

宙玉で撮影をした場合、玉の内側と外側で天地が逆になるのが特徴。バックとのバランスを考えながら撮影するといい。
小さなボタンを撮影。EX-100ではクローズアップ撮影ができるので、小さな被写体を宙玉に閉じ込めることも可能。
ショーウインドウの中のディスプレイを構成的に撮影。色や形をこんな風に切り取ってみても面白い。
散歩中のチワワ。わざと下から狙い空をバックにした。バックをゴチャゴチャさせずに単純化すると効果的。
単純に空に浮かぶ雲を撮影。これだけでも惑星のような感じになって面白い。
ビルの谷間から空に向かって。普通に撮ると空が飛んでしまうので、露出補正-1EVで撮影。
水面に映る街の灯り。まだ完全に日が落ちないトワイライトの撮影が宙玉には向いている。

撮影しやすいのは“宙玉”

 宙玉はアートショットの中の1つだが、アートショットとしてはこの他にトイカメラ、ミニチュア、フィッシュアイなど10種類のエフェクトが搭載されている。

 モードダイヤルでアートショットを選び、コントロールダイヤルで「宙玉」をセレクトすれば、そのままリアルタイムで効果を確認しながら撮影をすることが可能。スマホアプリの場合リアルタイムでの確認ができず、撮影後に宙玉風に加工されるというものも多いが、その点では扱いやすい。

 撮影は軽快にできるが、連写すると加工に多少時間を要する。ただスマホアプリの場合はサイズが小さくなってしまうものなどもあるが、EX-100では最大解像度での撮影が可能なのが嬉しい。

 またリアル宙玉との決定的な違いとしては、画像が逆さまにならないということ。リアル宙玉では透明球を使っているので、透明球の中に映る世界は反転して見える。これはレンズを目から離して見た場合に経験できる現象だ。

 しかしその状態で撮影を行なうのでカメラを左右に動かした場合に逆の動きをするので、なかなかコントロールをするのが難しいのだ。一方、宙玉の場合は普通に見えるのでそういった苦労をすることはない。これはデジタルエフェクトの有利な点だ。

まとめ

 宙玉レンズを使用することなく、宙玉風に撮影できるデジタルカメラは現状このシリーズしかありません。イメージは逆さまにならないし、すごく手軽で楽しいと思います。人を撮っている時なんかも、この宙玉に切り替えて撮ってあげると喜んで貰えるので、「宙玉に興味はあるけど工作はメンドー」という人はぜひお試しを。

 ただ画角の問題や描写の問題で言えばリアル宙玉にもアドバンテージはあるので、リアル宙玉も見捨てないでくださいね(笑)。

―告知―
このたび「宙玉」も収録された写真集「Circular Cosmos―まあるい宇宙」が刊行されました!

(協力:カシオ計算機株式会社)

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos―まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「写真の色補正・加工に強くなる レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社)などがある。
上原ゼンジ写真実験室