特別企画

メモリーカードについている「R」ロゴの意味とは?

新ソフト「RefreshPro」の役割と機能を解説

プロフェッショナル向けの高速メモリーカードを製造・販売することで知られるProGrade Digital(プログレードデジタル)は、先ごろよりアナウンスしていた通り「RefreshPro(リフレッシュプロ)」の販売を開始した。

ちなみに最近発売されたProGrade Digitalのメモリーカードには、独自の「R」のロゴがついてるのをご存知だろうか。この「R」ロゴこそが、RefreshProに大きく関わっているのだ。

8月21日に国内で発売された「SDXC UHS-II V90 300R」(左)と「SDXC UHS-II V60 250R」(右)。どちらも「R」ロゴがついている。

というわけでこの記事では、ProGrade DigitalがなぜRefreshProをリリースしたのか、そしてRefreshProの役割と機能について解説したい。

「RefreshPro」とは一体?

RefreshProが備える最大の機能は、メモリーカードの「リフレッシュ」(Sanitize サニタイズ=消毒とも)が瞬時におこなえること。

フラッシュメモリは度重なるデータの書き換えにより、データの配置が細分化(“汚れ”とも)され、パフォーマンスが低下してしまう。これを購入時と同じ「真っ新」な状態に戻し、本来のパフォーマンスを取り戻せるのがリフレッシュ機能だ。

こうしたソフトウェアを用意した理由をProGrade Digitalの日本代表である大木和彦氏にうかがった。

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大木和彦氏(ProGrade Digital日本代表)「ProGrade Digitalの事業目的は、撮影から編集までのプロセスにあって、メモリーカードに関わるワークフローを最大限に効率化する製品・サービスを開発・販売することです。カメラとパソコンを繋ぐ架け橋であるメモリーカードとカードリーダーがボトルネックになってはならない、という考え方が根底にあります」

「カメラの性能進化は著しく、それに伴いファイルサイズも巨大化しており、メモリーカードには更なる高速化と高容量化が求められています。パソコンはPCIe SSDが珍しくなくなり、1GB/秒超で巨大ファイルを超高速転送できる態勢が整っています。その両者の性能に見合う高速メモリーカードと高速カードリーダーが必要とされますが、今後発売されるCFexpressを含めて、ワークフローの最大限の効率化に貢献できる製品の発売および開発は順調に進んでいます」

「ここまではハードウェアの話です。ワークフローの最大限の効率化は、高速なハードウェアだけを揃えれば良いというものではありません。第一にはホストとの親和性・互換性の問題があります。創業以来、この点には特に注力し、日本のカメラメーカーとのパートナーシップは、既存の大手メモリーカードメーカーに負けないくらい強化されています。」

「第二の点は、メモリーカードの性能を十分に活かし続けるには、ソフトウェアによるメインテナンスが必要となるところにあります。それがRefresh Proです。メモリーカード内部の“汚れ”を解消してパフォーマンスを維持し、メモリーカードの健康状態を把握してトラブルを未然に防ぐことができます」

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つまりメモリーカードのメンテナンスをおこなうことで、円滑なワークフローを維持することが目的のようだ。では、メモリーカード内部の“汚れ”とは、どういうことだろうか。

使うほどにメモリーカードは「汚れる」

まずはフラッシュメモリの構造から紹介していこう。下に例示したのは、1つのコントローラに対して8つのダイが割り当てられたフラッシュメモリだ。

次の図はダイを拡大したもの。8つのブロックに分かれ、4つのブロックから成るプレーン2つで構成されている。各ブロックは20のページで成り立っている。この基本構造を念頭に話を進めていきたい。

フラッシュメモリへのデータ書き込みは、1つのダイに集中しておこなわれるわけではなく、書き込み速度を上げるために8つのダイそれぞれに並行しておこなわれる。言ってみれば、そもそもが断片的に書き込みがおこなわれているわけである。

こうして書かれたデータだが、フラッシュメモリの特性として、ページの上書きはできず、一度消去してから書き込む必要がある。

その消去にしても1ページ単位での消去はおこなえず、ブロック単位でおこなう必要があるため、保持するデータを別のブロックに移してから、当該のブロックを消去するガベージコレクション(ゴミ回収)と呼ばれる作業が必要になる。

パフォーマンスの低下の主因は、断片化により読み書きが遅れることではなく、書込み中にガベージコレクションが発生して負荷が増すことに起因する。フォトやムービーの撮影中、唐突にレスポンスが落ちた、あるいは引っかかるような状態になった経験は誰しも体験しているだろう。

ガベージコレクションの頻度やタイミングはコントローラ次第だが、過剰なガベージコレクションはフラッシュメモリ自体の寿命にも影響を与えるため、いかに最小限に効率的におこなえるかも、メモリーカードの性能と言える。

それならばフォーマットすればガベージコレクションの頻度は解消できるのか? ストレージに明るい方ならば、クイックフォーマット(論理フォーマット)は記録域の全域を消去するわけではないということはご存知のはず。論理フォーマットは、あくまでもインデックス情報(目次)を書き換えているだけに過ぎない。一般的に用いられているフォーマットは、この論理フォーマットなので、カードの“汚れ”は解消されない。

だが、RefreshProのリフレッシュ機能は、いわゆる物理フォーマットであり、記録域の全てに渡りデータを消去するため、出荷時と同じ状態に戻すことができる(無論、記録状態のみであり使用に伴う劣化は避けられないが)。

それならば、一般的なデジタルカメラやパソコンが物理フォーマットを推奨していないのか?

話は簡単で数十、数百ギガバイトの領域を持つメモリーカードに対して全域消去をおこなうとなると半日作業、容量次第では1日以上の時間を要してしまうからだ。この所要時間の長さに纏わる問題もRefreshProは解消しているのだ。

購入までの流れ

それでは、実際にRefreshProを使用してみよう。海外サイトということもあり、購入の方法から順を追って紹介していきたい。現状、Windows版のみ購入可能で、料金は29.99米ドルだ。

まずはProGrade DigitalのWebサイトに行き、右上の「Shop」をクリック。

製品群から「Refresh Pro Software - Windows」を選択し、「ADD TO CART」(カートに追加)をクリック。

次いで「CHECK OUT」を選ぶ。

次の画面で支払い方法(AmazonPay、PayPal、GooglePay、クレジットカードでの直接購入)が選べるので、いずれかを選択。ここではPayPalを使用している。

PayPalの認証画面が進んでいき、ProGrade Digitalのサイトにユーザー情報が自動入力される。

次に「Continue to payment」をクリックすると最終確認画面に移り、「Complete order」で購入が完了する。

クレジットカードでの直接購入の場合は、まずユーザー情報を入力し、「Continue to payment」でカード情報の入力画面に移動する。あとの手順は上記と同じだ。

しばらくすると注文受付のメールが届き、次いでシリアルナンバーとダウンロード用URLが記載されたメールが届く。RefreshProをダウンロード&インストールして起動すると、アクティベートを促すウィンドウが開かれる。

ウィンドウ中央のURLをクリックし、先ほどのメールに記載されていたシリアルナンバーを入力してアクティベーションコードを入手。あとはこのコードでアクティベートすれば準備は完了だ。

機能はシンプル。作業時間は少しでOK

準備までを長々と記してきたが、RefreshPro自体は非常にシンプルなインターフェースになっている。

最初にスタート画面で扱うメモリーカードを選択する。

次にヘルスチェックか、リフレッシュをおこなうかの選択。

まずはヘルスチェックの機能から見ていこう。

ヘルスチェックはPCのHDDなどでもおなじみのS.M.A.R.T.を利用した診断ユーティリティだ。

グリーン、イエロー、レッドの3段階でメモリーカードの健康状態を確認できる。イエローになったら定期的にチェックをおこなうように心がけ、レッドになった場合には即座に交換という使い方がお勧めとのこと。

次に本題であるリフレッシュ機能(サニタイズ)機能だが、基本的にソフトウェア任せなので細かな設定などは存在しない。

ボタンの下に「クイックサニタイズ」というチェックボックスがあるが、これは先に触れた論理フォーマットを指すものではない。通常のリフレッシュ機能では、リフレッシュ作業前と後にカードの状態を測定・分析する工程を挟むが、これをスキップし、より短時間で作業を終了したい場合に用いるオプションだ。

リフレッシュ作業が完了したら、後はメモリーカードをPCなどで再フォーマットすれば全行程が終了する。

実際にリフレッシュ機能を試したところ、クイックで10〜20秒ほど、通常のモードでも2、3分で終了した。確かに非常にお手軽に使用できる。

懸念が残るのは、リフレッシュによるメモリーカード寿命の減衰だ。この点を大木氏に問うたところ、

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大木和彦氏(ProGrade Digital日本代表)「データの書き換えをおこなうので影響はありますが、リフレッシュで行う書き換えの影響は、フラッシュメモリーの書き換え寿命を考えればわずかなものです。むしろ、ガベージコレクションが頻繁に生じる方が、書き換え回数はより多くなるでしょう」

「リフレッシュは、4K・6Kなど高精細ムービー撮影やRAW+JPEG高速連写などで、メモリー容量を一気に使い切ってしまうような使い方をされる場合に特に有効です。そのような使い方をされる場合には、メモリーカードの健康状態をチェックし、事前にリフレッシュすることで、効率的に安定した撮影環境を整えられます」

「最後に、ご利用のカードを他人に渡したり、あげたりする場合にはリフレッシュすることをお勧めします。クイックフォーマットではデータは残ったままですから、データリカバリーできてしまいます」

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とのことだった。

最後にRefreshProの使用環境について記しておこう。利用するためには、メモリーカードとカードリーダの双方が対応している必要がある。

メモリーカードは、上向きの矢印とRを組み合わせたロゴが入ったProGradeのメモリーカードが対応製品。カードリーダーは現在のところ、すべてのProGrade Digital USB3.1 Gen2対応ダブルスロットカードリーダーが対応している。

ProGrade Digitalのカードリーダーは安価で性能も良いので、対応メモリーカードを持っているならば、これを機に揃えるのも良いだろう。

ProGrade Digitalカードリーダーの底面にはマグネットが仕込まれている。製品同梱のプレートを活用することで、ノートPCに装着可能だ。

制作協力:ProGrade Digital

榊信康