特別企画

風景写真家が「REVORING VND CPL」を使うメリットとは

時間節約&思い通りのイメージを得る…専用フィルター「ブラックミスト」も新登場

可変式NDフィルターを使い始めてから3年ほど経つが、刻一刻と光や状況が変化する風景撮影において、圧倒的な機動性やコンパクトさから、私にとって手放せないアイテムとなっている。

さらに「REVORING Vari ND3-ND1000 CPL」(以下REVORING Vari ND CPL)を使うようになってから、今まで以上に撮影の軽快さや利便性が高まり、一瞬のチャンスをさらに捉えられるようになった。

可変式ステップアップリングでレンズ口径に合わせてフィルターを交換する必要がなくなり、CPLフィルターも内蔵されて同時に使用できるのは嬉しい。様々な機能がぎゅっと一つのアイテムにつまっていて、あまりに贅沢な高機能性に驚いている。

さらにこの製品と角型フィルターを併用すると、様々なバリエーションの撮影が楽しめる。風景撮影において朝夕などの輝度差が大きい場面では、G(グラデーション)NDフィルターが活躍する。空の白トビや大地の黒つぶれを防止し、現場でコントラストを抑えて撮影することにより、RAW現像で過度な調整をせずに済むため、画像の荒れを最低限に抑えることもできるのだ。

REVORING VND CPLフィルターとは

「REVORING」とは、H&Y社が開発した「可変式ステップアップリング」のことで、レンズのフィルターネジが絞り羽根のように開閉するもの。そのため、レンズ口径に合わせてフィルターを交換するといった手間が省けるため、なんといっても早い!簡単!なのである。

REVORINGの使用例。レンズ口径に縛られず、汎用に使える可変式ステップアップリングだ

ねじ込み式のフィルターはネジがうまく噛み合わずに時間がかかったり、取り外せなくて困ったりすることが多々あった。しかし、REVORINGは1/4程度回転するだけで装着が完了、取り外しもワンタッチである。

そのREVORINGに「可変式NDフィルター」と「CPLフィルター」が一体化したのが「REVORING Vari ND CPL」である。機動力の高い可変式NDフィルターが合体し、更なる撮影のスピードアップや効率化を実現することができた。

REVORING Vari ND CPL。REVORINGにNDフィルターとCPLフィルターを一体化した製品だ
REVORING Vari ND CPLをレンズに装着した状態

口径は37mm-49mm、46mm-62mm、58mm-77mm、67mm-82mmとバリエーションも豊富で、使用しているレンズの大きさに合わせて選べるのも嬉しい。

REVORING Vari ND CPLに搭載されている可変式NDフィルターとは、減光効果を可変させることができるフィルターである。こちらはND3~ND1000、すなわち1.5段分~10段分の広い範囲で減光することが可能だ。複数のNDフィルターをひとつの可変式NDフィルターでまかなうことができるため、交換する手間やカメラバッグ内のスペースを省くことができる。交換する時間を節約することは、絶好のチャンスを撮り逃さないことに直結する。風景撮影において、非常に重要なポイントなのだ。


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風景写真と可変NDフィルター

愛用していた可変式NDフィルターがREVORINGと一体化したおかげで、撮影が格段とスピーディーになった。雲や光などが急激に変化する風景写真において、素早い撮影を求められる場面は多い。可変式NDフィルターを用いれば、フィルターを交換する時間を省きつつ、シャッタースピードを自在に設定することができる。

例えば、山から流れ落ちる滝雲を撮影するとき、風などの状況によって10秒が良いのか、30秒が良いのか、撮影しながら確認することがある。雲は一瞬にして形を変えて消えていくため、素早く設定して多くのシャッターを切ることが大切なのだ。

また、渓流など水の流れを撮影するときも役に立つ。どれくらいのシャッタースピードが良いのか、自分の中にある程度の基準は持っていたとしても、水量や光の当たり方によって、現場に合わせてシャッタースピードを試行錯誤しながら撮影する。そうすることで、新しい表現を生み出していく。

REVORING Vari ND CPLなし
REVORING Vari ND CPLあり

上の作品では、岩に砕けて跳ね上がる水の動きを残したかったため、0.5~1.5秒の間でいくつかシャッタースピードを変えて撮影。そういった繊細な設定変更も、シームレスに減光効果を可変できる可変式NDフィルターの魅力である。また、光はあっという間に移動していくため、急いで何枚もシャッターを切った。

万能なREVORING Vari ND CPLだが、ひとつだけ欠点がある。それは広角域で撮影するときに色ムラが現れることだ。

広角レンズで撮影の際、NDの濃度を濃くしていくとクロス状に色ムラが出るので、光の強い日中の渓流や海などをダイナミックに撮影することが難しかった。これは可変NDフィルターの機構上の問題である。しかし、その悩みを解消するフィルターが発売された!

「Magnetic ND 16 for REVORING Vari ND3-ND1000 CPL」(以下Magnetic ND)は、REVORING Vari ND CPL専用のフィルターで、マグネット式で前面に装着することができる。

Magnetic ND

REVORING Vari ND CPLは広角域で使用する際、ポジション5(ND32)ぐらいから色ムラが現れるため、それ以上のND効果をかけたい時はこちらを装着し、減光効果をプラスすることができる。ND16、ND400のバリエーションがあり、この2つがあれば概ねのシーンをカバーできるだろう。

フィルターを重ねることに不安を感じる人もいるかもしれないが、透明度の高い光学ガラスを採用し、低反射で均等なNDコーティングをしているため、レンズの本来の性能を損ねずに安心して撮影ができる。現在は67mm-82mmの口径のみ販売されているが、他のサイズも随時発表されるとのことだ。

REVORING Vari ND CPLのみ
REVORING Vari ND CPL + Magnetic ND

上の作品は16-35mmの広角レンズを使って、REVORING Vari ND CPLにMagnetic NDを装着して撮影した。

光芒をダイナミックに撮影するため、広角レンズでもREVORING Vari CPLを躊躇なく使えるようになって嬉しい。また、光芒は逆光で明るいため、大幅に減光する必要がある。ND16だけでなくND400も持っていると幅広いシーンに対応できて安心だ。

CPLフィルターを一体化

REVORING Vari ND CPLのもう一つ便利な点は、CPLフィルターも一体化されているというところだ。

青空を濃く表現したり、葉っぱや水面の反射を抑えたり撮影できるCPLフィルターは、風景写真で活躍する場面も多い。CPLフィルターを多用する人にとって、NDと同時に使える点は大きなメリットといえよう。

一般的なCPLフィルターとNDフィルターを重ねて使用すると、ケラレが生じることもあるのだが、その心配もない上に装着もワンタッチである。両方を同時に使用できるという環境が容易に得られるのだ。

REVORING Vari ND CPLのみ
REVORING Vari ND CPL + 内蔵CPLフィルター

上の作品は渓流をスローシャッターで捉えたもの。川面に対岸の森が映り込んでいるが、水の飛沫が反射して白っぽく写っている。CPLフィルターを使って水面の反射を少し抑えると、青空や岩のオレンジ色が見え、より華やかな川面の表情を捉えることができた。

GNDフィルターと組み合わせる

いわゆるハーフNDと呼ばれるGNDフィルターを、REVORING Vari ND CPLの前に手持ちでかざして使用することもできる。フィルターの半分だけ減光効果がかかっているため、朝夕の地平線など輝度差の大きいシーンで、空の白トビや大地の黒つぶれを防ぐことができる。

REVORING Vari ND CPLとGNDフィルターを手持ちで組み合わせることで自由度が高まる

また手持ちの良いところは、GNDフィルターを少し揺らしながら撮影することで、ND効果の境目を目立たせずに自然に描写することができる点だ。山の稜線にあわせて、2枚のGNDフィルターを斜めに重ねて使用することもできる。

H&YのGNDフィルターはマグネットフレームに囲まれており、手持ちでも扱いやすい。また、ゴリラガラス採用で落としても割れにくく、傷が付きにくいコーティングで手持ちでも安心して使える。

そして、何よりREVORING Vari ND CPLならではの機動力も損なわずに済むのが良い。GNDフィルターは、境目がはっきりしているハードや境目が柔らかいソフト、減光効果もND4~16までと様々なバリエーションが用意されている。

REVORING Vari ND CPLのみ
REVORING Vari ND CPL + GNDフィルター

上の作品はREVORING Vari ND3-ND1000 CPLとグラデーションNDフィルターを使って撮影した比較だ。長時間露光をすることで、流れゆく靄のボリューム感と滑らかさを得つつ、空の明るさをグラデーションNDフィルターで抑えて、暗部の橋や林のディテールを美しく描くことができた。

ブラックミストフィルターが登場

さらに、REVORING Vari ND CPLの進化は止まらない。対応するマグネット式のブラックミスト「Magnetic Black Mist for REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm」(以下Magnetic Black Mist)も発売されたのだ。

Magnetic Black Mist

ブラックミストという言葉は、風景写真の世界ではまだ馴染みがないかもしれない。ソフトフィルターのように光を拡散して柔らかい効果を得ながら、被写体のシャープ感を損なわずに撮影できるのが大きな特徴だ。

星空撮影でソフトフィルターを使うと、大地の描写が眠たい印象となって困ってしまうことがあったが、こちらを使うと大地のシャープな描写を保ちつつ、星のハイライトだけを拡散し強調することができる。

効果は3種類あり、先行して1/4が発売された。秋頃には1/2、1/8も追加される予定だ。1/2が最も効果が強く、1/8が最も効果が弱い。

REVORING Vari ND CPLのみ
REVORING Vari ND CPL + Magnetic Black Mist

また曇天で花畑などを撮影すると、自然なソフト感をプラスことができ、シネマティックな雰囲気を楽しむことができる。こちらは1/4の効果のMagnetic Black Mistを用いて撮影したが、ナチュラルなタッチでわざとらしさを感じることなく、優しく印象を仕上げることができた。また、夜景の光を大きくして華やかでロマンティックに撮影することもできる。

まとめ

近頃は、フィルターワークを使った自由な風景写真の表現も多く見られるようになった。REVORING Vari ND CPLをベースに必要なアクセサリーを追加していくことで、どんどん表現の幅が広がり、オリジナルな作品も生まれていくことだろう。

簡単かつ直感的に使用できるので、手間や面倒に感じる気持ちからも解放される。昔はフィルターを買い足すほどにカメラバッグのスペースを圧迫していたが、これ一つで様々な機能をまかなえ、大幅な省スペース化も実現できるのだ。

また、雨風にさらされる風景撮影の現場では、フィルターを破損させないようとても気を遣っていた。しかし、H&YのGNDフィルターはゴリラガラスという強化ガラスを採用し、薄いガラスにも関わらず衝撃や曲げに非常に強く、傷もつきにくい。その耐久性と安心感が撮影に集中させてくれる。

そして、専用のキャップも発売された。REVORING Vari ND CPLをカメラに装着したまま移動するとき、さっとフロントキャップをつけて保護することができる。GNDフィルターと違いREVORING Vari ND CPLはゴリラガラスではないが(傷つきにくい処理と防汚コーティングが施されている)、キャップがあることで持ち歩き時の安心感が強まるだろう。

マグネット式のキャップ

裏側はベルベット素材を使用し、レンズの傷を防止する。またフロントキャップとリアキャップの両方をつければ、よりコンパクトになりREVORING Vari ND CPLをポケットにも忍ばせて持ち運べる。高級感のある質感とデザイン性が、撮影意欲を高めてくれるのも嬉しい。

REVORING Vari ND CPLは動画撮影に人気のある製品だが、風景写真においても非常に便利で活躍できるアイテムだ。その機動力と高機能性を手にすることで、風景のシャッターチャンスをさらに捉えられるようになるだろう。

協力:H&Y Filters Japan

萩原れいこ

沖縄県出身。学生時代にカメラ片手に海外を放浪。後に日本の風景写真に魅了されていく。車内泊用に改造した軽ワゴンで日本縦断を敢行。隔月刊「風景写真」の若手風景写真家育成プロジェクトにより、長野県志賀高原での写真修行を経て独立。中西敏貴、萩原史郎、萩原俊哉に師事する。「Heart of Nature」をテーマに、志賀高原や嬬恋、沖縄をメインに活動中。撮影のほか、写真雑誌への執筆、セミナー講師、写真教室を行う。