特別企画
ニコン Z 50の“クリエイティブピクチャーコントロール”に気持ちをのせて(後編)
自分の中の無意識を探る 組写真にまとめるコツも
2020年5月28日 12:00
ニコンZ 50を通じて、感情や雰囲気を一枚の写真に表現する手段として「クリエイティブピクチャーコントロール」(以下、クリピク。撮影データはCPと表記)の活用を伝えてきましたが、後半となる今回は、このクリピクを使いこなして、一体どんな楽しみ方ができるのか? をお伝えしたいと思います。
クリピクで組写真をつくってみよう
写真は感情を表現できる、をテーマでクリピクの使いこなしをご案内しましたが、単に撮って終わりにするのではなく、今度はその撮った作品を是非並べてみてください。難しく考えて撮っていないだけに、自分の視点、癖、色、構図がよく見えてくるでしょう。
そこからひとつの案として組写真を構成してみるのも楽しいことですよ。
今回、私は3日間クリピク撮影をしました。その時の気持ち、雰囲気を感じるままに撮ってみました。
でも、ここで終わってしまうのではもったいないです。感情のままに撮影してまとめたものから、今度は3枚組や4枚組など、組写真を構成してみてはいかがでしょうか。
私が選んだ組写真はこちらです。
組写真1
懐かしさのラベンダー。人気の無い神社の鳥居。思い出の人形。
昨年行ったニース〜プロヴァンス、シーズンではなかったがラベンダー畑が観光地になっていて、お土産にもラベンダーに関するものが多かった。プロヴァンスを思い出して育て始めたこのラベンダー。懐かしい感じがしたので「トイ」に。
緊急事態宣言で人が街にいない。たまたま車で通りがかった神社から見えた夕日が綺麗だったから降りてみた。結果、被写体となったのは、散り始めた桜と鳥居。
随分前に家人がパリで買ってきたという人形。懐かしそうに見つめる家人から思い出話しを聞く。人形の憂いがメランコリックな色味に合う。
3枚からのイメージは、意味なく切ない気持ち。横並びにしてみると、鳥居が=(イコール)で結びつけているような? 遊びの感覚です。
組写真2
撮りたい写真を目一杯撮れないストレス。それでも自然は何事もないように生きている。夕方の空、雲、光が綺麗だった。希望にも見えた光をキリッとさせたくて「サンデー」。
たまにひとけのない近場をカメラを持って歩いてみるが、気がつくと光を求めている。路面の光が1本の線に見え撮影した。3枚とも光への視点をスポット的に表現している。
癒しのひとつでもあるガーデニング。そのまま綺麗な花を撮りたくなかった捻くれた感情。下からライトを当てることで出来た色味。気に入った。
組写真3
季節は変わる、時間が経つことは、景色も変わる。変わらないのはビールの美味しさだけ、などとくだらない? 組み方も面白いかも。色合いで選んだ3枚。スカッとした色合い、ビールでもスカッとしたい、との思いで締めくくり。
組写真4
詩的なイメージ。同じ空間での4枚。時間差はほとんどないが、光の違い、場所の違いで、当たり前だがクリピクも違うと全く別の世界ができる。4枚の繋がりは、同じ空間。全てが違う世界観。
ニコンZ 50+NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR(19mm:28mm相当) / マニュアル露出(F4.5・1/320秒・+1.7EV) / ISO 640 / WBオート / CP:トイ50
このように組写真で構成してみることで自分の写真を良く見返し分析することも面白いと思いますよ。またここからひとつのテーマを作り、じっくりと作品制作へ繋がることもあるでしょう。今までとは違った新鮮な視点を見出すきっかけにもなると思います。
モノクロ編
さて、このクリピクには4種類のモノクロがあります。このモノクロ、使い方で随分と楽しめるんです。単にモノクロというだけでなく、それぞれの特徴をぜひ、使いこなしてみてください。
・チャコール
・グラファイト
・バイナリー
・カーボン
チャコールは軟調な仕上がり。幻想的なイメージを演出するのに最高です。またポートレートで女性の肌を綺麗に表現するには、とてもいい効果。曇天、晴天でも揺るがない表現力を作り上げてくれます。
グラファイトは、逆に硬調な仕上がり。きっと私って写真上手? と思わせてくれる写真に出来上がるかも(笑)。光の表現をより誇張して魅せてくれます。風景はもちろん、建造物なども面白く写し出されるでしょう。
またバイナリーはそのまま使うということよりは濃度を変えることで、モノクロともカラーとも言えない不思議な仕上がりになります。またこのバイナリーはマイクロフィルムをイメージさせ、文字などを被写体にした時はそのインパクトはかなりのもの。
カーボンは暗いモノクロな仕上がりですが、イメージとして昔のモノクロ映画の世界観を感じさせます。適用度を30にしてみると面白い仕上がりに。
チャコールも濃度30にしてみると、白の域の表現をカラーでも上手く使える効果になるでしょう。
この写真はそれぞれ、チャコールとグラファイトでの見え方の違い。
さほど日差しは強くはないが青空に雲が動いていたこの日。スカイツリーを見上げた写真。雲の見せ方がそれぞれでだいぶ違いが出ますね。チャコールはどこか印象的なシーンに感じられ、グラファイトは被写体をより主張する1枚となりました。
またこちらの写真はぱきっとした太陽の出ている日。海辺での1枚。水面での光写り込みが綺麗で撮影。これだけ光が強いシーンでしたら、私はグラファイトをオススメします。
おまけ:Capture NX-Dをもっと活用する
RAWデータであれば後からCapture NX-Dでクリピクへ編集ができることを前回もお伝えしましたが、これはカメラがニコンZだけに限りません。過去にNEFで記録されたデータも、全てこのCapture NX-Dで編集できます。
ニコンD800で2012年に撮影したデータをクリピクに編集してみました。
使用方法ですが、今まで通り編集したいデータをCapture NX-Dで開きます。
編集したいデータをセレクトして、ピクチャーコントロール下にある「カメラの相互」をクリックしますと「Creative Picture Control」の項目が出てきます。これをセレクト。
セレクトしますと図の様にクリピク「ドリーム」から始まります。「ドリーム」をクリックして、クリピクの中のどれに編集するかを選びましょう。
私はデニムをセレクトしました。あとは前回でもお伝えした通り、右上のファイル交換で選択した大きさをフォルダー内に保存します。
できました写真を編集前とくらべてみます。
クリピクを通じて自分の中の無意識を探る
「写真は感情を表現できる」をコンセプトにつくられたクリピク。今回は、本当にその感情を“まんま表現してみる”ことに挑戦していきました。
とはいえ、実は思いっきり直感のみで撮影するということは意外と出来ないもの。仕事上、作品を作る上でも、やはり無意識の中に意識をして撮影しています。当たり前のことですが……。
今回はその無意識の中の意識を、あえて“直感”に集中して撮影してみました。もちろん、その都度クリピクで表現しています。前回もお伝えいたしましたが、このクリピク機能に慣れますと、簡単に撮影時にその場面に合わせて設定や調整項目を変えることがスムーズになってきます。
皆さんもぜひ、クリピクに慣れて撮影を楽しんでみてください。