特別企画
ニコン Z 50の“クリエイティブピクチャーコントロール“に気持ちをのせて(前編)
画づくり機能を感情表現に活かすコツとは?
2020年4月29日 06:00
撮影時にその時の、その場の、感情や雰囲気を一枚の写真に表現する。誰もが、そんな表現を目指して日頃から撮り続けているのではないでしょうか。そういった作品を作り上げるにはどうしたらいいのか。永遠の課題でもあります。気持ちや温度、雰囲気といった微妙なニュアンスを写真の中で表現することはとても難しく、ハードルの高さを感じてしまうかもしれません。
微妙なニュアンスを表現するために
今回ご紹介するクリエイティブピクチャーコントロール(以下、クリピクと表記します)は、ニコン開発メンバーから“その時に感じた気持ちや温度感、雰囲気”といった、「感情」を1枚の写真に表現する、という大胆な発想に基づいてしっかりと設計された機能だと伺いました。「単なるフィルターではないんだ!」と感動した私です。ならば、その感情とやらをまんま表現してみよう、と撮影してみると想像以上に面白いです。これは今までになかった発想をも写真に表現できるでしょう。
今回、そんなクリピクを活用して「感情を写真に表現する」ことをテーマに、ニコンZ 50とともに、ハワイで撮影して参りました。
さて、このクリピクですが、以下のように20種類のバリエーションがあります。これらを、基準となるイメージから5つのグループにわけると次のようになります。あくまで基準としての区分ですが、これも参考にして作品づくりをするのも面白いでしょう。
[1]純粋:純粋な気持ちのイメージ
(1)ドリーム、(2)モーニング、(3)POP、(4)サンデー
[2]思い出:思い出の気持ち。
⼤⼈になってから昔の思い出を振り返るイメージ
(1)メランコリック、(2)ピュア、(3)デニム、(4)トイ
[3]闇:闇[ダーク]な気持ち。重厚なイメージを表現
(1)ソンバー、(2)ドラマ、(3)サイレンス、(4)ブリーチ
[4]⽩⿊:⽩⿊な気持ち。単なる⽩⿊ではなく、作⾵や独特な表現も意識
(1)チャコール、(2)グラファイト、( 3)バイナリー、(4)カーボン
[5]⾊モノクロ:⽩⿊に⾊をつけて感情表現をさらにひろげる
(1)セピア、(2)ブルー、(3)レッド、(4)ピンク
設定方法はとても簡単です。Z 50でご紹介いたしますと、まずは背面モニターに表示されている「i」ボタンをタッチ(背面の物理ボタン「i」ボタンを押しても操作できます)して、2列に並ぶ設定項目から、一番左にある「ピクチャーコントロール」をセレクトしましょう。
続けて、1列に並ぶピクチャーコントールから使いたいイメージをセレクトしましょう(画面はピュアをセレクト)。
「ピュア」をセレクト後にまだ「OK」を押さずに液晶右にある「OK」ボタン下をクリック。効果の適用度を調整しましょう。このように細かく調整できるのは、ニコン機ならではの特徴です。
適用度を決めたら、「OK」ボタンを押して、さぁ、いよいよ撮影です。
ちなみに、設定は「i」メニューからだけでなく、物理ボタンの「MENU」からも変更できます。設定メニューを開いたら、「静止画撮影メニュー」→「ピクチャーコントロール」に進みます。もちろん、「適用度」のセレクトもできます。最初は面倒に思われるかもしれませんが、慣れたらとても簡単に、素早く設定できます。まさにストレスフリーな機能です。
さっそくこの機能を利用して撮影した作品をご覧いただき、是非これからの作品づくりに役立てていただきたく思います。
イメージとは違っていてもこわくない!Z 50
ハワイオワフ島。ワイキキビーチに着いたものの、イメージしていた青い空、青い海、そしてきらきら輝く太陽はそこにはなく。今まではこういう状況をどこか怖がっていたが、今回はいつもとは違った。感覚、視覚をより研ぎ澄まし、私にシャッターを押させたような気がしたのは、このZ 50のお陰だと思うの。
クリピクで使用したのは「レッド」。濃度を50に設定して、夕方というわけでもない、懐かしい色味というわけでもない、非現実的な世界観を作り上げてみたかった。
ノースシェアのワイアルア地区にある古き良きハワイの住宅街。撮影に歩き疲れて、ふと見上げたら犬がこちらへ向かって近づいてきた。「一緒に遊ぼうよ」と誘いに出てきたよう。尻尾を振り振り、楽しそうに吠えていたが、疲労から笑顔になれない私。それを察したのか、犬は黙り、じっと見つめてきた。お互い、少しの間、沈黙。なぜかこの距離感が、私をたまらなく切なくさせた。大丈夫? 心配そうにそう聞いているようだった。
なんとなく別れるのが嫌で、ここを離れたくない私のそんな気持ちのイメージがクリピク「デニム」の色味にぴったりはまる。
ダウンタウンの午後。太陽が全くない日が続く中、やっと出てきた太陽。ほんの一瞬。でもいい光、そして影を作り上げてくれた。
たまらない発色。ぱきっと色合い鮮やか。そんな時はやはり「POP」。全てをハッピーでポジティブな気持ちにさせる感触を表現をしたかった。
ワイキキビーチ沿い、朝。こちらも雨の晴れ間に青空が出てくれた。「今日もこれから頑張って写真撮って来なさい!」そう励まされているような気がした。ヤシの木と建物を入れて...そのまま撮ると、なんだか面白くない。綺麗だけど、なんかね。ピュアな気持ちで伝えてみるとカチッとはまった。
何気ない情景でもクリピクの使いこなしで随分とイメージが変わります。
誰もいない国道沿いの寂れたレストラン。裏にゴミ箱がひとつ、目に留まる。「ブリーチ」で見せると渋目の光景が出来上がる。雲の感じも微妙に表現されて、余白にコピーでも書いたら何かの広告にでもなりそうな1枚。
ハワイの長閑な1コマ、というイメージには「ドリーム」がよさそう。なんとなくほっこりした感じが伝わる作品になる。
いざ、撮影へ! と思って行ったら雨だったりイメージしていた天気ではなかったり……。少なからず、そんな体験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。そんな時もこのクリピクを使いこなすことで想像以上の作品ができたりするかもしれません。
撮影場所は、インスタ映えでお馴染みのマカイ・リサーチ・ピア。干潮時に桟橋の下から見える絶好のスポットも、この日も雨で曇天の空模様。そんな時は色味を変えて、構図インパクトを感じさせる撮り方で。
ノースシェア、ハレイワタウンには女子力の高いセレクトショップが数多く並んでいる。そんな中で、陶器でできたマーメードを置いてあるお店が目がとまる。窓越しで雰囲気のあるシーン。
クリピクの素晴らしいところは、画づくりのパラメータを10刻みで10段階に調整できるところ。濃度を少し調整するだけでも、その微妙な色づかいで、よりオリジナリティのある作品が出来上がる。
撮影後の調整も可能
撮影時にRAWでも保存していれば、現像時にニコンの現像ソフトウェア「Capture NX-D」を利用して、ゆっくり効果を確かめながらセレクトを進めることができます。もちろん、適用度の調整も可能です。
撮影時のイメージとはまた違った視点や意図で作品づくりをしたい、といった場合でも簡単に調整できるため、活用の幅も広がり嬉しいポイントです。
実際に、セレクトから効果の適用、現像までの流れを紹介していきましょう。
まず、Capture NX-Dで現像する写真をセレクトします。
その作品を見ながら、右側のツールパネルから「ピクチャーコントロール」を選択して、任意の効果をセレクトします。
現像で適用する効果と調整幅を決めたら、「ファイル変換」をクリックします。
あとは画像の大きさ、フォルダーをセレクトして現像するだけ。ファイル変換をクリックすると「選択したファイルを変換」と表示されますので、画像サイズや保存するフォルダを選んで、「開始」をクリック。これで作業は完了です。
まとめ
冒頭でもお伝えしましたが、クリエイティブピクチャーコントロールは、その名のとおり作品“創造”の幅をひろげる機能です。
撮り手のイメージにあわせて選んでいけるクリピク機能。まだ使ったことがないという方や、オートでのみ撮影している方は、ぜひ試してみてください。きっと、感情を表現することの面白さを体験できるでしょう。もちろん、自分に合った画づくりができるカメラを探している方にとっても、注目の機能ですね。
次回の後編では、1日を通してクリピクを使った、作品づくりについてお伝えします。