特別企画

私の求める性能がこの小型ボディに——α6600とストリートスナップの関係

APS-C最上位モデル×大口径ズームレンズがもたらすもの

強い光のコントラストの中、前方から帽子を押さえながら歩いてくる人に、正確にピントを合わせ続けてくれた。そのお陰で構図を整えることに意識を向けることができたため、タイミングを合わせやすかった。
α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 34mm(51mm相当) / マニュアル露出(1/1,000秒・F16) / ISO 2500

11月1日に発売されたミラーレスカメラ「α6600」。その高速性能と小型ボディで軽快な撮影感覚をもたらすこのカメラは、ソニーの最新技術を凝縮したAPS-Cラインの最上位機種だ。

素早い判断と動体視力が必要なストリートスナップにおいて、このα6600はどのような力を見せてくれるのか。普段はα9を使い、独自の視点で渋谷の街を切り取る写真家・川音真矢さんに、作品とともに解説してもらった。α6600と同時に発表された大口径標準ズームレンズ「E 16-55mm F2.8 G」についても紹介したい。(編集部)

川音真矢(かわおとしんや)

1980年生まれ。神奈川県出身。2016年頃より東京の都市を中心にストリート写真を撮り始める。都会に暮らす人々の表情を通して、その街のアウトラインを探るべく日々撮影をしている。東京のイマを切り取るストリート雑誌「VoidTokyo」のメンバー。Magnum Photography Awards 2017 Finalist、ソニー World Photography Awards 2017 一般公募部門ストリート写真カテゴリー Shortlist など。


α6600
E 16-55mm F2.8 G
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小型軽量ボディについて

α6600は大口径のE 16-55mm F2.8 Gを装着しても驚くほど軽い。私が最初にこのカメラを持った時の印象だ。私は普段の撮影でフルサイズミラーレスのα9をメインで使っているが、APS-Cセンサーならではの強みを活かして小型軽量化されたこのカメラとE 16-55mm F2.8 Gの組み合わせは、様々な状況でスナップ撮影に対する適正の良さを感じさせてくれた。

シャッターチャンスというものは前触れもなくやってくることが常だ。歩きながら無意識にカメラを構えるのをやめ、カメラが下がっている時に限ってそれはやってくる。カメラが重いと段々疲れてきてしまい、結果的にそうなってしまうことが増える。慌ててカメラを構えなおしたが間に合わなかったという悔しい思いを何度したことか。

その点α6600は非常に軽量でコンパクトなため、長時間カメラを構えたまま歩き続けたとしても疲れることはない。さらにグリップの形状が手にしっかりと合っているためとても持ちやすく、一段と軽く感じるのかもしれない。そのおかげでシャッターチャンスを見逃さずに済んだということを、今回何度も実感した。

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下の写真は渋谷駅で撮影したもの。階段を行き交う人々にいい光が降り注いでいた。歩きながらこの場面に遭遇し、咄嗟に写真を撮った。こういうフットワークの軽い撮影ができるのは、カメラが小型軽量であるおかげだ。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 36mm(54mm相当) / マニュアル露出(1/400秒・F4.0) / ISO 500

カメラを片手に構えたまま渋谷駅から渋谷センター街へと入っていった。傘を差して足早に歩く人たちを正面から撮影。落ち着いてタイミングを合わせることだけに集中した。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 34mm(51mm相当) / マニュアル露出(1/500秒・F16) / ISO 5000

カメラが小型軽量であると、持ち運びが容易であるため色々な場所へ行き今まで目を向けてこなかったものにも目を向けたくなる。これは羽田空港内の展望デッキで撮ったもの。ガラスの映り込みを利用して撮影した。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 16mm(24mm相当) / マニュアル露出(1/400秒・F8.0) / ISO 5000

ピント合わせを自動化し、シャッターチャンスに集中できる。「リアルタイムトラッキング」について

私はストリートスナップを撮る時、液晶モニターを見ながら「リアルタイムトラッキング」を利用することが多い。この機能は対象を自動追従してピントを合わせ続けてくれるというもので、スナップ撮影のように動く被写体を捉えることが多い状況下で重宝する。またAF時の顔優先を「入」にしておくと、人物に対して優先的にフォーカスを合わせてくれるため、狙った被写体へのピント合わせをほぼ自動化できる。

これはα6600の高速AFの性能が最大限に発揮される場面だと思っている。自分が撮りたいと思った被写体に対して、高速でピントを合わせ続けてくれるからだ。α6600にはα9にも採用されているAIが搭載されており非常に精度が高い。使ってみると驚くほど便利だ。

α6600の高速AFとリアルタイムトラッキング機能の精度の高さは、一度試すだけで凄さが分かる。設定も非常に簡単で、AFモードを「AF-C」にした後は、私の場合にはカメラ背面の「Fn」ボタンからフォーカスエリアを選択し、一番下にある「トラッキング:拡張フレキシブルスポット」を選ぶだけだ。

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下の写真は、まさにそのリアルタイムトラッキング機能を利用して撮ったもの。被写体が動いていても、それに合わせてフォーカスポイントが高精度に動き、常にピントを合わせ続けてくれるため、非常に便利だ。この日は風が強く、上手い具合に髪の毛が舞い上がる瞬間を狙うことができた。ピント合わせに気を使わなくて済むため、その分、シャッタータイミングだけに集中することできた。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 35mm(52mm相当) / マニュアル露出(1/500秒・F11) / ISO 2000

次の写真だが、実はこういう写真を撮ることは難しい。エレベータの扉が半分開いた瞬間に合わせてシャッターを切っている。事前にこのような場面を想定して待ち構えていたわけではない。歩きながら偶然見つけて撮影したものだ。予告なく現れたシャッターチャンスに反応しようと思ったときにこそα6600の高速AFの凄さが分かる。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 35mm(52mm相当) / マニュアル露出(1/500秒・F16) / ISO 800

構図の自由度を抜本的に広げる「リアルタイム瞳AF」について

α6600の「リアルタイム瞳AF」は驚くほど正確に、そしてあっさりと瞳にピントが合う。ファインダーをのぞきながらモデルを画面内におさめ、どのような構図で撮ろうかと思案する。ほぼ全域をカバーするフォーカスエリアの広さが発想に広がりを与える。考えがまとまり、よし、この構図で撮ろうと思いシャッターを半押しすると、既に瞳にフォーカスが合っている。このような感覚だ。もちろん被写体が動いても非常に高い精度で追随してくれる。自分で細かくフォーカスポイントの操作をしなくて済むというのは、これほど楽なことはない。

モデルと会話をしながら撮影を進めていくうちに、途中から私はピントを合わせるという作業そのものを忘れていることに気が付いた。意識しなくてもカメラまかせにしておけば瞳にピントを合わせてくれる。それほどα6600の瞳AFは優秀だった。

これは人物スナップ撮影をする上でとても頼もしい機能だ。ピントを合わせるという一連の煩わしい作業から解放され、被写体の表情や動きをよく観察し、タイミングを合わせることだけに集中できる。

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モデルにはショーウィンドウの向こう側に立ってもらい、ガラスの映り込みを狙って撮影を行った。リアルタイム瞳AFによってフォーカスポイントを追従させておくと、その後に瞳に多少何かが被さってもピントが外れることはなかった。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 55mm(82mm相当) / マニュアル露出(1/250秒・F8.0) / ISO 2500

この構図を形作った時点でピントは合っている。そういう安心感があるため瞬間的な表情を捉えることだけに集中できる。この場所で何枚もシャッターを切っていたが、リアルタイム瞳AFのおかげで、自分でピントを合わせるという作業を一度も行っていない。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 55mm(82mm相当) / マニュアル露出(1/200秒・F11) / ISO 1250

手ブレ補正と画質について

手ブレ補正はスナップ撮影において最も有用な機能の一つだ。撮りたいと思ったときに自分が完全に静止した状態で落ち着いて撮れるとは限らないからだ。ほかにも暗い場所、不安定な態勢でしか撮ることのできない場所、天候など様々な要因によって撮影としては不利な状況になることがよくある。

そのような不利な状況をサポートしてくれているのが、α6600に搭載された、約5.0段分の補正効果をもつ光学式5軸ボディ内手ブレ補正だ。これはスナップ撮影で非常に強力な武器となる。

私の場合モノクロ写真も多く撮るが、これらは黒と白だけで構成されるため質感や階調には非常に気を使っている。その点α6600の画質は非常に優れていると感じる。まず質感描写がとても素晴らしい。黒がビシッと締まるし、シャドウからハイライトへの階調も気に入っている。私が求めている画質がしっかりと得られている。

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渋谷のスクランブル交差点を俯瞰して撮影。これはカメラを高く持ち上げ、思い切り背伸びをして手を伸ばし、液晶モニターをみながら撮影している。不安定な態勢で撮影をしているため、こういう時に手ブレ補正の恩恵は大きい。画質も非常にシャープ。とても満足のいく描写だ。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 16mm(24mm相当) / マニュアル露出(1/250秒・F2.8) / ISO 100

渋谷駅周辺の高架下で撮影したもの。非常に暗い場所であるためISO感度は6400に設定されている。しかも後方には強く光が当たっており、明暗のコントラストが強く、撮影環境としては厳しい状況であるが、シャドウ部の階調がしっかりと保たれており、衣服や人肌の質感描写も申し分ない。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 36mm(54mm相当) / マニュアル露出(1/500秒・F7.1) / ISO 6400

上の写真とは別の場所であるが、これも高架下で撮影したもの。髪の毛を微妙に揺らしたかったため、モデルには常に頭を動かしてもらっている。また、この時はISO 6400と高感度の撮影であったが、高感度においても画質が素晴らしく、手ブレ補正のお陰でシャープな雰囲気を出せている。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 16mm(24mm相当) / マニュアル露出(1/250秒・F8.0) / ISO 6400

大口径APS-Cレンズ「E 16-55mm F2.8 G」について

カメラやレンズを変えると撮影気分が変わるとよく言われているが、E 16-55mm F2.8 Gは見事に私の気分を変えてくれた。ズームレンズでスナップを撮ることの面白さを味わわせてくれたのだ。

普段私はα9でストリートスナップを撮っている。焦点距離35mm相当の画角を好んでいる。これは自分が被写体と対峙したい距離であり、至近距離で撮ることで被写体の表情をより魅力的に見せるためだ。そういう理由から35mmの単焦点レンズ1本を主に使っている。これは撮りたいものを固定し、追い込んでいくスタイルに向いていると考えている。

焦点距離を変えられる面白さは、被写体と対峙できる距離を変化させられるということだ。単焦点レンズ1本を使う時と比較すると、色々なものにアンテナを張り巡らして撮影する楽しみが生まれてくる。

今回はE 16-55mm F2.8だけを使用したが、ソニーEマウントなのでフルサイズセンサーを搭載する上位モデルと、レンズ資産の共有ができることも魅力の一つだろう。同じストリートスナップでも、ある程度撮りたいものが決まっていて、じっくり構えたい時にはフルサイズ。対照的に普段撮れないものにもアンテナを張り巡らせて、偶然の瞬間に臨みたい時はAPS-Cサイズ。同じレンズで「撮る感覚」によってボディを使い分けることができる。

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有楽町駅付近を歩いているとドライミストが設置されており、それに光が当たる様子が美しかった。E 16-55mm F2.8 Gはα6600との相性が非常に良い。普段はあまりこういう所に行って撮影をしようという選択肢は出てこないが、小型軽量であることとズームレンズであることが、色々なものに目を向けてみたくなる。自然とそういう気持ちにさせてくれた。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 45mm(67mm相当) / マニュアル露出(1/500秒・F8.0) / ISO 1250

これはショッピングモールの駐車場付近で撮影したもの。ここでは除草のためにヤギが放たれている。ヤギと都会のシンボルであるビルの組み合わせが面白かった。駐車場からヤギまでの距離はかなり離れているため、望遠で撮るしかできない。このような場面に目を向けて撮ることが出来るのはE 16-55mm F2.8 Gの魅力の一つだ。解像感も十分にある。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 55mm(82mm相当) / マニュアル露出(1/200秒・F8.0) / ISO 640

いつもと違う焦点距離、違う対峙の仕方をすることで、作品の幅を広げることができる。これは望遠側の35mm換算で82 mm相当で撮影。私としては焦点距離を変えることで被写体との対峙の仕方を変えることが出来るのが大きな利点だと思っている。ボケも素直だ。

α6600 / E 16-55mm F2.8 G / 55mm(82mm相当) / マニュアル露出(1/250秒・F5.6) / ISO 640

小さなボディに大容量バッテリーが頼もしい

ストリートスナップを撮る私にとってのバッテリーの持ち時間とは、「電源を入れっぱなしにして歩き回って撮影できる時間」のことだ。パワーセーブ開始時間も設定上できる最長のものにしておき、電源が自動で落ちないようにしている。

冒頭でも書いたが、ストリートスナップにおけるシャッターチャンスはとにかく前触れもなく突然やってくることが多い。それに瞬時に対応するためには電源は入れっぱなしになっているほうがよい。撮りたい! と思ったときに電源が入っていないと、それだけでいい瞬間は過ぎ去ってしまうからだ。

α6600はα9などフルサイズセンサー搭載の上位モデルが採用する高容量Zバッテリーが使われているため、とてもバッテリーの持ちがよい。私の撮影スタイルの場合、電源を入れっぱなしで4〜5時間撮り歩いて約1,000枚以上の写真を撮るが、バッテリーが切れることはなかった。小さなボディのカメラでこの実力は頼もしい。

まとめ

α6600なら小型軽量でかつバッテリーのもちがよいことから、長時間ストレスなく街を歩きながら撮影ができる。さらに時折訪れる不利な状況でも、シャッターを切ることを強いられても、光学式5軸ボディ内手ブレ補正によってカメラ側で撮影をサポートしてくれる。また瞬時のシャッターチャンスには高速AFが活きてくる。もちろん画質も素晴らしく、これはプロが作品を残していくうえで十分なクオリティである。

このように、α6600に備わっている一つ一つの際立った機能がスナップ撮影においてその実力を十分に発揮してくれる。α6600にE 16-55mm F2.8 Gを組み合わせると、私がスナップ撮影に必要だと思う機能がハイレベルにバランスよく揃う。これは正に、瞬間を切り取ることに長けたカメラだ。

制作協力:ソニーマーケティング株式会社

川音真矢

1980年生まれ。神奈川県出身。2016 年頃より東京の都市を中心にストリート写真を撮り始める。都会に暮らす人々の表情を通して、その街のアウトラインを探るべく日々撮影をしている。東京のイマを切り取るストリート雑誌「VoidTokyo」のメンバー。Magnum Photography Awards 2017 Finalist、ソニー World Photography Awards 2017 一般公募部門ストリート写真カテゴリー Shortlist など。