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ニコン Z fc

実機の質感をチェック FM2との比較写真も

ニコンが7月下旬に発売するミラーレスカメラ「Z fc」の外観写真をお届けする。本機はフィルム一眼レフカメラ「FM2」の象徴的なデザインを受け継いだというスタイリングが特徴のAPS-Cミラーレスカメラで、有効2,088万画素のCMOSセンサーや画像処理エンジンEXPEED 6といった基本性能を、現行製品のAPS-Cミラーレスカメラ「Z 50」(2019年11月発売)から継承している。

店頭予想価格(税込)は、ボディ単体が約13万円、DX16-50mmシルバー付きのズームキットが約15万円、特別デザインの「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」が付属する単焦点キットが約16万円。ボディ単体とズームキットの想定価格は、Z 50から1万円ずつアップしている。

NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)を装着

フルサイズミラーレスの高級機が話題となる一方、APS-Cサイズなどのカテゴリーでは、クラシカルデザインで実売10万円台のミラーレスカメラが若年層を中心に人気だという。Zユーザーの裾野を広げていきたいニコンとして、APS-Cミラーレス「Z 50」の定評ある基本性能をそのままに、本体デザインによる“情緒的価値”にも重きを置いたという製品が今回のZ fcだ。「精密機器の感触と高画質の『融合』を表す『fusion』の『f』、ニコンの歴史を築いてきたカメラを象徴する『f』のふたつを継承し、よりカジュアル(Casual)に使ってほしい」という点からZ fcと名づけたという。

「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」シルバーを装着

商品コンセプトと価格を耳にした時は「実物はかなり安っぽいのでは?」と不安もよぎったが、短時間ながら実機を手にした印象ではダイヤルやボタン類の感触も割としっかりしており、EVFの見やすさもニコンZシリーズらしく設計に余裕を感じるもので、買った後で安っぽさを見つけてテンションが下がるということも少なそう。天面のダイヤル配置や直線基調の外観は、ちょっとカメラに詳しい人でも、一瞬フィルムカメラと見間違えそうな雰囲気がある。外装素材に真鍮を使うような気張ったところはないが、そのおかげで安くて軽くて持ち出しやすいカメラに仕上がっていると感じた。

そうした点からZ fcは、フィルムカメラの特別感とデジタルカメラの利便性をいいとこ取りしたいカジュアルユーザーのみならず、「そろそろミラーレスカメラも使いたいが、重くて高価なのはイヤ。でも、ひとひねり効いたものが欲しい」というベテランユーザーにもマッチするように思う。

外観

ニコンZマウントを採用
背面のバリアングルモニターを閉じたところ。
側面にUSB Type-C端子を用意。充電/給電の両方に対応する。Z 50はmicroUSB。
バッテリーを横方向に収め、フラットボディを実現している。
バッテリーはZ 50と同じ「EN-EL25」。

NIKKOR Zレンズの装着例

フルサイズ対応の「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」を装着

エクステンショングリップ装着例

別売の「Z fc-GR1」は、カメラの三脚ネジ穴に取り付け、フラットなカメラボディのホールド性を高めるアイテム。可動部はなく、バッテリー/記録メディア室のフタが開く部分がくり抜かれており、装着したままバッテリー交換が可能。三脚にも取り付けられる。

バリアングルモニターの動きも妨げない。

他機種と外観比較

Z 50と比較

共通のイメージセンサーや画像処理エンジンを採用する「ニコン Z 50」と並べてみた。外形寸法を比較するとZ fcの約134.5×93.5×43.5mmに対し、Z 50は約126.5×93.5×60mmと、高さは同じ。内蔵ストロボの有無も異なるが、バッテリーの挿入方向を縦から横にしたことでグリップ部の突出をなくし、その分だけ横幅が広がっているようだ。

バッテリーをグリップの突出方向に収めたZ 50と、90度回転させてフラットに仕上げたZ fc。
モードダイヤルからは、USERモード、シーンモード、スペシャルエフェクトモードを省略。

Z 7IIとの比較

さすがにフルサイズ機となると、レンズマウントこそ同じだが、主に縦方向への大型化は避けられなそうだ。“Z fcのフルサイズ版が出たら買う”という声もあるだろうが、果たして。

Dfと比較

ダイヤル操作をフィーチャーした機種として、35mmフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「Df」とも並べてみた。APS-Cかつミラーレス構造というのは、フィルムカメラのような佇まいを目指す上で圧倒的なアドバンテージであることがわかる。

Z fcには、Dfに搭載されなかった「露出補正簡易設定」が備わる。天面の露出補正ダイヤルを新設のCポジションに合わせると、コマンドダイヤルでの露出補正操作も受け付ける便利機能。

FM2と比較

フィルム一眼レフカメラ「FM2」と並べてみた。もちろんFM2とは別物なので、当時を知るユーザーの思い出までは超えられないが、レンズキットで15万円という現実的な価格でこうしたミラーレスカメラが登場したことを言祝ぎたい。

マウント径の違い。Z fcには、ミラーボックス部分の出っ張りもない。
Z fcのシャッターボタンにはネジ切りがないため、ネジがなくても取り付けられるAR-1的なアイテムに期待したい(おじさん目線)。
ボディがもともと薄いため、トップカバーの上部を絞ったり、段を付けて薄く見せる手法が使われていない。これにより直線基調が強調され、一層“らしい”感じがする。
Z fcの右手側前面にあるのは、ファンクションボタン。
Z fcとFM2の縦ロゴをアップで比較。

細部を見ていくと、「ニコンのことだから、ここは手抜きができなかったんだろうな」という部分もいくつかあり、好印象だった。たとえば、ファインダー接眼部を伝統的な丸型にするために、Z 50にはなかった新規のパーツを作っているが、このことが新規ユーザーにどれほど訴えかけるだろうか。単体のバッテリーチャージャーなど同梱品にせず、他社のように別売にしても、もはや誰も怒らないのではないか。こうした部分に、新規ユーザー獲得に奮起しつつも、既存ファンをがっかりさせたくないという意志が見える。

再生ボタンと削除ボタンは左手側に配置。高さを変えて押し間違いを防ぐ配慮。
接眼部は丸型。このために「接眼目当て DK-32」という新パーツを用意している。

なお、FM2にはブラック、New FM2にはチタンも存在したが、Z fcは今のところ1色のみの展開。支持を得てロングセラー機になれば“Z fc ブラック”なども期待できるだろうか?

革の張り替えサービスも

ニコン純正サービスとして、外装レザーの張り替えサービスを用意している。Z fcの発売と同じく7月からスタートし、キャンペーン期間中は無料(配送料のみ負担)で希望のカラーに張り替えを行うという。納期は申し込み受付から約2週間。キャンペーン終了後も、在庫の限り有償(4,950円)で受け付ける。選べるカラーは全6色で、鮮やかな色もあれば、淡く落ち着いた色もある。

通常カラー、アンバーブラウン(以下、通常カラー以外はレンズ含めモックアップ)
ミントグリーン、コーラルピンク
ホワイト、サンドベージュ、ナチュラルグレー
アンバーブラウンは、New FM2のコラボモデルを思い出す方もいるかもしれない。

Z fcにデザインを合わせたレンズも

標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」シルバー

Z 50のキットレンズとして登場したレンズに、シルバーカラーが追加された。前面だけが黒いのは、あの中古市場で人気が高いパンケーキレンズをイメージしているのだろうか。単体でもZ fcと同じく7月下旬に発売予定。店頭予想価格は税込4万円前後の見込み。

フルサイズ対応の単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」

Z fcのデザインに合わせた特別版で、単体では10月上旬に発売予定。Z fcでは35mm判換算42mm相当の画角になる。最短撮影距離は19cm。単品での店頭予想価格は税込約4万円の見込み。

一眼レフ用の28mmレンズと比べて全長が短い点に、ミラーボックスを避けずに済むミラーレスカメラならではのメリットが表れている。控えめな前玉径とクラシックな書体の雰囲気に、筆者はどこか可愛らしさも感じた。本レンズのアタッチメントサイズは52mm。レンズキャップはNIKKORと記された通常品が付属するので、まず手始めにニコンの古いレンズキャップを取り付けてみたくなった。

本誌:鈴木誠