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ライカM10-P

フィルムライカ並みの薄さ+静けさ タッチパネルの操作性は?

ライカカメラジャパン株式会社が8月25日に発売する「ライカM10-P」を試す機会があったので、その外観写真を中心にお届けする。

本機は2017年2月に発売された「ライカM10」をベースに、これまでの“-P”がつくモデルと同様、“控えめ”であることを目指したアップデートが盛り込まれている。外観のロゴ配置を変更したほか、ライカM10-Pでは「シャッター動作の静音化」、「タッチパネルの搭載」という新要素も注目だ。希望小売価格は税別98万円(ライカM10は税別88万円)。

手前がライカM10-P。奥がライカM10。

正面のLeica赤バッジがあった部分には、ライカM-P(Typ240)と同様にマイナスネジをモチーフとしたキャップ(この中に、距離計調整用のネジが収まる)が装着され、トップカバーの筆記体ロゴとともにクラシックなM型ライカを想起させる。赤バッジのワンポイントがなくなることで、見た目が控えめになるという意図だ。

ファインダー接眼部の横にある刻印は、上面のクラシックロゴと「LEICA CAMERA WETZLAR」の表記が重複するため「MADE IN GERMANY」だけに短縮。

これらは6月にドイツ本社で発売された50台限定モデル「ライカM10 Leitzpark Edition」で先行採用されていた意匠でもあり、それを踏まえて“もしM10-Pが出たら、こうなるんだろうね”と期待が寄せられていた。

参考:ライカM10 Leitzpark Edition。クラシックライカ風のシリアル記載は、引き続きこの限定モデルだけの優越。
左がライカM10-P。右はライカM10。右の色味が異なるのは、筆者の使用に伴うスレのため。
感度設定はライカM10と同様、ノブを引き上げて回すスタイル。
付属のストラップに当て革が付いた。ライカM10でカメラボディ側の傷防止パーツがなくなったため、スレを気にしてのことだろう。

シルバークロームも用意

ライカM10-P(シルバークローム)

カラーバリエーションはブラッククロームとシルバークロームの2色。通常モデルのライカM10と同じラインナップで、日本のライカ市場で人気があると言われるブラックペイントはまだ登場していない。また細かな点だが、ホットシューカバーが金属製になり、ボディカラーとの馴染みがよくなっている。従来は黒いプラスチックのみだったので、特にシルバークロームでは効果が高い。

ホットシューカバーがボディと同色になった。
見た目のマッチングはよくなったが、紛失すると高くつきそうだ。

タッチパネルの使い心地は?

スマートフォンのような画像拡大操作に対応した。

タッチパネルは、撮影時に表示されるインフォ画面でショートカットボタン的に使用可能。露出補正、ホワイトバランス、レンズデータの選択画面などを呼び出せるが、そこから先の操作には十字キーや決定ボタンを扱う必要がある。

この画面でアイコン類をタップすると、各設定項目に直接ジャンプできる(押せないものもある)。

便利なのは画像再生時だろう。以下の動画で再生画面でのタッチパネル操作を試してみた。ピンチイン/アウトで画像拡大、タップで情報表示が可能。ダブルタップで一定倍率に拡大表示できるのはピントやブレの確認にとても便利だ。

また、ライブビュー撮影時にも同様の拡大操作が使える。ライブビュー画面では2軸の電子水準器をオーバーレイ表示できるようになったのも新しい。

ライブビュー画面に水準器を表示。

一新されたシャッターフィーリング

こればかりは実際に手に取って確かめてもらうほかないが、手にした印象と追加取材をもとにお伝えする。

ライカM10-Pは、ライカM10の「カタン」という硬質なシャッター音から、「パシュン」という丸みのある音質になっている。音量も抑えられ心地よい。筆者の想像だが、シャッターユニットにダンパーが効いて音質が丸くなり、カメラ内部の密閉度が高まったことで外に聞こえてくる音量が下がっているような印象がある。ライカカメラジャパンの回答では、「ラバーベアリングサスペンション」の採用によりシャッター動作の音とショックを和らげているそうだ。

フィルムライカを知る人なら「ライカって、元々これぐらい静かなんじゃないの?」と感じるレベルとも言えるが、ライカMデジタルを使っている人にとっては大きな違いだ。

M型ライカといえば昔から、オペラハウスで唯一写真撮影を許されたとか、指をパチンと鳴らした音の何分の一の静けさだとか、とにかく静かで目立たないことを美とする逸話が多い。現在ではレンズシャッターのデジタルカメラのほうが静かだし、最新のミラーレスカメラでは電子シャッターで完全に無音の撮影もできるものの、それはまた別の話。音や振動のフィードバックとしての“シャッター音”もカメラの顔だ。

もし実機を確かめる場合は、撮影時のように手に持った状態でシャッターを切ってみることをお勧めする。例えばカメラをテーブルなどに置いた状態では、シャッター動作の振動がテーブルの板を鳴らしてしまう。加えて、撮影時のようにちゃんとレンズを装着するのがポイント。レンズが装着されていない状態ではM10とM10-Pの違いがあまり感じられないが、レンズを取り付けるとその差は明確になる。

さらに一歩、フィルムライカに近づく

ライカM10でフィルムライカ並みのスリムボディを手に入れ、ライカM10-Pではフィルムライカ以上という静粛性を手に入れた。愛好家が期待するクラシックなM型ライカ像に着実に近づきつつあるライカMデジタルの近況が面白い。何より、「薄くなった」「静かになった」が話題になるような引き算志向のデジタルカメラは希有だ。あとフィルムライカに迫ってほしい点として浮かぶのは、現在100g弱のハンデがある本体重量ぐらいだろうか。

ひとつ現実的な話をすれば、既にユーザーの手元にあるライカM10もこのM10-Pの静音シャッターを手に入れられるなら、大いなる決心でM10を買ったスナップ派ユーザーの心もいくらか穏やかになろうというもの。そうでなくても、今後のデジタルライカはこれぐらいの静粛性が基準になってくれると嬉しい。

本誌:鈴木誠