新製品レビュー

ソニーサイバーショットRX10 II(実写編)

写真、4K、スーパースロー。なんでもこなせる1型センサー機

全域F2.8の明るさを持つ24-200mm相当のツァイスVario-Sonnar T*レンズを搭載したRX10の外観デザインと基本スペックを踏襲しつつ、メモリー一体1.0型積層型CMOSセンサーを採用したソニーサイバーショットRX10 II。1/32,000秒の超高速シャッターや960fps記録のスーパースローモーション動画、そして4K動画撮影などを可能にしている。

前回の外観・機能編に続き、今回はその実写を交えたインプレッションをお届けする。

RX10 IIは、同じく1.0型の積層型CMOSセンサーを持つポケットサイズのサイバーショットRX100 IVより大柄でグリップも大きいため、手にしている感覚はデジタル一眼レフやミラーレス機に近い。とはいえ小型のバッグに収納できるので、十分携帯性に優れているといえる。ファストインテリジェントAFも速く、快適な撮影ができた。

画質も大口径の高倍率ズームとは思えないほど優秀だ。ズーム全域で絞り開放から解像力が高く、画面中心部と周辺部の描写の差も少ない。細かい部分の再現も優れていて、明らかなに一般的なコンパクトよりも高画質だ。1.0型センサーの余裕が感じられる。しかもレンズはズーム全域でF2.8の明るさなので、ボケを狙った表現も可能だ。

画角変化
広角端(24mm相当)
望遠端(200mm相当)

積層型CMOSの高速読み出しを活かした「アンチディストーションシャッター」により、メカシャッターを使わない電子シャッター撮影でも被写体が歪みにくいのも嬉しい。ここでは電車を一般的なスマートフォンと撮り比べをした。スマートフォンでは窓やドアが見事に歪んでしまったのに対し、RX10 IIは歪んでいないのがわかる。電車以外でも、スポーツや鳥の羽ばたきなど、瞬間の動きを安心して捉えられる。特にRX10 IIは200mm相当までの望遠や最高約14コマ/秒の高速連写があるので、動体を撮りやすいカメラだ。

アンチディストーションシャッターの効果
参考:スマートフォンによる撮影で動体が歪んだ例
RX10 IIの電子シャッター撮影

それでは高感度はどうだろうか。ベース感度のISO100から最高感度のISO12800まで、1段ずつ撮影してみた。レンガや窓枠のディテールや、シャドー部の締りに注目してみよう。主観にもよるが、ISO800までは常用域。ISO1600から高感度らしさが目立ってくるが、それでも実用の範囲内。よほど拡大しなければISO3200でも実用になる。

Lサイズ程度のプリントやWeb用ならISO6400までで、ISO12800は極端に暗い場所での手持ち撮影など緊急用だろう。ISO100からISO12800まで、どこかで急に画質が落ちることもなく緩やかに高感度らしさが強くなるため、コントロールしやすいといえるだろう。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

望遠域でスーパースローモーション撮影

積層型CMOSセンサーの搭載で見逃せないのが動画機能だ。RX10 IIは24-200mm相当と、RX100 IVより高倍率なズームレンズを持つので、画角変化を活かした動画が撮影できる。特に注目なのが960fpsのハイフレームレートだ。960fpsでの焦点距離は、35mm判換算で41-330mm相当(画質優先)となり、スポーツや野鳥のように被写体から離れた場所からの撮影に活躍できる。

ここでは噴水を撮影。やや望遠にして噴水から離れることで、水滴がカメラにつくのを防いだ。肉眼では勢いよく流れ落ちている水が、ハイフレームレートのスローモーションでは、水滴となって見えている。また噴水の後ろを歩く人の足の動きを見ると、どれだけ遅いかがわかる。

動画でも活きる24-200mmレンズ

おそらくRX10 IIの最大の特徴が4K動画だろう。まだパソコン用の4K対応ディスプレイモニターは高価で、4Kの動画編集にはパソコンのスペックを相当高くする必要があるものの、テレビでは4Kが普及してきている。2016年はオリンピックイヤーということもあり、4Kテレビは一層普及が進むはず。もし、いまは4K対応機器がなくても、将来を考えるとより高画質の動画で撮影しておきたい。

RX100 IVと同様、画素加算のない、全画素読み出しの4K動画が記録できる。ピクチャープロファイルやS-Log2ガンマ、タイムコードやレックコントロールなど、本格的な動画撮影機能を備えているのも同じだ。

バッグのポケットに入るほど小さいボディでこれだけの動画機能を実現したのは驚きだが、さらに本格的な4K動画撮影にはRX10 IIの方が向いている。24-200mm相当のレンズは、4K動画撮影時は35mm判換算で28-233mm相当の画角を得られる(手ブレ補正スタンダード)。ズーム倍率で撮影の幅が広がるだけでなく、大型のマニュアルリングやクリックフリーにできる絞りリングを持つのもポイントだ。ここでは望遠の圧縮効果を活かした動画を撮影してみた。

ちなみに、RX100 IVの4K動画は連続で約5分間しか撮影できないのに対し、RX10 IIは約29分も撮影できる。

また、拡張性の高さも注目だ。RX10 IIはマルチインターフェースシューやヘッドホン端子、マイク端子を備えているため、例えば外部マイクとヘッドホンを装着して音声レベルの調整が行える。さらにプロ用オーディオ機器対応のXLRアダプターキット「XLR-K2M」の使用により、マイクやミキサーなどのXLR端子機器からマイク・ラインの入力が可能。2チャンネルまで対応し、それぞれ独立した設定ができる。写真と4K動画、どちらもしっかり撮影したい人には、RX10 IIがおすすめなのだ。

レンズ交換はせずに、軽快に持ち歩きたい。でも広角から望遠までカバーして、レンズの明るさや画質は犠牲にしない。さらに本格的な動画撮影もしたい、という欲張り派に、RX10 IIは最適といえる。オールマイティという表現がぴったり合っているカメラだと感じた。

作品集

1.0型CMOSセンサーは、ハイライトからシャドーまでの階調が豊富だ。またファストインテリジェントAFのおかげで、ピント合わせもスピーディーだ。

ISO100 / F2.8 / 1/400秒 / 73.3mm(200mm相当)

ISO1600で撮影。拡大すると高感度らしさを感じるが、十分実用的な画質だ。

ISO1600 / F2.8 / 1/250秒 / 73.3mm(200mm相当)

噴水を1/32,000秒で噴水の水を撮ってみた。さすがにISO100では1/32,000秒に届かないので、ISO3200まで上げている。動画とは異なる、動きの瞬間を止めた写真が撮れる。

ISO3200 / F2.8 / 1/32,000秒 / 55.7mm(152mm相当)

地面スレスレからローアングルで狙った。チルト式液晶モニターを活用すると、こうしたアングルも楽に撮れる。

ISO100 / F11 / 1/100秒 / 8.8mm(24mm相当)

望遠側200mm相当。圧縮効果を活かした。本格的な広角24mm相当から望遠200mm相当までカバーし、しかもF2.8の明るさなので幅広い、表現が楽しめる。

ISO100 / F2.8 / 1/800秒 / 73.3mm(200mm相当)

RX10 IIは、望遠側でも撮像面から約39cm(レンズ先端から約25cm)まで近づける。小さい花もクローズアップが可能だ。また花だけでなくテーブルフォトにも使ってみたい。

ISO100 / F2.8 / 1/60秒 / 73.0mm(199mm相当)

ツァイスVario-Sonnar T*レンズは、画面周辺まで解像力が高く、クリアな描写をする。とても高倍率ズームとは思えないほど優れた写りだ。

ISO100 / F8 / 1/400秒 / 8.8mm(24mm相当)

1.0型はAPS-Cサイズより小さいとはいえ、ボケを狙った写真も可能だ。二線ボケが目立ちやすいシーンだが、自然なボケが得られた。

ISO100 / F2.8 / 1/125秒 / 50.2mm(137mm相当)

シャッター速度は1/25秒。手ブレ補正のおかげで、手持ちでもブレずに撮れた。

ISO100 / F4 / 1/25秒 / 43.6mm(119mm相当)

青空や雲の階調が滑らかに再現されている。また強い光が画面に入っているが、ゴーストは少なくフレアも出ていない。

ISO100 / F8 / 1/800秒 / 8.8mm(24mm相当)

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。