新製品レビュー

ソニーサイバーショットRX10 II(外観・機能編)

積層型CMOSを新採用した、万能タイプの大口径ズーム機

1.0型のCMOSセンサーと、全域F2.8の明るさを誇る、24-200mm相当のツァイスVario-Sonnar T*レンズを搭載したソニーサイバーショットRX10に、2機種目となるRX10 II(DSC-RX10M2)が登場した。

発売は8月7日。掲載時の実勢価格は税込17万960円前後。

外観は同時発表のサイバーショットRX100 IVに見られる変化のように、前モデルのRX10とほぼ同じデザイン。機種名をよく見ないと、どちらかわからないくらいだ。

しかしRX100 IVと同じく、RX10 IIでは新たにメモリー一体の1.0型積層型CMOSセンサーを採用し、従来の裏面照射型CMOSセンサーと比べて信号処理の速度が大幅に向上している。裏面にメモリーを搭載することで信号が一時保管でき、大量の信号でも滞らない。そのため、これまでの5倍以上という高速化を実現している。

内蔵フラッシュは、ISOオート時では約1mから10.2mまで光が届く。ISO12800にすると、最大到達距離は20.4m。
左側面に各端子がある。上からマイク端子、ヘッドホン端子、USB端子、HDMI端子。USB端子から充電もできる。
無線LAN機能を持ち、NFC対応のスマートデバイスとは、タッチするだけで接続できる。
バッテリーはRX10と変わらずNP-FW50を使用。液晶モニター使用時で約400枚(約200分)、EVF使用時で約360枚(約180分)の静止画/動画撮影が可能だ。

最高1/32,000秒シャッター、14コマ/秒の連写

積層型CMOSセンサーの読み出し高速化でまず注目なのが、超高速の電子シャッターだ。RX10のシャッター最高速は1/3,200秒(絞りF8以上)。電子シャッターはなくメカシャッターのみだ。しかしRX10 IIではメカシャッターに加え電子シャッターも持ち、最高1/32,000秒を可能にしている。

この最高速はRX100 IVと同じだが、ワイド側の開放F値がF1.8のRX100 IVに対し、RX10 IIはズーム全域でF2.8。ベース感度のISO100では、日中の快晴でも1/32,000秒には届かない。とはいえ、明るい場所でも思い切って絞りを開けられる安心感は大きい。

ズーム全域でF2.8の明るさと、1/32,000秒の超高速シャッターを持つ。またRX100 IVのベース感度はISO125だが、RX10 IIのベース感度はISO100だ。
シャッターは最高1/3,200秒までのメカシャッターと、最高1/32,000秒を実現する電子シャッター。どちらかに限定もできるし、カメラ自動で選んでくれるオートも設定もある。

また、あえてアンダーに撮って、大きなボケとハイライトの階調を活かす表現もあるだろう。さらにISO感度を上げて、超高速シャッターで撮影する方法もある。しかも連写は最高14コマ/秒。高速シャッターと高速連写を活かして、一瞬のチャンスが狙えるのだ。

迫力のスーパースロー動画。4K動画記録も

960fpsのハイフレームレート(スーパースローモーション)動画記録も高速読み出しの恩恵だ。最大40倍になり、わずか2秒の出来事が80秒で再生される。瞬間の動きをじっくり観察でき、噴水から勢いよく出る水や、昆虫が飛ぶ瞬間など、肉眼ではわからない世界が見られる。

モードダイヤルをHFRにすると、スーパースローモーション動画が撮影できる。
フレームレートは240fps、480fps、960fpsの3種類。最も遅くするには、960fpsを選択する。

こちらもRX100 IVと同じく、MOVIEボタンを押してから録画がスタートする「スタートトリガー」と、あらかじめスタンバイ状態にしておき、MOVIEボタンを押すと、その2秒前が記録される「エンドトリガー」が選択できる。RX10 IIはRX100 IVに比べてズーム倍率が高いので、望遠の画角を活かしたスローモーションが撮影できるのも特徴だ。

スタートトリガーは動きのタイミングがつかめる撮影に向いている。また昆虫が飛ぶ瞬間など、いつ起きるかわからない撮影では、エンドトリガーが有効だ。

動画はもちろん4K記録に対応。積層型CMOSセンサーのおかげで、画素加算のない全画素読み出しが可能だ。ジャギーのない、滑らかな高画質4K動画が撮影できる。しかも最長約29分の4K動画記録も実現。本格的な4K動画撮影が、小さなバッグに入ってしまうほどコンパクトなカメラで楽しめる。

積層型CMOSセンサーの大きなメリットである4K動画。全画素読み出しで最長29分の撮影ができる。フォーマットはXAVC S。
100Mbpsの4K動画を撮影する場合は、U3のSDカードが必要だ。

特徴的なマニュアル操作部

撮像素子は、バッグのポケットに入るほど小さいRX100 IVと同じく1.0型を採用。だが24-200mm相当でズーム全域F2.8の大口径高倍率ズームレンズを搭載し、RX100 IVより大柄ながら、一眼レフライクなデザインで本格派の雰囲気が漂う。グリップが大きく、しっかりしたホールディングができるのもポイントだ。

注目なのがレンズ鏡筒だ。MFレンズを思わせる、昔ながらの絞りリングを搭載している。絞りリングを回しながら露出や被写界深度のコントロールをするのは、いかにもカメラらしくて楽しい。1/3段ずつクリックがあり、感触も良好だ。しかも、このクリックはオフにしてフリーにすることも可能。これは動画撮影用だ。

鏡筒は大きなマニュアルリングと絞りリングを持ち、マニュアル操作が楽しめる。
鏡筒の底面側に、絞りリングのクリックをフリーにするレバーを持つ。クリックをオフにするとフリーになり、動画撮影時にスムーズで音のしない絞り操作が行える。

また、大型のマニュアルリングも持ち、AF時はズームリング、MF時はピントリングになる。ズームレバーによるズーム動作はスピード設定(標準/高速)ができ、マニュアルリングにズーム機能を割り当てることもできる(スタンダード/クイック/ステップ)。

AFは新たにファストインテリジェントAFを採用し、ズーム全域でスピーディーだ。近距離撮影にも強く、ワーキングディスタンスはワイド端で3cm、テレ端でも25cmだ。近距離から一気に遠くにピントを合わせるときでも速くてスムーズ。快適な撮影ができた。

フォーカスモードダイヤル。DMFはAF合焦後に切り替え操作なしでMF可能なダイレクトマニュアルフォーカスだ。
Fnボタンを押すと、ドライブやISO感度、測光など、機能の変更をスピーディーに行うことができる。αシリーズにも通じる、ソニーお馴染みのボタンだ。

チルト式モニター搭載。EVFも性能アップ

背面液晶モニターは約122.9万ドットの3.0型エクストラファイン液晶。ARコートが施され、日中の屋外でも見やすい。また上方約107度、下方約42度までのチルトも可能。ハイアングルやローアングル時に威力を発揮する。

液晶モニターはチルト式。ローアングルやハイアングルに便利だ。動画撮影でも有効だろう。

内蔵EVFも進化した。RX10は144万ドットの「OLED Tru-Finder」だが、RX10 IIは235万ドットの「XGA OLED Tru-Finder」。高精細になり、快適な視認が得られる。液晶モニターも見やすいが、しっかり構える際は、やはりEVFが有効だ。

コンパクトカメラのEVFはオマケ程度と言われてきたなか、RX10 IIのXGA OLED Tru-Finderはとても見やすい。レンズ交換式のミラーレス機を使っている感覚だ。

本格機能が盛りだくさんの1台

これまでレンズ一体型で一眼レフライクなデザインのカメラは、欧米では人気があるものの、日本国内では今ひとつ盛り上がりに欠けていたように感じていた。しかしRX10 IIは、1.0型CMOSセンサーと24-200mm相当でF2.8の大口径高倍率ズームレンズを搭載し、ボディはマグネシウムだ。

手に取った印象はガッチリしていて頼もしさと高級感が伝わってくるもので、防塵・防滴構造とは呼んでいないものの、水滴やホコリが侵入しにくい構造を採用している。ボタンやレバー、ダイヤルなど、各操作部も扱いやすく、スーパースローモーションや本格的な4K動画にも対応している。

電源オフ時。
電源オン、24mm相当。鏡筒はあまり伸びない。
電源オン、200mm相当。テレ側にズーミングすると鏡筒が伸びる。200mm相当のF2.8としてはコンパクトだ。
レンズフードを装着した状態。
マルチインターフェースシューを搭載。外部フラッシュや外部マイクなどの装着ができ、幅広い撮影が可能になる。
上面の液晶パネルも本格派。暗い場所ではバックライトも嬉しい。またRX10と同じく、親指1本で露出補正が可能。シャッターボタンと同軸には、電源レバーとズームレバーを備える。またC1のボタンには、機能の割り当てができる。

RX10 IIは、写真にも動画にもこだわり、しかも携帯性も重視したい人に魅力的なカメラに仕上がっていると感じた。では気になる画質はどうなのか、それは次回の実写編でお届けする。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。