私はこれを買いました!

星景撮影でのピント合わせから解放された

SAMYANG V-AF 35mm T1.9(茂手木秀行)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2025年に購入したアイテムを1つだけ紹介していただきました。(編集部)

星景撮影で実感したフォーカスメモリーの威力

今年1番のお気に入りはこれですよ、これ!「SAMYANG V-AF 35mm T1.9」です。このシリーズはシネマレンズに分類されて動画向きってなってるんですが、僕が気に入ってるのはそれもあるけど、1番はフォーカスメモリーが搭載されてること!

レンズ鏡胴まんなかあたりに丸いボタンがあるでしょ? これを長押しすると現在のフォーカス位置がメモリーされるんです。そこからピントを変えても、もう1度丸いボタンを短押しするとメモリーされたフォーカス位置を再現してくれます。動画だと近景から遠景に一気にピントを変える時に便利です。まあ、それも便利に使ってますけど。

僕が嬉しいのは無限遠を正確に再現できること! ご存じのとおり現在のAFレンズは無限遠が固定されてませんよね。なので、星景写真を撮る時、毎回ピント合わせをしなきゃならないわけです。

で・す・が。このフォーカスメモリーを使えば、星のピント、つまり無限遠を正確に再現できるってわけです。

星景写真を撮る時にまずピント合わせをしても、ヒーターをつけたり、カメラを移動させたりしてるうち、ピントが狂ってしまうことがしばしば。だから毎回ピントを確認します。レンズ交換したら尚更ですよ。これが煩わしいんです。それがフォーカスメモリーで解決しちゃうんですね! スポーツ撮影の時なんかの置きピンにももってこいです。

そのほか、動画レンズならではの特徴を備えてますが最も実用的にありがたいのは、シリーズ6本の重量と大きさがほぼ同じであること。動画ではジンバルをよく使いますが、レンズ交換をしてもバランスの取り直しが不要です。これね、星景写真でもカメラを赤道儀に載せるからバランス取るの一緒なんです。

以上、星景写真撮影時の使い勝手がピカイチなんですよ。

肝心の光学性能はというと、超高性能ってわけではないですがまずまずお値段以上かな。少々歪曲収差が大きめなので建築写真には向かないけど、そのほかのジャンルでは気にならないでしょう。星景写真をはじめとするピントに敏感なユーザーにおすすめの常用レンズです。

海上に浮かぶ夏の天の川中心部。赤い星雲M8やいて座の星の並び、入り組んだ天の川の暗黒帯がよく写っている。晴れ間を狙って手軽に撮影できるのはフォーカスメモリーのおかげだ。星景写真で一番手間のかかる作業が省略できるのだ
ソニー α7C/SAMYANG VAF 35mm T1.9/35mm/マニュアル露出(20秒、F2.5)/ISO 4000

近況報告

デジカメ Watchで「クルマとカメラ、車中泊」好評連載中。2025年年末は札幌出張。往路はフェリーで向かい、帰りは東北旅行をしつつ、自走して帰ってくる予定。久しぶりのカーフェリー、そして冬の東北旅行にワクワクしている。温泉宿も探しておかなくちゃ。

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。ニコンカレッジで、星景写真講座を担当。星空に興味ある方は「こちら」へ