新製品レビュー
動物写真家から見た「SONY RX10 IV」の魅力
動くリスを追えるほどに向上したAF性能 完成度が増した1インチ高倍率ズームモデル
2017年10月30日 12:00
動物写真家の私にとって機材の重量はとても大きな負担である。重ければ重いほど撮影までのフットワークは悪くなり、それは写真にも影響が出てしまう。
「よいしょっ」と大きなザックを降ろして、「はぁーっ」と言ってから三脚を立てて、レンズを乗せてからようやく撮るような写真と、見てすぐシャッターを押す写真では、全然別のものができあがる。
出会った喜びとか、見つけた可愛らしい仕草とかは、身軽でないと表現できないと思っている。しかし、そういう機材が今までは無かった。
身軽に動物写真が撮れる機材は、私たちがずっと求めてきたものなのだ。
見つけたらすぐ撮れる身軽さ
動物写真は被写体を見つけてから、シャッターチャンスまでの時間はほんのわずかしかない。ほとんどの場合は見つけて、即撮影をしないと撮れない。
しかし、一眼レフカメラ用の600mm F4と三脚をいつも持ち歩くなんてことはできない。「あの時にあのレンズを持っていれば……」という後悔は、動物写真を撮ったことのある者なら誰もが持っているだろう。
ソニー「RX10 IV」(DSC-RX10 IV)は35mm判換算24-600mm相当の光学ズームと、全画素超解像ズームというデジタルテレコンも併用すれば、24~1,200mm相当までの撮影がこれ1つで可能になる。
そして、約24コマ/秒の高速連写とファストファイブリッドAFによる高速AF追随が可能で、動物写真に必要な機能はすべてこのボディに入っていると言って過言ではない。
長野県の山中で出会ったサルの親子。見つけて、すぐに首から下げていたカメラを向けることができた。見つけてから600mm相当での撮影まで、ほんのわずか数秒。一眼レフカメラ+600mm F4と三脚ではとてもこんな瞬間に対応できない。
高速AF、高速連写
日本の動物写真で一番ピント合わせに困る被写体はリスなどの小動物だろう。小さい上に動きが速い。超望遠レンズでさらに近接での撮影なので難易度は非常に高い。リスがAFで安定して撮れるようになったのは、プロ用一眼レフカメラでもつい最近のことである。
RX10 IVは高速性と追随性に優れた位相差AFと、精度の高いコントラストAFを併用したファストハイブリッドAFで0.03秒の高速AFが可能になっている。なので、リスの動きに十分AFが追随できている。
使用した感じでは、ソニーα9やプロ用一眼レフカメラにはさすがに負けるものの、高速AFをうたう中級一眼レフカメラには十分匹敵した高速AF撮影ができるだろう。
並み居るミラーレスカメラよりは明らかに早い。なので値段を考慮したAF性能のコストパフォーマンスでは文句無しに最高だと言える。実勢価格19万円ぐらいのカメラで走るリスが撮れるようになるなんて驚きでもある。
約24コマ/秒の高速連写はプロ用一眼レフカメラを超える性能だ。クルミを採ったリスが持ち帰る素早い動きをこれだけの間隔で押さえることができる。秒12コマのカメラだったら、この半分しかないことになる。
しかもこの約24コマ/秒をブラックアウトフリーのファインダーで追い続けることができる。一度でもこの撮影をしてしまうと、正直10コマ/秒程度でブラックアウトで像が消失する撮影に戻るのは辛くなってしまうことだろう。
AFフレーム選択
リスのような小動物はとにかく動きが速いのに加え、木の上では枝被りがあるので、AFセンサーを被写体に正確に向けることが難しい。なので撮影中に頻繁にフォーカスエリアの設定を変える必要がある。
またAFを止める必要もあるが、レンズ横のフォーカスホールドボタンで可能だ。十字キーでの移動の他に、液晶モニターでのタッチ操作でフォーカス位置をスライドすることも可能になり(タッチフォーカス機能)、AFフレームの選択の自由度は非常に高い。
シャッターボタンの近くにC1、C2と2つのカスタムボタンがあり、それぞれ好きな機能を設定できる。特にC2は押しやすいのでフォーカスエリアセレクトに私は設定している。またC1にはISO感度を設定し、必要以上に感度を上げすぎないように、こまめに感度設定を変えられるようにしている。
高倍率ズーム
森の中でサルの群れを見つけた。この写真の中央部に1匹と左側の木の上に2匹確認できる。
これが24mm相当の画角。
中央部のサルにぐぐっとズームしていき、全画素超解像ズームまで使うとここまで寄ることができる。
見つけてから、このアップを撮れるまでの時間は、すべてのカメラの中で最短ではないだろうか。
RX10 IVは電源OFFの状態から、電源スイッチを入れて望遠端までズームするのにかかる時間は4~5秒。その間にワイドから被写体をズームしながら見ていけるので、一発で被写体を捉えることができる。
ズームは、シャッターボタン周囲のレバーによる電動ズームだと人差し指1本で操作でき、ズームリングの回転でも一般レンズのように操作できる。
被写体を見つけて捉えてから、ゆっくりと近づき作品を狙う。大型の600mmレンズと三脚での移動はとても大変だったが、このカメラなら身軽に静かに動くことができる。そしてすぐに撮影に適した距離に入っていける。
レンズ描写
いくら高倍率なズームレンズでも描写が悪ければ写真としては物足りない。動物写真は超望遠がメインになるため、かならずボケが画面の中に占めることになるといっても良い。
なので、ボケ味の美しさがとても重要だ。背景に何があるのかがうっすらと判り、生息環境やその雰囲気が想像できることで、写真にストーリーが生まれる。
RX10 IVのZEISSバリオ・ゾナーT*レンズはただピントが良いだけでなく、ボケ味の良さも魅力なレンズである。このような写真で二線ボケとか、うるさいボケが出ると写真を損なってしまうが、美しく優しいボケ味で、被写体を引き立ててくれる。
手ブレ補正と電子シャッター
縦に外周をガリガリとずっとかじってクルミを割り、ようやく中の実を味わえる。
最大4.5段分の手ブレ補正とショックがない電子シャッターの組み合わせは、超解像ズームを併用した1,200mm相当の撮影を手持ちで実現させてしまう。
1,200mmの撮影というと、一眼レフカメラのミラーショックは論外で、ミラーレスカメラのフォーカルプレーンシャッターのショックですら、撮影結果に影響を与えてしまう。
私が本格的に1,200mmの撮影をするときには、レンズとボディの両方に三脚をつけることも多かった。そんな撮影が手持ちでこれだけの解像力で撮影できてしまうのだ。
静音性
小鳥の撮影ではブラインドに入って身を隠して近接することが多々ある。一生懸命身を隠しても、シャッター音がうるさければ鳥は反応して警戒してしまう。RX10 IVは無音シャッターに設定できるので、こういう撮影が安心してできる。
ブラインドでなく、歩きながらの鳥の撮影でも、鳴き声でコミュニケーションをとっている生き物に対して、けたたましい連写のシャッター音をたてるのはどうしても好きになれない。撮影者はできるだけ謙虚に環境に溶け込むべきだからだ。無音シャッターのカメラは動物写真には待望のものなのだ。
Wi-Fi機能
動物写真ではカメラを固定し、リモートコントロールで離れて撮影することもある。ワイヤレス接続機能はそれがカメラとスマホだけで可能になり、とても便利になった。
RX10 IVのWi-Fiリモートは、30mぐらいの距離まで動作可能。そしてとても素晴らしいのが、切断しても少し近づくだけで接続が回復する。そしてWi-Fi接続でも連写が可能だ。この2点でとても動物遠隔撮影に向く。スマホとの接続も写真のようにNFCで瞬時に行ったり、QRコードで簡単に行える。
4K動画
まとめ
このカメラで動物写真を撮っていると、まるで超望遠レンズでスナップをしているような感覚になる。「いいなあ」と思ったら、すぐカシャッと撮れるのだ。
人物の撮影でも三脚についた大型カメラで撮られるのと、小さなライカのようなカメラでスナップされるのとでは、出来栄えは全然変わる。小さいカメラで身軽に撮るからこそ撮れる写真もあるからだ。
私が動物写真家志望の若者だったら、この機動性と速写性を生かしてRX10 IVのようなカメラをあえて使う。無理してお金を貯めて200万円ぐらいかけたボディとレンズで撮るのと、まったく違う写真が撮れるからだ。
後発の者が先人達と同じことをやっても意味はない。求められているのは、よりシャープで高解像な写真ではなく、今まで見たことがない写真だからだ。
このカメラは必ずや動物写真を変える。このカメラを持って自然が残る公園や森を散歩するのは、とても上質な大人の趣味になることだろう。
動物写真に向いているということは、似たような被写体といったらちょっと語弊があるが、同様に動きが早く予測がつかない、人間の子ども達の撮影にも向いている。公園でも運動会でもバレーやピアノの発表会でも、このカメラはなまじの一眼レフカメラ以上の活躍をしてくれるだろう。