新製品レビュー
ソニーα7R II(実写編)
高解像と高感度は本物か、裏面照射4,240万画素を試す
Reported by 永山昌克(2015/8/28 08:00)
ソニー「α7R II」は、35mmフルサイズでは初となる裏面照射型の約4,240万画素CMOSセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。実売40万円を超える価格は万人に手ごろとはいえないが、発売以来、愛好家層を中心に好評を博している。
いちばんの見どころは、2013年に発売された約3,640万画素機「α7R」から画素数を大きく増やしながらも、裏面照射構造によって高感度化や低ノイズ化を図ったこと。AFのスピードアップや手ブレ補正の内蔵によって使い勝手が進化したこともポイントだ。
前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実際の撮影におけるインプレッションと実写画像についてお伝えしよう。
遠景の描写性能を確認する
まずは遠景描写のチェックを兼ねて撮影した、高台からの全景ショットを見てみよう。1枚目は標準ズーム「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」のワイド端を、2枚目は単焦点レンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」をそれぞれ使用。絞りを変えながら複数枚を撮影し、特にシャープに写った絞りF11のカットを掲載した。
どちらも画像中央部は精細な描写となり、遠景にある建物の屋根や外壁、草木などがきっちりと再現されている。A3以上に大きくプリントして鑑賞する用途にも打ってつけだ。
感度別の描写性能を検証する
感度は標準でISO100-25600に対応し、拡張設定として最低ISO50、最高ISO102400が選べる。次の写真は、感度を変えながら同一のシーンを撮影したもの。高感度ノイズリダクションは、初期設定の標準を選択した。
高感度ノイズは背景となる赤いバック紙の部分を見ると分かりやすい。また地球儀の文字部分では、ノイズリダクションによる解像の低下を確認できるだろう。
ISO800くらいまではノイズ感はあまり気にならず、ISO1600~6400あたりでも特に汚い印象は受けない。ISO12800を超えると徐々にざらつきが目立ちはじめるが、それでも発色や解像の低下は最小限に抑えられている。光を効率よく集める裏面照射構造のメリットが生かされた優秀な高感度画質といっていい。
4K動画撮影を試す
動画の記録方式は「XAVC S 4K/XAVC S HD/AVCHD/MP4」の4モードが用意され、「XAVC S 4K」を選ぶと、4K解像度(3,840×2,160)での動画撮影が行える。4Kでのフレームレートは30pまたは24p、ビットレートは約100Mbpsまたは約60Mbpsが選択でき、連続撮影時間は最長29分となる。
下は、30p/60Mbpsで撮影した4K動画と、そこから1コマを静止画として切り出したものだ。カメラ側に静止画切り出し機能はないので、ここではLightroomを使ってキャプチャした。草の1本1本までをシャープに描く高解像を確認できる。
作品集
クリップオンタイプの外部ストロボを花の上から照射することで背景を暗く落とし、植物の鮮やかな色彩と生き生きとした形状を浮かび上がらせた。
カメラを三脚にセットして8秒の低速シャッターで撮影。ホワイトバランスは蛍光灯を選び、日没直後の青っぽい空色をいっそう鮮やかに再現している。
海沿いの公園にて、逆光になるカメラポジションを選択し、展望塔の階段と人々の姿をシルエットとして表現した。カメラを構える男性や手を振る人の女性の様子など、細部までしっかり捉えることができた。
真っ青な空とエメラルドグリーンの海が落ち着いた色になるように、マイナスの露出補正を加えて暗めに撮影した。シャッターチャンス優先のため水平線がやや傾いたのは仕方ない。
発色の調整機能であるクリエイティブスタイルから「白黒」を選んだうえでコントラストを+3にセットし、モノトーンながら夏らしい雰囲気を出してみた。
シャッター速度を25秒に設定し、車のライトを光跡として記録した。残念ながら、こうした光跡撮影に役立つ同社アプリ「ライトトレイル」には非対応なので、ここでの撮り方は通常の長時間露光である。
朽ちて味わいを醸し出しているサンバートライを真横から撮らせてもらった。質感をリアルに描写するために、絞り値を適度に絞りつつ、斜め上からストロボを照射。マニア心をくすぐる廃車写真となった。
クリエイティブスタイルの「クリア」を選択することで、晴天の空を濃紺に近い色で写し、赤いタコの山や白い入道雲とのコントラストを明瞭にした。
機動力と高解像、高速性を兼ね備える
今回の試用ですべての機能や性能を体験できたとはいえないが、カメラとしてのポテンシャルの高さは十分に感じられた。特に画質に関しては、ディテールまでをくっきりと表現できる精細感の高さと、ISO3200や6400でも実用的な高感度画質に大いに惹かれた。
気になった点は、今回使った標準ズーム「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」は周辺画質にもの足りなさを覚えること。α7R IIが持つ高解像性能をフルに引き出すには、見合った単焦点レンズを選んだほうがいいだろう。
α7R IIの魅力は、機動力と高解像、高速レスポンスを兼ね備えていることだ。と同時に、レンズ性能が如実に表れるため、使えば使うほど、より高性能なレンズが欲しくなる“危険な”カメラでもある。もちろん、高性能レンズでなくてもカメラや写真の価値が下がるわけではない。さまざまな撮る楽しみが広がっている、懐の深いカメラといっていい。