新製品レビュー

ソニーサイバーショットRX100 IV(実写編)

新EVFやスーパースロー動画も見逃せない、1型コンパクト最新版

RX100 IIIのデザインと基本スペックを踏襲しながら、世界初の積層型CMOSセンサーを搭載したソニーサイバーショットRX100 IV。従来比5倍以上の高速化を実現し、1/32,000秒の超高速シャッターや4K動画、960fpsのハイフレームレート(スーパースローモーション)動画記録などを可能にしている。

またポップアップ式のEVFも進化し、235万ドットのXGA OLED Tru-Finderを搭載。ツァイスT*コーティングを施し、高精細でクリアな視界が得られる。従来のRX100シリーズから表現力を大きくアップさせたカメラだ。

24-70mm相当F1.8-2.8レンズを継承

レンズはRX100 IIIと同じ24-70mm相当のツァイスVario-Sonnar T*レンズ。コンパクトデジタルとしては、ズーム倍率は控えめだ。特に最近のコンパクトデジタルは望遠に強い機種が目立つため、やや物足りないように感じる。とはいえ、街中のスナップでは気にならなかった。

それよりも、バッグのポケットに入るほど小さいので、さり気なく撮影できるのがありがたい。大きめの1型CMOSセンサーでズーム倍率を上げると、ボディの大型化に繋がるはず。携帯性と機動力を重視するのがRX100 IVの使いこなしのひとつだと感じた。

画角変化

広角端(24mm相当)
望遠端(70mm相当)

描写は、ズーム全域で絞り開放から高い解像力を持つ。画面周辺でも中心部との画質の差が少なく、ワイド端では像が流れることもない。テレ側も甘さがなく、優秀なレンズだ。近接撮影では、やや柔らかくなるものの、ボケ味は自然。逆光でもフレアやゴーストが発生しにくく、コントラストの高い写真が撮れるのは、さすがツァイスT*レンズだ。

コンパクトデジタルでよく使われる1/1.7型や1/2.3型より大きい1.0型なので、高精細で階調も豊かだ。特にシャドーから中間にかけて滑らかに再現し、ハイライトの階調も豊富。1.0型の高画質を存分に味わえる。

高感度画質をチェック。歪まない電子シャッターもテスト

1.0型と大きな撮像素子は、高感度でも有利だ。ベース感度のISO125と、ISO200からISO12800まで1段ずつ変えて撮影したところ、ISO800までは常用域。ISO1600は拡大するとやや高感度らしさを感じるものの、十分実用の範囲内。ISO3200やISO6400でも、拡大しなければ高感度とは思えない仕上がりだ。ISO12800は、さすがに粗さが目立つものの、どの感度でもシャドー部が浮くこともなく、メリハリのある写りが得られる。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

アンチディストーションシャッターもテストしてみた。ここで比べたのは、一般的なスマートフォンの内蔵カメラ。メカシャッターを持たないので、走る電車の窓やドアは見事に歪んでいる。RX100 IVは、メカシャッターにならないように、メニュー画面から電子シャッターのみに設定。同じように電車を撮ってみると、窓もドアも歪まず撮ることができた。積層型CMOSセンサーの高速読み出しは威力絶大だ。

アンチディストーションシャッターの効果

参考:スマートフォンによる撮影で動体が歪んだ例
RX100 IVの電子シャッター撮影

4K動画とスーパースロー動画を試す

RX100 IVの特徴である、動画も見てみよう。RX100シリーズ初の4Kに対応している。画素加算のない全画素読み出しが可能だが、連続撮影時間は最大約5分。例えばコンサートやスポーツをすべて連続で撮影する、ということは不可能だが、日常や旅行などを高画質に記録するのに便利だ。カメラが小さいので、4Kを意識することなく、気軽に撮影できる。なおこれは前回もお伝えしたが、100Mbpsで撮影する場合、SDカードはU3を使用する。

そしてもうひとつ、960fpsのハイフレームレートだ。ここではグラスにジンジャーエールを注いで、液体の動きをスローモーションで撮影した。スローで見てみると、液体の動きや泡の様子がよくわかる。これはMOVIEボタンを押して記録を開始するスタートトリガーで撮影。ハイフレームレートは肉眼を超えた世界が記録できるため、被写体の動きとMOVIEボタンを押すタイミングを合わせるのが難しい。何度かトライするのがおすすめだ。

さらに高まった完成度。RX100は“選べる”シリーズに

小型ながら、高画質の写真と高画質動画、そしてスーパースローモーションが撮影できるRX100 IV。高速AFの「ファストインテリジェントAF」により、ストレスのないAF速度を実現している。ただコントロールリングやコントロールホイールを回したとき、絞り値など表示の反応が遅いのが気になった。これが改善されると、より使いやすくなるだろう。

とはいえ、その他のレスポンスは良好。完成度の高さを感じた。スマホからステップアップはもちろん、デジタル一眼レフユーザーのサブ機としても注目したい。しかも画面のアスペクト比は、一般的なコンパクトデジタルに多い4:3ではなく3:2なので、デジタル一眼レフと併用しても違和感なく扱える。カメラバッグや上着のポケットに入れておいて、気軽に作品が撮れるカメラだ。

なおRX100 IVはRX100 IIIの後継機ではなく、RX100シリーズは4機種すべて現行モデルとしてラインナップしている。自分にとって必要な機能を備えているか確認して、あとは予算に応じた選択をするのがいいだろう。

作品集

テレ側70mm相当。高倍率ズームと異なり、極端な画角の変化は不可能だが、見た目に近い、自然な写真が撮れる。

ISO125 / F5.6 / 1/160秒 / 25.7mm(70mm相当)

ワイド側24mm相当で近接撮影。絞り開放では、わずかに柔らかくなり、優しい雰囲気の写真になる。ボケも自然だ。

ISO125 / F1.8 / 1/200秒 / 8.8mm(24mm相当)

輝度差があるが、壁のトーンと窓のハイライトのトーン再現は申し分ない。1.0型のCMOSセンサーと、画像処理エンジンBIONZ Xのおかげだろう。

ISO125 / F4 / 1/160秒 / 23.0mm(63mm相当)

1.0型は一般的なコンパクトデジタルの撮像素子より大きいとはいえ、APS-Cクラスよりは小さいため、大きなボケを得るのは難しい。だが被写体に迫って絞りを開けるとしっかりボケる。しかもボケすぎないので、その場の状況がわかる写真になる。

ISO125 / F1.8 / 1/3,200秒 / 8.8mm(24mm相当)

真夏の強い光。こんな状況でも、1/32,000秒まで選べるRX100 IVならF1.8絞り開放で撮れる。シャッター速度は1/12,800秒に設定。小さなコンパクトカメラとは思えない写真が撮れた。

ISO125 / F1.8 / 1/12,800秒 / 8.8mm(24mm相当)

ISO1600に設定。拡大するとやや高感度らしさがあるものの、十分実用的なのがわかる。手ブレ補正機構も備えているので暗所にも強い。

ISO1600 / F2.8 / 1/50秒 / 25.7mm(70mm相当)

ISO125、F1.8、1/32,000秒の世界。まるで夜のような不思議な写真になった。夏の太陽は位置が高いため、液晶モニターをチルトさせて、レンズをほぼ真上に向けている。太陽の強烈な光が入っているが、フレアは出ていない。ツァイスT*コーティングが施されたレンズの高い描写力を感じる。

ISO125 / F1.8 / 1/32,000秒 / 8.8mm(24mm相当)

ビルの窓に夕暮れ間近の光が当たっている。微妙な階調を、1.0型CMOSセンサーとツァイスT*レンズが見事に再現した。作品が撮りたくなるコンパクトデジタルだ。

ISO125 / F5.6 / 1/160秒 / 8.8mm(24mm相当)

営業していないバーの窓にミニボトルを見つけてクローズアップ。思い切って露出を切り詰めた。携帯性に優れたRX100 IVなら、撮りたいときにすぐ撮影できる。

ISO125 / F1.8 / 1/60秒 / 8.8mm(24mm相当)

シャッター速度は1/25秒。EVFを使ってしっかりカメラを構えて、手ブレ補正も活かすことでシャープに撮れた。

ISO125 / F4 / 1/25秒 / 16.2mm(44mm相当)

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。