新製品レビュー

ソニーFE 40mm F2.5 G

気分を盛り上げる操作性 自然な解像感とボケ味も魅力

ソニーの「FE 40mm F2.5 G」は、“ソニーの光学テクノロジーを集約させ、優れた描写力を実現させた”というソニーGレンズに属する単焦点レンズです。2021年4月に登場した、鏡筒デザインをほぼ同じくする三兄弟レンズのひとつで、他には「FE 24mm F2.8 G」と「FE 50mm F2.5 G」があります。

ポイントは、24mm、40mm、50mmと連なった焦点距離のなかで、真ん中が40mmに設定されていること。普通、ここには35mmが設定されるところでは……と考えてしまいますね。今回は、ちょっと聞き慣れない、でも実は玄人好みで昔から愛用者も多い画角である、本レンズの魅力を紹介していきたいと思います。

小柄なのに操作性良し! さすがGレンズと言いたい

本レンズの外観上の特徴はと言えば、まずは小さいこと。サイズは最大径が68mmで、長さは45mm、質量は約173gとなっています。68mm×45mmというサイズは三兄弟に共通の仕様で、質量こそ微妙に異なりますが、フィルター径も49mmと共通になっています。

冒頭で「鏡筒デザインをほぼ同じくする三兄弟レンズ」なんて書き方しましたが、仕様を比べると、鏡筒は同じ部材を使っているように見えますね。共通パーツを多くすることで製品価格を抑えたり、レンズを交換しても使い心地が変わらないよう配慮したりというのは、近年の各社ミラーレスカメラ用レンズに見られるアプローチでもあります。

また、小さめのフィルター径で揃えてくれたのは、フィルター購入時のコストや使いまわしのことを考えると、リーズナブルで助かります。名前がαになる前の初期NEXシリーズでも、多くのレンズをフィルター径49mmに揃えることにより、同様のメリットで訴求していました。

同梱のレンズフード(ALC-SH166)を装着したところ。いわゆるフジツボ型に近い形状です。レンズ本体の前玉に凹レンズが採用されている上に、レンズ前面が平坦なデザインですので、こうした個性的なフードを装着することで趣がグッと上がります。こうした雰囲気あるレンズフードを用意できちゃうのは、単焦点レンズならではの良さですね。

ご注目ください。この小型のレンズには、フォーカスホールドボタンとフォーカスモードスイッチが装備されております。フォーカスモードスイッチはまだしも、フォーカスホールドボタンの装備は、このクラスのレンズではなかなか贅沢な仕様と言えるのではないでしょうか?

ちなみに、フォーカスホールドボタンには、フォーカスホールド以外にも様々な機能を割り当てることができます。瞳AFの起動もできますし、「グリッドライン」を表示して、すばやく構図を確認するような使い方もできます。

絞りリング、イイですね。絞りリングがあると、コマンドダイヤルでの絞り調整よりも「自分の意志で露出を決めている」感覚を味わえます。造りのしっかりしたレンズですので、クリック感に滑らかな高級感があり、操作していて心地よさを感じることができます。クリックはスイッチでOFFにすることもできるため、シームレスに絞り値を変化させたい動画撮影時にも活躍してくれます。

ところで、開放F値が2.5というのは少し珍しいですね。F2.8と比べると1/3段明るい程度で、それほどの違いはないと思いますが……。勝手な想像ですけど、「FE 24mm F2.8 G」と鏡筒を揃える前提だと、40mmや50mmでは鏡筒内のスペースに余裕ができるため、「せっかくなら」と、わずかにせよ明るく設計してくれたのかもしれません。まあ確かにレンズは少しでも明るい方が気分も明るくなるので、ここは素直に喜びたいと思います。

40mmの画角を深読みしてみよう

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F4・1/200秒)ISO 100

焦点距離40mm、イイですね。筆者はこの焦点距離の画角とても好きです。好きな理由は、この画角が人の視角に近いと言われていること。「50mmは人間の視角に近い標準レンズ」「35mmフィルムやフルサイズデジタルカメラのフォーマットの対角線は約43mmなので、その焦点距離こそ真の標準レンズ」など諸説あるくらいで、対角線の長さと焦点距離が等しいとなぜ真実なのかは分かりませんが、実際に使ってみると撮れる写真がことごとく誇張のない自然な雰囲気なのは本当です。

ちなみに「50mmが標準レンズ」とされる理由のひとつには、35mm判を広めたライカの初期モデルに5cm(51.6mm)のレンズが固定されており、ライカを絶対と考えていた後発メーカーが「標準」と位置付けた説が濃厚です。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F5.6・1/250秒)ISO 100

もう、35mmだ50mmだとか悩まず、標準系は40mmレンズ1本に任せちゃいたいくらい。何気ないスナップや、友人との集合写真なんかを、気楽に撮っちゃいたくなりますね。

とはいえ、35mm F1.4や50mm F1.2のような大口径の迫力も、超広角レンズや超望遠レンズで出来るような分かりやすい撮影効果も持ち合わせていない、いわゆる地味なレンズであることも確かです。

だからこそ、ソニーがこうした通好みの目立たない存在のレンズを出してくれたことが嬉しい。最近のソニーは、妙に良いタイミングで、痒いところに手が届く製品を提供してくれるなあ、と思います。

スッキリとした写りで解像感も自然です

絞り開放での描写性能を見てみようと思い、ちょっと中途半端な構図の写真を撮ってみました。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/800秒)ISO 100

さすが“光学テクノロジーの粋を極めた高性能レンズだけに与えられる”という「G」の称号を与えられたレンズです。コニカミノルタ時代(さらにその前のミノルタ時代)からのファンとしては、感動するほど素晴らしい結果です。焦点距離40mmの開放F2.5で撮ってこれなら、実際の撮影においては完璧に問題のない描写性能といえるでしょう。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/2,500秒)ISO 100

色収差の類もほぼ見られず、スッキリとした気持ちのよい写りです。

厳密な話をするなら、極四隅で像のわずかな乱れも見られますが、それはハッキリいって重箱の隅をつつくような話。40mmの画角がもつ自然さを大切にするなら、光学的にもこれくらい「自然」な方が良いと思います。1~2段ほど絞っただけでほぼ完璧な画質に豹変します。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F5.6・1/250秒)ISO 100

G Masterに勝るとも劣らぬ?綺麗なボケ味

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/2,500秒)ISO 100

上位クラスのG Masterが解像感とボケ味を両立させた高性能レンズであることはよく知られていますが、Gレンズに属する本レンズも、それに勝るとも劣らない美しいボケ味を見せてくれます。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/2,500秒)ISO 100

開放F1.2やF1.4といった大口径レンズのような大きなボケこそ得にくいものの、ボケ方にクセがなく素直であるため、被写体の形を残しながら自然に溶け込んでいきます。それでいて合焦面の解像感はあくまで高くシャープなので、自然なボケの中にピントのあった被写体が浮き出るように描き出されるというわけです。

この素直なボケ味は、人の視角に近い40mmという画角と、良く調和しているように感じます。よほどボケ味に造詣の深い方が設計したのかな?なんて考えたくなりますね。

40mmでここまで寄れるのは楽しい!

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/1,250秒)ISO 100

最短撮影距離はAF使用時で0.28m、MFなら0.25mと、標準系のレンズとしてはなかなか被写体に寄って写すことができます。最大撮影倍率はAF時で0.2倍、MF時で0.23倍と、さすがにマクロレンズのようにはいきませんが、十分に被写体を大きく写すことが可能です。

しかし、上の写真を見て気づいたのですけど、背景の玉ボケのなかに、いわゆる年輪ボケがありませんね。3枚の非球面レンズを採用しているというのに、これはスゴイ。

α7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/160秒)ISO 100

被写体との距離によって表現を変えるのが醍醐味の、標準系単焦点レンズとして、十分な近接撮影能力と言えるでしょう。寄っても引いても自然な美しいボケを得られる優れものです。

まとめ

ズームレンズでなければ、特殊な焦点距離というわけでもなく、大口径というほど明るくもない。言うなれば地味な仕様のこのレンズを、わざわざチョイスする理由ってどこにあるのでしょう。

ひとつには、ここまでも散々述べてきたように、画角が人の視角に近く自然であること。自然な雰囲気の写真って、しみじみと長く観ていたくなること多いように思います。35mmでは広くていまひとつ構図をまとめ切れない、50mmには何となく窮屈さを感じる、なんて人には特にオススメの単焦点レンズです。

そしてもうひとつは、最高級というほどではないけど、使っていて満足感が得られる程度の適度な高級感があること。気取ることなく楽しく写真が撮れて、それでいて使う楽しみを感じられるのは大切なことだと思います。操作性の良いフォーカスリングや絞りリングの存在が、そんな気分を盛り上げてくれることでしょう。

24mm、40mm、50mmと揃った三兄弟単焦点レンズ。交換レンズらしく、被写体に応じてレンズを変えるのも、楽しみのひとつですが、α7Cみたいな小型のフルサイズ機とともに1本勝負をキメるというのもありですよね。もちろん気楽な心持ちで。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。