新製品レビュー

iPhone 11 Pro

3眼カメラ化で撮影領域が拡大 待望のナイトモードも

iPhone 11 Pro

日本で一番人気があるスマートフォン「iPhone」シリーズ。2019年9月20日より最新モデル「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」の3機種がリリースされている。「Pro」の名を冠した2機種が3眼カメラを搭載して話題になったのは記憶に新しい。今回はその中から5.8インチディスプレイモデル「iPhone 11 Pro」をインプレッションする。

主な仕様

CPU:A13 Bionicチップ 第3世代のNeural Engine
RAM:4GB
ROM:64GB/256GB/512GB
外部メモリ:なし
ディスプレイ:5.8インチオールスクリーンOLED、2,436×1,125ピクセル、458ppi、Super Retina XDRディスプレイ
バッテリー容量:iPhone Xsより最大4時間長いバッテリー駆動時間
OS:iOS 13
外形寸法:144.0×71.4mm
重量:188g

ライバル

カメラ機能のスペックという点で、ここ数年iOS機のiPhoneシリーズはAndroid機に後塵を拝している。目立った機能に限定したとしても、複数カメラ搭載、夜間撮影機能などはAndroid機が先行しているのが現状だ。また、先日発表のあったHUAWEI Mate30 Proや、これから登場するGoogle Pixel 4など、ライバルモデルが控えている。

Google Pixel 3(左)と並べて

サイズ・デザイン

昨年モデルのiPhone XSとほぼ同様の大きさで、片手で何とか操作できるサイズ感だが、手にするとズッシリと重さを感じる。6.5インチのディスプレイ採用のiPhone 11 Pro Maxだと226gとなり、長時間の片手使用が難しく感じる人もいそうな重さとなる。

デザイン面では、3眼カメラが特徴的だ。ボディの素材はテクスチャードマットガラスとステンレススチールとなり、磨りガラスのような質感と、メタリックなフレームのコンビネーションとなっている。

カラーはミッドナイトグリーン、シルバー、スペースグレイ、ゴールドの4色をラインアップ。防沫性能、耐水性能、防塵性能はIEC規格60529に準拠のIP68等級(最大水深4メートルで最大30分間)という仕様だ。

18W USB-C電源アダプターが付属するが、iPhone 11 Pro自体の端子は従来と同じくLightningを採用している。

ディスプレイ

iPhone 11 Proは有機ELのSuper Retina XDRディスプレイを採用。解像度は2,436×1,125 ピクセル。昨年モデルからコントラスト比は2倍、最大の明るさは約30%、エネルギー効率も15%アップになったということだ。

3D Touchは廃止され昨年iPhone XRで初搭載されたHaptic Touchを採用した。

カメラ

注目のカメラは3眼となった。画素数はいずれも1,200万。それぞれ35mm判換算で、13mm相当F2.4(Exifを見ると14mm相当)の超広角、26mm相当F1.8の広角、52mm相当F2.0の望遠となっている。インカメラのTrueDepthカメラは1,200万画素で23mm相当F2.2だ。

デュアル光学式手ブレ補正は広角と望遠カメラに搭載。100% Focus Pixelsは広角カメラに。より明るいTrue Toneフラッシュ、最大10倍のデジタルズームも備えた。

3つのカメラの画角比較

超広角、広角、望遠と3つのカメラを切り替えて撮影できるのはなかなか便利である。ブラブラと歩いていても柔軟に被写体への対応が可能だ。

切り替えは画面上に表示されているアイコンをタップして切り替えるか、その部分を指先でドラッグしてシームレスにズーム感覚で画角を変化させることもできる。

広角と望遠では、超広角カメラの像をフレーム外表示して撮影範囲外の部分まで確認できる。

超広角(13mm相当)
広角(26mm相当)
望遠(52mm相当)

超広角(13mm相当)
iPhone 11 Pro / 1/750秒 / F2.4 / 1.54mm(13mm相当) / ISO 20
広角(26mm相当)
iPhone 11 Pro / 1/2,100秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 32
望遠(52mm相当)
iPhone 11 Pro / 1/1,150秒 / F2.0 / 6mm(52mm相当) / ISO 20

ムービーでは画角がやや狭くなるが、超広角カメラでワイド感ある映像を撮影可能だ。

ポートレートモード

iPhone 7 Plusから搭載されたポートレートモードだが、望遠カメラだけでなく広角カメラで背景をぼかせるようになった。撮影時、またはカメラロールからF値を変更してボケ量をコントロールできる機能も健在である。

また、ポートレートライティングもハイキー照明(モノ)エフェクトが追加され、白バックで背景を飛ばした印象のモノクローム写真を撮ることができるようになった。フロントカメラの「TrueDepthカメラ」でも同じことができる。SNSのプロフィール写真に使えそうな新エフェクトだ。

望遠カメラのポートレートモード。手軽に背景をぼかせるのでモデルを浮かび上がらせて撮影できた。肌の明るさ、色合いがよく出ているが、境界の判定が甘い部分がある。

ポートレートモード
iPhone 11 Pro / 1/500秒 / F2.0 / 6mm(52mm相当) / ISO 20

広角カメラでのポートレートモード。背景を大きく入れてぼかせるので周囲の様子も表現できる。しかし被写体に近づきすぎても遠すぎてもポートレートモードが有効にならないので、小さめの被写体では効果を出しづらい印象を持った。

ポートレートモード
iPhone 11 Pro / 1/1,700秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 32

セルフィー

自撮り用のインカメラはよりワイドな画角になった。さらに縦から横位置に構え直すと、自動でズームアウトして画角が広くなる。大勢での記念写真撮影に役立ちそうだ。アイコンをタップして任意に調整することもできる。

ポートレートライティングにはハイキー照明(モノ)エフェクトが追加。背景を白く飛ばしジャケ写のようなイメージの加工が手軽に行える。効果の具合も調整可能だ。

ポートレートモード
iPhone 11 Pro / 1/120秒 / F2.2 / 2.71mm(30mm相当) / ISO 25

セルフィーでスローモーションムービーが撮れるようになった。HDで120fps、4Kなら60fpsで動感ある自撮りができる。

ナイトモード

iPhoneといえば、他社の高機能モデルに比べて暗いシーンでの撮影が弱い印象があったが、新搭載された「ナイトモード」でようやくそれが払拭できそうだ。A13 Bionicとソフトウェアのパワーで、自動的にキャプチャーされた複数枚の写真をうまく合成、処理。手ブレ低減、明暗差、色味調整、ノイズ低減などを施して1枚の写真に仕上げてくれる。

暗いシーンだと自動的に月アイコンが表示されてナイトモードになる。そのアイコンをタップすると露光時間をある程度調整できるスライダーが現れる。撮影中は手ブレしないようにiPhoneを持つようにメッセージが表示される。

この写真では、およそ3秒の露光時間となったがExifでは1/8秒と記録されている。

ナイトモード
iPhone 11 Pro / 1/8秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 1000

昨年までのiPhoneで同様にシーンを撮ると、他社の高機能モデルに比べてなかなか厳しい仕上がりだったが、このモードを使えばキレイな写真を撮ることができる。ただ光源部分に発生しているフレアが気になるところだ。

ノーマルモードで夜間撮影。Exifを見るとISO800で1/25秒となっている。建物はわかるが画面下半分は真っ暗だ。

ノーマルモード
iPhone 11 Pro / 1/25秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 800

ナイトモードのデフォルトで撮影。Exifを見るとISO500で1/4秒という表示。空の雲も判別でき、画面下部の護岸や植物の様子が浮かび上がってきた。

ナイトモード(デフォルト)
iPhone 11 Pro / 1/4秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 500

ナイトモードアイコンをタップして露光時間を最長にした。Exifは変わらない。3秒ほどiPhoneをホールドするようにディスプレイ上に表示された。歩行者のブレ量が露光時間分大きくなっている。暗部がややベタ塗り状になった印象だ。

ナイトモード(露光時間を変更)
iPhone 11 Pro / 1/4秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 500 ※ファイルに記録されたExifデータを表記

作例

カメラ機能に関する最大の魅力は、やはり超広角カメラだろう。渋谷ハチ公前スクランブル交差点でシャッターを切ると、ご覧のように頭上の信号機まで写り込む。iPhoneで広大な画角表現をしたい人にオススメの端末だ。

iPhone 11 Pro / 1/220秒 / F2.4 / 1.54mm(13mm相当) / ISO 20

夜のディスカウントストアを撮った。ミックス光だったが的確なホワイトバランスとなった。色味がやや濃い印象だが、ディテールはしっかりとしている。オートHDRの恩恵で肉眼に近い仕上がりである。

iPhone 11 Pro / 1/100秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 125

レストランのランチプレートを望遠カメラで撮った。フードのシズル感、色合い、コントラストは良好でメシマズ写真を撮ることは難しそうだ。

iPhone 11 Pro / 950秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 32

モデルを超広角カメラであおって撮影。足がスラリと長く表現できた。撮影カットを「カメラロール」の編集でフィルターをかけた。編集機能が充実し、さまざまな効果を直感的に扱えるようになった

iPhone 11 Pro / 1/2,000秒 / F2.4 / 1.54mm(13mm相当) / ISO 20

ポートレートモードは肌の質感表現は向上した印象だ。みずみずしい唇と、クリクリとした瞳の感じがいい

iPhone 11 Pro / 1/120秒 / F2.0 / 6mm(52mm相当) / ISO 25

新機能のナイトモードはiPhoneの撮影領域をグンと拡大してくれる。今まで諦めていたシーンでもシャッターを切ることができるだろう。ただこのカットのように点光源には弱いのでフレアやゴーストの発生には気をつけたい。

iPhone 11 Pro / 1/8秒 / F1.8 / 4.25mm(26mm相当) / ISO 2500

まとめ

3つのカメラを搭載して話題の「iPhone 11 Pro」。特に超広角カメラは広大な空間を封じ込めることが可能なので、風景やスナップ、室内や車内などでの撮影で絶大な威力を発揮することだろう。またナイトモードの効果も絶大で、今まで断念していたシチュエーションでも撮影が可能なったのはうれしいところだ。

ただ描写で気になった点も多い。まずフレア、ゴーストの発生が顕著である。太陽や点光源など強力な光が入るとゴーストが出るのは以前も同じだったが、iPhone 11 Proはそれがさらに増した。クリアな写真を撮るためにはそのような状況を避けたり、十分なハレ切りなどが必須である。撮影中の発熱も気になったが、微妙な重量増も人によっては懸念材料だろう。

それと電車やバスに乗るときに気になったのだが、3眼カメラになって改札などの読み取り機にタッチする際にカメラ部を接触させてしまうことが増えた。ユニットが大きくなった影響だが慎重に扱いたいものである。

iPhoneとして撮影の幅が増えた本機だが、今後のアップデートで提供予定の「Deep Fusion」にも期待がかかる。これはデジタルカメラでいうところのマルチショット合成処理のようなもので、最大9カットもの写真を解析して、高精細かつノイズが少ないカットを仕上げてくれる機能だ。楽しみにしたい。

モデル:川端紗也加
協力:chicama cafe

三井公一

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナー、コンサルティングなどで活躍中。有限会社サスラウ代表。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」などがある。公式サイト:http://www.sasurau.com