新製品レビュー
Google Pixel 4
夜景に強いスマホ再び 進化したボケ機能にも注目
2019年10月30日 12:53
美しいポートレートモードや、圧巻の夜景モードで話題になったGoogleのAndroidスマートフォン「Pixel 3」シリーズ。ついにデュアルカメラを搭載し、性能に磨きをかけて「Pixel 4」「Pixel 4 XL」として登場した。今回は5.7インチディスプレイモデル「Pixel 4」をインプレッションする。
スペック
CPU:Qualcomm Snapdragon 855 2.84 GHz + 1.78 GHz、64 ビット オクタコア
RAM:6GB
ROM:64GB/128GB(Just Black および Clearly White)
外部メモリ:なし
ディスプレイ:5.7 インチ FHD+ フレキシブル OLED(2,160 x 1,080)アスペクト比19:9 444ppi
バッテリー容量:2800mAh
OS:Android 10
重量:162g
ライバル
Pixel 4最大のライバルはやはりアップルのiPhone 11シリーズだろう。35mm判13mm相当の超広角カメラとナイトモード、質感と細部の表現を向上させる技術「Deep Fusion」などの魅力ある機能は、Pixel 4の強力なライバルと言っていい。先行するPixelシリーズを追う状態だ。
サイズ・デザイン
Pixel 4を手にした瞬間、ライバル機と較べて「軽い!」と感じた。ややスリムな形状のおかげで「持ちやすい」という印象を受ける。手に馴染むので落下させる心配も少なそうだ。外形寸法は68.8×147.1×8.2mm。重量は162gとなっており、撮影時の取り回しもなかなか良好である。
デザインはポップな感じ。全体的におとなしく品があるフォルムになっていて好印象だ。黒いフレームが端末外周をグルッと囲んでいてディスプレイと背面を擁している。表面の仕上げはJust Blackのみが光沢感があり、Clearly Whiteや限定色のOh So Orangeはややマットなフィニッシュになっている。
注目のカメラ部はスクエア状のやや隆起したベース部に集約されていて、ライトやセンサー類と共に配置されている。このベース部は黒く仕上げられ、レンズがフラットで目立たないデザインになっているので威圧感はない。
ディスプレイ
Pixel 4のディスプレイはは5.7インチ FHD + フレキシブル OLED。解像度は2,160×1,080ドット。アスペクト比は19:9。リフレッシュレートが最高90Hzに高められ、スクロールなどが高速になっていわゆるヌルヌルした動きを実現している。ディスプレイ表示は十分な明るさを持ち、撮影時でも撮影写真確認時でも不満はなかった。
カメラ
最大のトピックはデュアルカメラ化だろう。前モデルPixel 3シリーズはシングルカメラながらポートレートモードを実現し、素晴らしい夜景モード(Night Sight)でモバイルフォトグラフィー界を驚かせたが、カメラが2つになってそれらにより一層磨きをかけてきた。
カメラは広角カメラが35mm判換算で26mm相当(F1.7 1,200万画素)、望遠カメラが35mm判換算で44mm相当(F2.4 1,600万画素)となっている。両カメラとも光学式および電子式手ぶれ補正機能を装備。前モデルと同じく超解像ズーム、ポートレートモードを引き続き搭載。夜間モード(Night Sight)は星空の撮影さえも可能になった。
またリアルタイムでHDRの効きがディスプレイ上で確認できる。その際に明るさだけでなく暗部のコントロールが可能な「デュアル露出補正」機能が搭載された。撮影時に好みの明るさにコントロールできるのがうれしい。
超解像ズーム
前モデルにも搭載されていた機能だが、デジタルズームとは思えない美しさで定評があった。Pixel 4は望遠レンズを手に入れたのでその画質がより向上した印象を受けた。ノイズ感がどれも少なく、倍率を上げてもディテールを保持していており実用的な仕上がりである。
35mm判換算で26mm相当。建物屋根部分、木々の精細感、空の色などしっかりとした描写になっている。
2倍にして撮影。望遠レンズに切り替わってるが、ディスプレイ上では明示的な切り替えボタンは出ない。タップして下部にズームスライダーを出すか、ピンチインピンチアウトでのズーミングとなる。シームレスにカメラが切り替わるのでユーザーはどちらのカメラで撮影しているかを意識させない設計のようだ。
4倍で建物に迫ったがレリーフの立体感と存在感が素晴らしい。とてもデジタルズームとは思えない描写だ。
最大の8倍までズームしたが、なかなかの写りである。ややソフトな印象も受けるが、屋根瓦1枚1枚の精細感や色合いが素晴らしい。全域で統一された仕上がりになっている点が好ましく感じる
ポートレートモード
Pixel 3シリーズでも評価が高かったポートレートモード。被写体と背景の境界判定がシングルカメラなのに優秀で、ライバル機のようにグラスに挿したストローが溶けて見えたり、人と人の間にある空間をぼかせなかったりという失敗が少なかった。Pixel 4になってデュアルカメラ化されたことによって、そのあたりがより強くなった感じがある。曖昧だった境界もしっかりと判定できるようになった。
もちろん全てのシチュエーションで完璧というわけではないが、撮影後にピント位置の変更ができたり、前ボケと後ボケの調整ができるなどアドバンテージはそのままに、より進化した印象を受けた。
背景がうるさい場所でのポートレートだが、Pixel 4のポートレートモードは境界判定が見事である。難しい髪の毛部分も自然な感じで切り抜いている。またボケ味もイヤな感じがせずいい雰囲気だ。もし気に入らなければ「Googleフォト」で開いてピント位置もボケ味も調整可能だ
神社の門を撮ったカットだが、Pixel 4のポートレートモードは距離による制限がないおかげでこのように接近して撮影しても背景をぼかすことが可能だ。1倍から5.3倍までの焦点距離において、背景ボケを活かしたカットを撮影できるのでライバルより撮影がラクである。
ハロウィーンの飾り物をポートレートモードで。吊している糸は溶けてしまったが、下部の糸はしっかりと残したまま背景をうまくぼかしている。やや境界判定がおかしい部分もあるが、あらゆるシーンで十分実用的なポートレートモードだと感じた
夜間モード(Night Sight)
この手の機能のパイオニアとも言える夜間モード(Night Sight)。すでに前モデルからほぼ真っ暗闇でも明るい写真が撮影できて驚かされたが、Pixel 4では星空を撮れるまでに進化しているという。
今回は時間的に星景を撮影することはできなかったが、一般的な低照度のシーンで素晴らしい性能を堪能できた。相変わらず安定感のあるナイトシーン撮影を楽しめたが、特に夜間モード(Night Sight)と超解像ズームの「コンボ」は優秀で「スマートフォンでここまで撮れるのか!」と感じさせてくれた。
夜のJRガード下を夜間モード(Night Sight)で。まるで明るい時間に撮影したような仕上がり。ガードのリベット、薄汚れた感じ、剥がれかけているステッカーの色、落書きまで見た目以上に克明に捉えてくれた。
丸の内のイルミネーションを撮影。明るくゴージャスかつ自然な色合いで撮影できた。LEDが無数にあるがイヤなゴーストやフレアの発生は確認できない。これからのホリデーシーズンに大活躍すること間違いなしの夜間モード(Night Sight)だ。
夜間モード(Night Sight)と超解像ズームの組み合わせは、今までのスマートフォンでの撮影を大きく変えてくれる。明るく輝く2020年のイベントカウントダウン表示灯を背景に佇んでいる女性をシルエットで狙ったが、ここまで撮影できるとは思わなかった。手ブレ補正機能もよく効き、夜間モード(Night Sight)での数秒ホールドだが像も大きくぶれることなくキャプチャーできた。1倍から8枚まで暗所で撮影できるのは大きな武器になるだろう。
作例
秋空の下、風にそよぐ大木を撮った。陰影をまとう枝から、細かい葉まで「Pixel 4」は確実に写しとってくれた。一時期のAndroid機のようなカリカリでどぎつい絵作りではなく、好感が持てる爽やかな再現性がいい
ポートレートモードは低照度下でも有効だ。「顔加工(ナチュラル)」で撮ったが環境光の色合いを残しつつ、肌をスムーズに仕上げてくれた。背景のボケ具合も自然で雰囲気がある。
超解像ズームは遠景だけでなくマクロ的な撮影でも役に立つ。蓮の葉に光る雨粒を撮ったが光の球のように美しく撮影できた。
まとめ
夜間モード(Night Sight)、ポートレートモード、超解像ズームなど「Computational Photography」(計算写真学)の先駆者として君臨していたPixel 3シリーズだが、Pixel 4になってデュアルカメラ化され、その地位を盤石なものにした印象だ。一般的なスマートフォンでの撮影シーンは当然として、低照度下プラス望遠撮影をそつなくこなすところがすごい。機能と機能がうまくリンクして撮影行為を楽しいものにしてくれている。
また端末自体もスリムかつ軽量で、携帯およびホールドしやすく、IP68の防水・防塵性能、おサイフケータイ、eSIM対応とスキがない。端子もUSB Type-Cと汎用性も高く、これからもっと人気が出る端末になると感じた。
モデル:ユリ