新製品レビュー
iPhone XS Max
背景ボケコントロールで表現力が拡大
2018年10月16日 07:05
2018年9月21日に販売開始となったアップルの新型iPhone。今年はiPhone XSとiPhone XS Maxの2モデルがまず発売され、10月下旬にiPhone XRが発売される予定となっている。ここでは約6.5ンチのOLEDを搭載した「iPhone XS Max」を取り上げる。
主な仕様
CPU:A12 Bionicチップ 次世代Neural Engine
RAM:4GB
ROM:64GB/256GB/512GB
外部メモリ:なし
ディスプレイ:約6.5ンチOLED 2688 x 1242ピクセル 解像度458ppi Super Retina HDディスプレイ
バッテリー容量:iPhone Xより最大1.5時間長いバッテリー駆動時間
OS:iOS 12
重量:約208g
ライバル
iOSを搭載するiPhoneのライバルはもちろんAndroid機だ。
3つのカメラを搭載した「HUAWEI P20 Pro」の夜間撮影機能や望遠カメラが話題だ。他にもカメラ機能をグッと向上させたモデルが多く、この10月以降もさまざまなライバル端末が登場してくる予定。それらとiPhone XS Max、iPhone XRを比較してから購入を考えるのがいいだろう。
デザイン
iPhone XS Maxは、指紋認証のTouch IDを廃して顔認証のFace IDを搭載したiPhone X(昨年発売)をひとまわり大型化したデザインとなる。イメージ的にはiPhone 8 Plus /7 Plusに近い。
サイズは高さ157.5mm、幅77.4mm、厚さ7.7mm、そして重量208gと大きく重たくなっている。防滴防塵性能も引き続き備え、IEC規格60529にもとづくIP68等級(最大水深2mで最大30分間)となっている。
【2018年10月16日】iPhone XS Maxの画像を追加しました。
カメラ部
2つのカメラを搭載するのもiPhone Xと変わらない。広角側のカメラは35mm判フルサイズ換算で約26mm相当F1.8。望遠側のカメラは、同じくフルサイズ判換算で約52mm相当F2.4となる。
デュアル光学式手ブレ補正、Focus Pixels像面位相差オートフォーカス、クアッドLED True Toneフラッシュ、5つのエフェクトを備えたポートレートライティング(自然光、スタジオ照明、輪郭強調照明、ステージ照明、ステージ照明[モノ])が特徴だ。
また、1,200万画素と画素数は変わらないもののセンサーが大型化されており、階調が豊かになって高感度特性も向上している。フロントカメラの「TrueDepthカメラ」は700万画素だ。
ディスプレイ部
iPhone XS MaxのSuper Retina HDディスプレイは6.5インチと大きく、解像度は2,688x1,242ピクセルと高解像度となっている。昨年話題になった「ノッチ」も健在だが、狭額縁のOLEDディスプレイは明るく迫力があり、撮影時の構図決定や撮影画像の確認時にも有効だ。
ポートレートモード
デュアルカメラを使った被写界深度エフェクトで背景ボケを作り出すことができたが、撮影後にそのボケ量をコントロールすることがようやく可能になった。
使い方はカンタン。ポートレートモードで撮影し、その写真をカメラロールで開いて「編集」を選ぶ。すると「F値」を模したコントローラーが画面上に表示されるので、指先でスライドして好みのボケ量を選ぶだけだ。
ポートレートライティングなどのエフェクトも同時にかけることが可能。フロントカメラの「TrueDepthカメラ」でも同様だ。
作例
自然で、ヒトの見た目に近い描写をウリにしているiPhoneシリーズだが、今回から搭載された「スマートHDR」機能によってそれがさらに高まった。奈良公園で撮ったカットでは、空の青さと緑の色合い、解像感など、その場の印象に近い仕上がりとなっている。
全体的にメリハリ感が増し、ハッキリクッキリ系の味付けになった印象だ。メタル製のボウルを撮影したが、使い込まれた感じと光沢感をよく捉えていると感じる。
ポートレートモードでは撮影後に背景ボケをコントロールできるようになったが、一部のAndroid機のようにピント面を変更することはできない。だが、それも「Focos」というアプリを使うことで可能になる。多摩川でモデルを撮影したが、自然なボケ具合が得られた。
これまで暗所での撮影では「明るさが必要です」とメッセージが表示されてポートレートモードを使用できないシーンがあったが、iPhone XS Maxからは、それが減った印象だ。
薄暗い居酒屋で男性モデルを撮影したが、きちんと背景をぼかすことができた。環境光を加味した色合いにも好感が持てる。
とはいえ、光学的なボケではないので今まで同様、細かい境界などではうまくボケてくれない。半透明のグラスや「抜け」のある被写体ではおかしな写りになってしまう。撮影時には慎重に対象を選ぶことが必要だろう。
デュアルカメラの広角側と望遠側を試した。広角側は28mm相当から26mm相当にワイド化されたが、望遠側は変わらずである。2焦点の切り替えをディスプレイ上のアイコンをタップしておこなう点やスライダーによるデジタルズームも以前と変わらない。とはいえ、そのデジタルズームの画質もやや向上しており、今までより使えるシーンが増えそうだ。
ホワイトバランスも的確で、見た目の印象どおりに撮影可能だ。暗所性能も高くなったので、室内での料理カットやパーティーシーンなどでも活躍しそうだ。お好み焼きに乗ったタマゴのシズル感がいい。
「スマートHDR」はほとんどの被写体をきれいに捉えてくれるが、たまにやり過ぎな印象の写真になってしまう時がある。このカットなどはもっとシャドウ部が締まっていて欲しい。
この機能は「設定-カメラ-HDR」と辿って機能をオンにする必要があるが、気になる人はその時に「通常の写真を残す」もオンにしておこう。
iPhone XS Maxの魅力は、ポートレートモードで撮影後、ボケ量をコントロールできること。しかも、それが比較的暗い所でも可能になったことだろう。このようなシーンでは境界もうまくボケてくれる。
また、暗所の描写もやや向上した。スマートHDRと相まって肉眼に近い印象のナイトシーンを撮影できるようになったのだ。Android機に差を付けられている分野だけに、これはうれしいポイント。
まとめ
カメラ機能から見たiPhone XS Maxの魅力は、そのボディギリギリまでひろがったOLEDディスプレイと、A12 Bionicチップによる高速処理、そしてようやく可能になった背景ボケコントロールだ。
スマートフォン・フォトグラフィーの標準機となるiPhoneシリーズだが、10月はカラフルな「iPhone XR」の登場も控えている。こちらはシングルカメラながら背景ボケコントロール機能を有し、しかも広角カメラでそれができる。これからスマートフォン購入を考えているのであれば、「iPhone XR」の写りもチェックしてからにしたいところだ。
また、Android機でも4眼カメラやポップアップ式カメラ搭載機が続々と登場してくるので、出揃ったところで検討するのがいいだろう。
モデル:ユリ&ツネ