新製品レビュー

Google Pixel 3

ライバルはiPhone XS / XR 強力な夜景モードも魅力

Googleからカメラ機能を高めたAndroidスマートフォン「Pixel 3」が登場した。背面シングルレンズ仕様ながらAIを活用して背景ボケを楽しめる「ポートレートモード」を搭載。光量が乏しいところでも明るく撮影できる夜景モード「Night Sight」機能も話題だ。アップルiPhoneシリーズの最大のライバルとも言われる注目の1台を試した。

スペック

CPU:Qualcomm Snapdragon 845 2.5GHz + 1.6GHz(64ビット オクタコア)
RAM:4GB
ROM:64GB / 128GB
外部メモリ:なし
ディスプレイ:5.5 インチ フレキシブル OLED FHD+(2,160 x 1,080)アスペクト比18:9 443ppi
バッテリー容量:2,915mAh
OS:Android 9 Pie
サイズ:145.6 x 68.2 x 7.9mm
重量:約148g
アウトカメラ:1,220万画素 F1.8
インカメラ:800万画素×2(広角F2.2、標準F1.8)

ライバル

ズバリ、アップルの「iPhone XS」シリーズと「iPhone XR」がライバルだ。暗所性能がウィークポイントのiPhoneシリーズだが、その弱点を突くかのように夜景モード「Night Sight」機能を搭載した。端末サイズも2種類用意し、モバイルフォトグラフィーの世界に殴り込んできた印象である。

iPhone XS
iPhone XR

デザイン

Pixel 3は端末サイズの異なる2機種がラインナップしている。今回取り上げるPixel 3と大型サイズの「Pixel 3 XL」だ。

Pixel 3は5.5インチディスプレイ、Pixel 3 XLは6.3インチのディスプレイを採用。重量はそれぞれ148g、184gとなっている。

外観はソリッドでベゼルレスに近いデザイン。ディスプレイ右側に電源ボタンとボリュームボタンを配置。反対の左側には何もない。下部にはセンターにUSB Type-Cコネクターを置き、その左側にSIMカードスロットがある。イヤホンジャックと外部メモリーカードには非対応だ。

インカメラは上部にデュアルで備える。背面はアウトカメラと指紋認証センサーがあり、光沢とマットのツートンカラー仕上げとなっている。カラーはClearly White、Just Black、Not Pinkの3色。なおIP68準拠の防塵防滴仕様だ。

カメラ部

アウトカメラはデュアルピクセルセンサー1,220万画素でF1.8、光学式および電子式手ブレ補正機能を搭載。インカメラは800万画素のデュアルカメラ仕様で、広角側がF2.2、標準側がF1.8となっている。インカメラが2つというのはなかなか面白い仕様だが、これは後述の「グループセルフィ−」のためにこうなっている。

ディスプレイ部

ディスプレイは有機ELパネル採用でとても明るく視認性が高い。日中の撮影や撮影画像確認でもとても見やすく、反応速度もよかった。サイズはPixel 3が1,080×2,160ドット、アスペクト比18:9の5.5型、Pixel 3 XLは1,440×2,960ドット、アスペクト比18.5:9の6.3型となっている。なおPixel 3 XLにはノッチが存在する。

カメラ

Pixel 3はシングルのアウトカメラながら「ボケ」を楽しむことができるのがウリだ。アップルのiPhone XRも同仕様ながらボケを作り出すことが可能だが、実は人物以外では背景をぼかすことはできない。

Pixel 3はそんな制限なくボケ味を楽しめるのがスゴい。これは「AI」による機械学習を活用した結果なのだが、曖昧になりがちな境界もまずまずの精度で判別し、自然な立体感とボケを堪能できる印象だ。またピントの位置やボケのコントロールもスライダーで調整可能なので、より自分なりの写真表現が可能になっている。

「超解像ズーム」もなかなかいい。複数の写真を合成して出力し、デジタルズームの画質を向上させるというものだ。シングルレンズながらまずまずの描写だと感じた。

もっとも驚いたのが夜景モードの「Night Sight」だ。11月15日のアップデートによって追加された機能だが、こちらもマルチショット撮影して、暗所でもノイズの少ない美しい描写を可能にしている。明るさによっては数秒間の撮影中にPixel 3を保持していなければならないが、クリーンで見応えのある写真を手にすることができる。

インカメラも面白い。広角と標準のデュアルカメラとなっており、盛り上がる「セルフィー」需要を満たす。より大勢での「グループセルフィー」が撮影できるように、iPhone XSと比較して184%もの広い画角で自撮りをすることが可能だ。パーティーなどでの記念写真はもちろん、背景を広く入れ込みたい場合にも有効だ。もちろんスライダーによる画角の調整も可能になっている。

その他にもベストショットをAIがリコメンドしてくれる「Top Shot」機能や、カメラを向けると被写体を検索してくれる「Google Lens」などの機能も備えている。

モード

デジタルズームは「+」「-」をタップするとステップズーム、スライダーをドラッグすれば通常のズームとなる。

メニューはシンプルで、上部ではホワイトバランスなどの調整、画面をタップして現れるスライダーを上下しての露出補正が可能。

その他メニュー内には「夜景モード」などが収まる。極端に光量が少ない場所では、自動的に「夜景モード」がリコメンドされる。

ポートレートモード

ボケを活かした写真は撮影時に、下部メニューに現れる「ポートレート」を選んで行う。ボケのコントロールなどは再生時に「フォト」内でする仕様だ。「ポートレート」で撮影した写真を選択すると、ボケのない写真とボケた写真の2枚を下部に表示してくれる。

左下のアイコンをタップすると、各種プリセットのフィルターが適用された写真サムネイルがズラリと並ぶ。

調整アイコンをタップすると、ここで「明るさ」「カラー」そして「奥行き」が調整可能になる。奥行きは「ボケ」のことでスライダーを動かすことによってボケ量をコントロールできる。

また、ここでは画面の任意の場所をタップすることによって、再度ピント合わせを行える。何度でもフォーカスポイントを調整できるのが便利だ。

「奥行き」メニューをさらにタップすると、後ボケだけでなく「前景ぼかし」もコントロールすることが可能。

シングルレンズとは思えない自然で優しい境界とボケ味を実現している。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/120秒・F1.8・±0EV) / ISO 75

夜景モード

夜景モードは「その他」メニューから選択可能だが、撮影時に光量が少ないとPixel 3が画面上でリコメンドしてくれる。

夜景モード時はPixel 3をホールドする必要がある。マルチショットによって写真を合成するからだ。その時間は撮影環境の光量によって変わってくる。

作例

一般撮影

日陰でスポーツカーを撮ったカット。色のりが良く、ビビッドな印象だ。ボディの光沢感などは忠実に再現できていると感じる。

Google Pixel 3 / 4.44mm(35mm判換算27mm相当) / ノーマルプログラム(1/850秒・F1.8・±0EV) / ISO 56

日が傾きかけた横浜みなとみらいをブラブラスナップ。カメラの起動も高速で、思った時にすぐシャッターを切れるのがイイ。Andord機といえばカリカリにシャープネスがキツく、色味も派手という印象が強いがPixel 3の場合は素直で親しみやすい仕上がりになっている。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/2,100秒・F1.8・±0EV) / ISO 56

逆光時にはiPhone同様ゴーストの発生が見られる。色合いは若干濃いめながらコントラストは肉眼で見た感じに近く、ほどよい絵作りになっていて好感が持てる。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/7,800秒・F1.8・±0EV) / ISO 82

ポートレートモード

写真家の森脇章彦氏にモデルになってもらった。シングルレンズながら境界の判定が素晴らしく、髪の毛部分もうまく切り取られ自然な仕上がりになっている。またボケ味、立体感も同様に感じられる。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/35秒・F1.8・±0EV) / ISO 55

iPhone XRと違い、人物以外でもぼかすことができるのがPixel 3の利点だ。青空にそびえる横浜ランドマークタワーを大きくぼかしてみた。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/2,300秒・F1.8・±0EV) / ISO 56

セルフィー

Pixel 3はグループセルフィーの撮影ができる。広角と標準のデュアルカメラなので、画面に表示されるスライダーを一番広角にすれば、このようにギャラリーバーと人物を広々と写すことが可能だ。

Google Pixel 3 / 2.03mm(19mm相当) / ノーマルプログラム(1/35秒・F2.2・±0EV) / ISO 75

また逆に望遠側にすれば人物に寄ったカットも撮影できる。インカメラで画角を調整できるのはなかなか便利である。横浜・伊勢佐木町にオープンした「Photo Bar sa-yo:フォトバーサヨウ」は写真を見ながらお酒を楽しめる異色のギャラリーバーだ。

Google Pixel 3 / 2.97mm(28mm相当) / ノーマルプログラム(1/25秒・F1.8・±0EV) / ISO 695

超解像ズーム

Pixel 3のデジタルズーム「超解像ズーム」はテレ側での画質が見事だ。複数枚の写真を撮影して、うまく補完して画を作っている印象だ。ワイド側からテレ側までステップズームしてみたが、荒れはそれほど気にならない。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/120秒・F1.8・±0EV) / ISO 75

夜景モード

夜景モードの「Night Sight」は圧巻だ。このカットは外環自動車道の東名接続部分の工事現場を撮ったものだが、画面下はほぼ真っ暗な状態なのだ。しかしこのモードで撮影すると見事に浮かび上がってるではないか。土手の草のディテールもわかるほどだ。マルチショットで撮影、合成するためPixel 3を暗さに応じてホールドする必要があるが、手持ちでもここまで写るのには驚いた。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/10秒・F1.8・±0EV) / ISO 1352

このカットはおよそ5秒ほどPixel 3をホールドする必要があったが、手持ちにもかかわらずうまく合成されてノイズ感も少なく、携帯電話基地局アンテナのディテールも残っている。この「Night Sight」、夜景モードは11月15日のアップデートによって追加された機能なので、すでに購入済みならば、アップデートをかけると使用できるようになる。

Google Pixel 3 / 4.44mm(27mm相当) / ノーマルプログラム(1/5秒・F1.8・±0EV) / ISO 1434

まとめ

Google Pixel 3はAIによる機械学習を用いて、シングルレンズによるカメラ撮影を飛躍的に楽しくしてくれる端末だと感じた。シンプルで美しいボディと見やすいディスプレイ、高速で快適な反応速度、ワイドでもテレでもボケ味を楽しめるカメラと、申し分のない性能を誇る。また暗所撮影では他の端末より一歩抜き出た描写性能を有し、スマートフォンフォトグラフィーの世界をより拡げてくれる存在になっている。アップルiPhoneに食傷気味の人や、Andoridファンは店頭で一度手に取って、その性能を体感してみて欲しい。

撮影協力:森脇章彦、foxfoto、Photo Bar [sa-yo:]フォトバーサヨウ

三井公一

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナー、コンサルティングなどで活躍中。有限会社サスラウ代表。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」などがある。公式サイト:http://www.sasurau.com