ミニレポート
気分を高める純正スリットフード。ルックスと効果を検証
富士フイルム「LH-XF35-2」
2022年8月29日 13:00
カメラを選ぶ上では、機能や画質が重要だ。しかし、せっかくなら楽しく使いたい。それには見た目も大切。気に入ったデザインのカメラを手にすると、「このカメラで写真を撮りたい」という撮影意欲が湧いてくる。
私にとって、そのひとつが富士フイルムX-E4。機能だけで言えばX-E4より充実したXシリーズ上位機種もあるが、シンプルなデザインと操作性を持ち、しかもコンパクト。かつてのレンジファインダー機を彷彿させるスタイルが気に入って購入した。撮影はもちろん、テーブルなどに置いて眺めているだけでも楽しいカメラだ。
X-E4と一緒に購入したレンズは「XF35mmF2 R WR」。X-E4はパンケーキスタイルの「XF27mmF2.8 R WR」と組み合わせる人も多そうだが、私は使い勝手の良さから35mm(35mm判換算53mm相当)の方を選んだ。X-E4に装着したときの姿が27mmより好みだったのも理由のひとつ。やはり見た目にはこだわった。
とはいえ、このレンズ、ひとつだけ好みではないところがあった。それが付属のレンズフードだ。小さくてX-E4にマッチしないわけではないが、あまりに素っ気ない形で所有する満足感が少ない。せっかく見た目にこだわったのだから、レンズフードも何とかしたい。そこへ目に入ったのが別売の金属製フード「LH-XF35-2」だ。
LH-XF35-2は先端側に向かってすぼまった円錐状で、3か所にスリットが入ったクラシカルなデザイン。APS-CコンパクトのX100シリーズにも同様のスタイルのフードがあるので、ご存知の方も多いだろう。
こうしたスリットフードでまず思い浮かぶのはライカだ。なぜフードにスリットが入っているのか。レンジファインダーカメラを使ってみるとわかるのだが、ファインダーの視野を確保するためである。このスリットがないと、ファインダー視野の右下部分がフードでケラレてしまう。それを防ぐためなのだ。
似たデザインのフードはライカ以外にも多く登場し、ミノルタCLEのM-ROKKOR 28mm F2.8用のフードや、Newマミヤ6、マミヤ7のレンズフード、コニカHEXAR RFのM-HEXANON 28mm F2.8のフードなどが思い当たる。現在も富士フイルムの他、フォクトレンダーやツァイスZMレンズなどにも同様のスタイルのフードがある。
また、ミラーレスカメラ登場以降はドレスアップアイテムとしても広く定番的なデザインとなり、すっかり「こだわり派のレンズフードの定番デザイン」として認知されている。クラシカルな雰囲気を醸し出すのが人気の理由だろう。
それでは富士フイルムのLH-XF35-2と、ライカの12585を比べてみよう。LH-XF35-2は、XF35mmF2 R WRの他に「XF23mmF2 R WR」にも使える。これら2本のレンズは、それぞれ35mm判換算するとおおよそ50mmと35mmだ。12585がズミクロン50mm F2の他にエルマー50mm F2.8、同F3.5、ズマロン35mm F2.8と同F3.5にも使えるのに似ている感じがして懐かしい。
大きく異なるのが装着方法。12585は爪で固定する方式。フード両端にある突起を押すと、内側の爪が引っ込む。その状態でフードを鏡筒に差し込み、指を離すと再び爪が出てきて鏡筒にロックされる。それに対し、LH-XF35-2はバヨネット式だ。フードの指標をレンズ側の指標に合わせて差し込み、約90度回転させると装着完了する。カチッとしっかり固定させる感触は気持ちいい。
収納時は、12585はフードを反転させて装着が可能。フード逆付けした際のキャップも用意されていた。対するLH-XF35-2は逆付けできないものの、そのままレンズキャップが装着できる。
先に述べたように、フードにある3つのスリットは、ファインダーのケラレを防ぐためだ。富士フイルムには光学ファインダーを搭載するX-Proシリーズがあるが、光学ファインダーを持たないX-E4では、このスリットに必然性はない。また、バヨネット式だからスリットは1つあれば十分なのに、わざわざ3つあるのは、やはりクラシカルな見た目を意識してのことだろう。これは富士フイルムだけでなく、やはりバヨネット式を採用しているフォクトレンダーでも同じ。それだけ、12585のような往年のスリットフードの影響力が大きいことを感じる。
実際の効果は?
それでは、XF35mmF2 R WRに付属しているフードと、別売スリットタイプのLH-XF35-2では、フードに本来期待される遮光効果に差はあるのだろうか。
まずはフードなしで前玉に直射光が当たる状態から、付属のフードを装着してみる。するとほぼ直射光を遮ることができた。付属フードは小さいながらも優秀だ。
次にLH-XF35-2に取り替えると、付属フードでは遮ることができなかった部分までカバーした。その差はごくわずかだが、やはりフード自体が大きくなった分、直射光を遮る面積も広くなった。
もっとフレアやゴーストの出方が変わるかと思いきや、結果の違いを見出すのは非常に困難。付属フードとLH-XF35-2の装着時には、わずかにフレアが出にくいように感じる程度だった。これはレンズそのもののコーティング効果が高いという証でもある。
とはいえ、やはり強い日差しの下ではフードの安心感は大きい。画面内にゴーストが出るような条件では、フードを装着しても防ぐことはできないが、フレアの出方には違いが出た。フードを装着せず画面隅にわずかにフレアが出ている条件では、付属フードを装着するとフレアが減少し、シャドーが締まってきた。フードをLH-XF35-2にすると、さらにフレアが減り、シャドーの締まりがより高くなる。LH-XF35-2は付属フードより大柄なので、遮光の効果がより高くなるようだ。
繰り返しになるが、レンズフードは実用性も大切ではあるが、コーティングや内面反射処理の技術が高い現代のレンズでは、見た目の満足感も重要だ。今回LH-XF35-2を手に入れて、その姿に大満足。撮影時のテンションも上がってくる。レンズフードを装着したときの一体感を味わうのも、カメラ好きの大きな楽しみのひとつなのだ。