ミニレポート
世界初!? ウズラ卵の月と太陽の撮影に成功!
身近なところに宇宙を見出す撮影アイデア
2021年12月7日 12:00
私の写真の主要コンセプトに身近な発見がある。遠くに出かけて誰もが知っている絶景を撮影するのではなく、自分の身の回りで見たことのないような宇宙を見出す。小さな発見でかまわない、発見することに価値があると考えている。
そんな私の最大の発見は2008年の「うずらの惑星」だ。もともとはウズラ卵の模様に面白さを感じて接写をした。ウズラ卵は横から見れば楕円形だが、立てて俯瞰で撮ればきれいな円形になる。
撮影した写真を色補正をしていた時になにげなく「階調の反転」効果を使ってみて驚いた。そこに美しい惑星が現れたからだ。「階調の反転」とはネガにする機能のことだが、黒かった部分は白い雲になり、茶系の部分は補色の青い海となった。
ウズラ卵を指で持っているところ。これをネガにすると次ような写真になる。
そんな大発見から13年、ウズラの惑星に勝るとも劣らない発見をここで披露したい。ウズラの月と太陽だ。月はサイドから光を当てて三日月を表現した。とりあえず満月だけ撮影しておけばPhotoshopの加工で三日月にすることが可能だが、それでは面白くない。ライトの角度を調整して、月の満ち欠けを表現した。
次は太陽だ。さてこれはどうやって撮影したでしょう?
答えは、卵を溶鉱炉の中に入れて燃え盛る様子を撮影した……というのはウソで、割った卵の内側から光を当て、殻を透かして撮影したのだ。
これもイメージを超えた撮影ができたので嬉しい。何も言わずに見せられたら、どれもウズラ卵には見えないんじゃないだろうか?
ほかにも今回は重大な発見をしている。これは巨大なクレーターが衝突した様子。
そして最後の偉大なる発見は惑星直列だ。惑星直列というのは星が直線上に並ぶ現象のことで、この現象が起こる時、大きな災厄が訪れるとも言われている。
撮影時のテクニック
ウズラの惑星はネガ反転により作り出したわけだが、撮影も多少工夫している。まずライトはなるべくフラットになるように当てた。コントラストがあると反転させた時にちょっと不自然になってしまうからだ。ハイライト部分が暗くなり、ハイライトは黒くなってしまうのだ。そこでLEDライトで卵を囲み、さらに綿棒の入っていた乳白のケースに入れてディフューズして撮影している。
リアルな星というのは遠く離れているのでピントは全体に合うが、ウズラの惑星の場合は接写なので、ピントが合う範囲は浅くなってしまう。そして被写界深度が浅い写真に対し人間は「こいつは小さいぞ」と認識してしまうのだ。
そこで深度合成技術を使って撮影した。深度合成はピント位置を変えて撮影した複数枚の写真をPhotoshopなどのアプリケーションを使って合成するテクニックのことで、深度を深くすることができる。今回はオリンパスのOM-D E-M1 Mark IIIに備わっている深度合成機能を利用した。これはカメラ内部で深度合成した写真を作ってくれる技術だが、手軽にきれいに合成してくれるので気に入っている。
太陽は半分に割った卵の内側からライトを当てているのだが、LEDライトを黒ホイルで覆い、そこに空けた小さな穴から光が出るようにしている。割った卵の隙間から光が漏れ出て太陽が燃えているよう写ったのは偶然だ。本当は完全に内側にライトを入れてしまおうと思っていたのだが、かえっておもしろい表現になった。炎の中に見える粒は割れた卵の殻のかけらだ。
これらの写真は「こんなふうに撮ったらどうなるだろう?」というアイディアを元に撮影しているわけだが、アイディアを思いつき、それをイメージ化していく過程が楽しい。コロナ禍でなかなか外に出て撮れないけど、ぜひ身近な宇宙の撮影に挑戦してみてください!
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