交換レンズレビュー
TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD
スナップもポートレートも1本で コスパも良し
2018年6月5日 07:00
5月24日に、タムロンがソニーEマウントの交換レンズ28-75mm F/2.8 Di III RXDを発売した。当レンズは、35mmフルサイズに対応する標準ズームレンズだ。開放F2.8固定の大口径ズームでありながら、非常に軽量かつコンパクトに仕上がっている。
近年の大口径標準ズームレンズは24-70mmであることが一般的だが、当レンズはそれに比べると広角域が抑えられ望遠域が若干長くなっている。広角端を28mmとすることで、レンズの小型軽量化を実現していると推測できる。
今回は、ソニーα7R IIIに装着してポートレートとスナップ撮影を行なった。作例を見ながら、本レンズの魅力を体感していただければと思う。
発売日:2018年5月24日
実勢価格:税込9万5,000円前後
マウント:ソニーE
最短撮影距離: 0.19m(広角)、0.39m(望遠)
フィルター径:67mm
外形寸法:約73×117.8mm
重量:約550g
概要
タムロンの先端技術が詰め込まれた当レンズは、コンパクトなサイズながらも高い解像力と柔らかなボケ味を実現している。レンズ構成は12群15枚。9枚羽根の円形絞り機構を採用しており、美しい円形ボケを楽しめる。
最短撮影距離は、広角端で0.19m、望遠端で0.39mだ。0.19mまで寄れる広角端では、広角特有の遠近感を強調した近接撮影が可能となる。
簡易防滴構造・防汚コートを搭載しており、屋外撮影へ気軽に持ち出せる点も特徴の1つだ。
ソニーEマウントカメラの「カメラ内レンズ補正」(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差)も利用可能だ。Eマウントカメラの本体からファームウェアアップデートもできる。
デザイン
当レンズは、柔らかな人間味を大切にした「ヒューマンタッチ」というタムロンレンズの新しいコンセプトのもとにデザインされている。
余計なものを一切排除したような、すっきりとシンプルな鏡筒デザインは好印象だ。丸みがあり、飽きのこないマットな質感はユーザーに安心感を与える。付属の花形フードも控えめなサイズ感で、使い勝手が良い。
最大径×全長は73×117.8mm、重量は550g、フィルター径は67mmとスリムなので、小ぶりなαシリーズのボディとのバランスは良好だ。また、コンパクトゆえ、撮影中に安定したホールド感を得ることができた。
α7R III(約657g)に装着すると、総重量は1,207gとなる。ボディとレンズを合わせても、通常の標準ズームレンズくらいの重量だ。半日持ち歩いてスナップ撮影をしたが、疲れを感じることはなかった。ボディもレンズもコンパクトなので、小さなカメラバッグひとつで出かけられて気が楽だった。
ちなみに、28-75mm F/2.8 Di III RXDは、ソニー純正レンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」と比べて、最大径が14.6mm、長さが18.2mm、質量は336gダウンしている。筆者は純正レンズも使用しているが、それと比較すると、28-75mm F/2.8 Di III RXDは「なんてコンパクトなのだろうか」という印象を受ける。
AF
AF駆動には、高速・高精度と静粛性を両立するステッピングモーターユニット「RXD」(Rapid eXtra-silent stepping Drive)を搭載している。そのため、AFでのピント合わせはとても静かでスムーズ。純正のレンズと同じ感覚で使用できた。
またカメラ側の機能である、「ファストハイブリッドAF」「瞳AF」「ダイレクトマニュアルフォーカス」(DMF)などにも対応している。
作品
ビルの屋上から下を見下ろし、広角側でF11まで絞り込んで撮影をした。キレッキレとまではいかないが、ビル群がすみずみまできちんと描写され気持ちのよい1枚に仕上がった。風景撮影にも持ち出せる1本だと思った。
歩道橋の上で、背景を大きく取り入れる構図でモデルを撮影した。街歩きスナップでは急に引いた構図で撮りたくなることがあるが、こういったとき28mmの広角域で撮影ができるズームレンズは重宝する。
F8まで絞ったが、全体的な色味や背景のボケ感はナチュラルでクセがない。見たままの光景に近い仕上がりだ。
今度は、望遠側で絞りを開放にして、モデルにグッと寄り撮影をした。ピント合焦部のキレ味と、周辺部のやさしいボケ感がタムロンらしい。
急に日差しが出てきたので、自分でレフ板を持ち、上から当たる光を遮り、モデルの顔がフラットに描写されるようにしている。このとき片手でカメラを構えたが、レンズがコンパクトかつAFも正確なので、片手でも十分にホールドできた。
トンネルの下で、望遠側で絞りを開放にしてややアンダー目にモデルを撮影した。逆光だったが、スムーズにモデルの瞳にフォーカスできた。モデルの肌のグラデーションはとても自然だ。また、手前の壁のボケ方や、背景のグリーンのボケもナチュラルで好みだ。
太陽を構図の中に入れ、強い逆光状態で撮影をしてみた。フレアとゴーストを確認できるが、このようにかなり強い光源をフレーム内に入れない限りは発生しない。
水飲み場で、広角端で蛇口にグッと寄って撮影をした。蛇口にかなり近づいたのでレンズに水しぶきがかかったが、レンズに施された簡易防滴構造と防汚コートのおかげで、さっと拭くだけでレンズはクモリもなく綺麗な状態に戻った。他のシリーズでも感じたが、タムロンの防滴構造と防汚コートは本当に優秀だ。
望遠側で絞りは開放にして、最短撮影距離まで寄ってモデルを撮影した。望遠側の最短撮影距離は0.39m。モデル撮影では、顔全体が入りきるくらいまで寄れる。全体的に柔らかい描写が印象的だ。女性の柔らかい空気感を描き出すにはぴったりのレンズかもしれない。α7R IIIのボディ内手ブレ補正も効いている。
広角側で絞りを開放にして、最短撮影距離まで寄って草花を撮影した。広角側の最短撮影距離は0.19m。まるでマクロレンズで撮影したような、フワフワした世界を楽しむことができる。9枚羽根の円形絞り機構を備えているので、背景のボケはきれいな円形を描いており美しい。
今度は広角側で、F8まで絞って最短撮影距離でバラを撮影した。広角側の最短撮影距離は0.19mと大変短いので、このような広角特有の遠近感を強調した近接撮影も得意だ。
まとめ
28-75mm F/2.8 Di III RXDは、絞ったときにはスッキリとした描写、開放にしたときには柔らかい描写になるのが印象的だった。シャープでカリカリな絵が好きな方には少し物足りないところがあるかもしれないが、優しい描写がお好きな方は大満足の写りだと思う。
28-75mmというオールマイティな画角と、さきほどの描写の違いを組み合わせると、スナップ撮影もモデル撮影も十分にこなせる万能なレンズとして機能する。スナップとモデル撮影を同じくらいの頻度で行う自分のような人間にとっては最高の存在だ。
純正のFE 24-70mm F2.8 GMは実勢価格が税込27万円前後。28-75mm F/2.8 Di III RXDの価格は純正レンズの半額以下である。
十分な性能に加えて、軽量かつコンパクトで、コストパフォーマンスが高い点も嬉しいポイント。なんでも撮れて、信頼できる1本が欲しい!という方には迷わずオススメしたいレンズだ。
モデル:川口紗弥加